子宮頸がんワクチン【3】
●子宮頸がん発生のメカニズム(承前)
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まず「細胞の活動」と「がん化」を予備知識として書く。
出典。
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細胞の活動は「細胞周期」と呼ばれ、次のように分けられる。
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G0期:細胞が周期から去った、または分裂を止めている休止期。→死に向かうこともある
G1期:細胞が大きくなる。遺伝子合成のための準備が行われる。
S期:遺伝子を複製する
G2期:細胞が大きくなる。核分裂・細胞体分裂のための準備が行われる。
M期:分裂する。
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このほか、正常な分裂を行うための防衛システムとして、幾つかのセルフチェックポイントが存在する
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G1/Sチェックポイント
G1期DNAに損傷がないこと、これからのDNA複製のためのヌクレオチド(DNAの材料)などが十分あること、細胞の大きさがチェックされる。
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S期チェックポイント
S期のDNA複製の速さを制御し、DNA複製に不具合がないかチェックされる
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G2/Mチェックポイント
DNAが損傷するとM期開始が阻害されることでチェックとなる。この場合、細胞はG2期にとどまって先へ進まない。
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M期チェックポイント
分裂の真っ最中にチェックされる。一対の染色分体が対称になるよう、正しくかつ同時に、紡錘糸を介して細胞の両極に結合しているかどうかがチェックされる。対称性が崩れていると染色体の対を結びつけている部分が分離されず、細胞分裂が成立しない。
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ひっくり返すと、HPVはこれらサイクルを勝手に進ませ、なおかつ、チェックポイントをごまかす仕組みを自身のDNAに持っていると書くことが出来る。書き並べるとこうなる。
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E7:G1→S移行に関与するヒト遺伝子「Rb」の活動を阻害し、場合によりぶっ壊す
E6:ヒト遺伝子「P53」の活動を阻害する。P53の機能は
①損傷を受けたDNAの修復タンパク質の活性化
②細胞周期の制御
③DNAが修復不可能な損傷を受けた場合に、細胞の自殺であるアポトーシスを誘導
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つまり双方併せてG1/Sチェックポイントを回避する。この結果、ウィルスのDNAを「正常なDNA」と勘違いして、ヒトの細胞はウィルスをコピーしてしまう。
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今日はこのくらいで
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(つづく)
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