Haiyan-海燕-という名の死に神。恐らくは近未来の日本にも
台風30号。アジア共通名Haiyan-海燕(はいえん)-
中心示度895。最大風速65。推定される最大瞬間風速85。
この状態で深夜に上陸し、翌日に掛けてフィリピン中部を横切っていった。(写真出典:デジタル台風データベース)
レイテやセブを横切っていった。歴史時代になり、人の居住地に900hPaを切った勢力で上陸した熱帯低気圧を実は人類は殆ど知らぬ。
熱帯低気圧による被害のうち、記録が多いのは台風と米国のハリケーンである。レイバーデイ・ハリケーン(1935年・892hPa)が唯一その条件に当てはまる。
英語版Wikiより。気圧の単位は水銀柱Hg表記。
「レイバーデイ」の名は、9月2日の労働者の日に上陸したから言う。風速は295キロ/毎時相当と言うから82m/s。もちろんカテゴリー5の最強ハリケーンである。人的被害は400。勢力に比して少ないと言うべきか。このように天気図が存在するから当然事前に避難勧告が出され、避難用列車も用意されたが、間に合わず、その列車が吹き飛ばされた。人的犠牲の殆どはこの列車であるようである。
踏まえてハイエンを見てみる。アメリカは当然、カテゴリー5「スーパータイフーン」に分類している。
気象庁はこの気圧905hPaの時点で最大瞬間風速を85m/sと読んだ。もう少し発達してから上陸しており、90~100m/s前後の風が吹いたであろう。こうなると竜巻用の風速スケール「藤田スケール」を引用しないとならぬ。しかも竜巻は秒平均で評価しているが、このハイエンは数時間続く。
F3 | 70~92m/s (約5秒間の平均) |
壁が押し倒され住家が倒壊する。非住家はバラバラになって飛散し、鉄骨づくりでもつぶれる。汽車は転覆し、自動車はもち上げられて飛ばされる。森林の大木でも、大半折れるか倒れるかし、引き抜かれることもある。 |
F4 | 93~116m/s (約4秒間の平均) |
住家がバラバラになって辺りに飛散し、弱い非住家は跡形なく吹き飛ばされてしまう。鉄骨づくりでもペシャンコ。列車が吹き飛ばされ、自動車は何十メートルも空中飛行する。1トン以上ある物体が降ってきて、危険この上もない。 |
(wiki)
そのレイバーデイ・ハリケーンで転覆した列車である。機関車だけは重いから転覆しなかった。
比してフィリピンの建築物の耐量、情報拡散のインフラ整備を考える。決して充分とは言えまい。アキノ大統領が自ら記者会見して「逃げろ」と言ったが、このレベルでは外国人向け鉄筋ホテルの多いセブはさておき、島そのものにいてはならない。そうなると移動手段は船しかないが、波浪荒れ狂う中移動出来る船がそう簡単に揃うとは思わぬ。遅きに失した対応と言わざるを得ないだろう。ちなみに、伊勢湾台風の時、停電でラジオ(当時のラジオは「となりのトトロ」にでてくるああいうタイプ。コンセント電源で動く)からのニュースが届かなかったために、避難指示が出たことを知らなかった市民が多くいた。伊勢湾台風の惨状はわずか3時間の間にもたらされたが、恐らく、この愚を再び犯した。タクロバンは上陸と推定される頃から一切の通信が不能になったという。
夜が明けてフィリピン軍がヘリコプターで確認に飛んだ。
「100人の遺体が横たわっている」
「まるで津波に襲われたようだ」
(10日午前0時)
日本時間9日午後5時→10日午前0時現在でメディアに乗っている状況がこれ。多く日本人が無念さと脱力感、あの日のデジャヴに囚われているのではないか。他にも土砂災害の一報が届いており、深甚な被害が懸念される。
いわゆる「温暖化」はスーパコンピュータの計算に寄れば、台風の強大化を招くという。遠からず、伊勢湾や室戸を超える文字通り未曾有の台風が日本を襲う可能性も排除出来ない。その場合、伊勢湾クラスを念頭にしている日本の建築物ですら太刀打ち出来ない。近年の竜巻被害が示唆するのは、それが直径500キロスケールで発生するということだ。
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