星を巡りて~数多屑星の中で~
てなわけで冬季2等星以上で固有名を持つものをリストアップしてぐるぐる巡ってきた。光年単位でぽんぽん飛び回るイマジネーションスカイサーベイ如何だったであろうか。
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見ての通り星々の固有名はアラビア語が多い。むろんメソポタミアから入ってきたためであり、一方でメソポタミアから見えなかった星々は2等星でも名無しがあった。イギリス海軍に航海の便のために名付けられたなど最たるものだろう。なお当時と今とでは北極星が異なる=同じ緯度でも見える星が異なることを念頭に置かれたい。
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2等星に絞ったのは3等星以下で「名前あり」が極端に少ないからである。
これは紀元前2013年6月3日の東京である(南十字が見えていることに注意)。闇夜であることと、当時の人々の視力を考慮して7等星まで表示させた。ご覧のように空は一面星びっしりであるから、3等星以下は雑草のごとき「屑星」(このフレーズは林ももこさんの曲から)扱いだったからに他ならない。但し暗くても方位や季節の決定に関わる、宗教上重要とされた星には名前が付いている。りゅう座のトゥバンなどその最たるものであろう。5等星だが固有名を持ちバイエル符号α扱いなのは彼が往年北極星だったからである。
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さて最後にまとめとして全体を視野に入れてスケールを概観してみよう。リスト中最も遠い天体はイータカリーナで7500光年であった。
とはいえこれは突出して遠く、他のオリオン座の2000光年くらいの超巨星たちを除けば、せいぜい数百年の範囲内である。我々の太陽系は天の川銀河を構成するぐるぐる渦巻きの中でも「ペルセウス腕」の内側に位置する離れ小島「オリオン腕」の中にいるが、リストした天体は全てここに収まる。
更に言うと、数百光年以内の天体は、「ローカルバブル」と呼ばれる極端に星間物質の少ない泡のような領域の中にいる。太陽もここである。
これは数百万年前「ジェミンガ」と呼ばれる超新星爆発がふたご座で起こり、その「爆風」が星間物質を押しやりながら広がっている有様だと考えられている。
井の中の蛙大海を知らずというが、離れ小島の泡の中にいる人類意外と天空大河の構造を見通している。ちなみに天の川はこの銀河系の中心方向を眺め、星々が重ね重なり連なった姿であるが、天空を斜めにぶった切っていることから判るように、太陽系の赤道面は銀河の赤道面とかなりずれている(かみのけ座の方向が銀河の北極・ちょうこくしつ座の方向が銀河の南極)。すなわち太陽系は銀河の回転面に対し「ななめ」に惑星たち連ねて回っていることを意味する。
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銀河中心(いて座Aという。巨大ブラックホール)までの距離は26000光年。銀河系全体の直径は10万光年。星の数は2000億である。太陽系はこの銀河を2億年掛けて一回りする。すなわち反対側にいた頃は恐竜が闊歩していたことになる。時間と空間を同時に意識すると、我ら人類のなんと小さくてはかないことよ。
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最後に外へ出てみよう。「宇宙戦艦ヤマト」に出てくる「大マゼラン銀河」は距離16万光年にある銀河系の「お供」「子分」であって、伴銀河と呼ばれる。
その向こう、それは人類が肉眼で見える最も遠い天体にして、最も近い「隣」の銀河に行き着く。
アンドロメダ銀河。距離200万~250万光年の間。図体は天の川銀河の約2倍、20万光年。
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スケールのでかい話だから三十一文字に凝縮しようか。
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アンドロメダ満月サイズの渦巻きは1兆個ほどの星で構成。
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