285km/h
東海道新幹線の最高速度が285km/hに引き上げられるという。N700という系列は実力的には330キロでも平気であるが、盛土バラストの東海道では軌道を痛めよう。まぁ妥当な上昇幅である。ただアサイチやオーラスなど1~2便300キロ超があっても良かったかも知れぬ。
元々この電車は「今までの車両では減速せざるを得なかった」急なカーブで270キロ通過を可能とするシステムを装備している。そのシステムを逆に活かし、270キロでそもそも平気なカーブを285キロ走行しようというのが今回の主眼である。ただ東京-新大阪実距離515キロに対して「15キロ」の速度向上は3%程度短縮に過ぎず、しかも285キロ走行区間は限られることから、実質3分も稼げればいい方だそうな。と、そこだけ取ればふーんで終わってしまいあまり威張れるような気はしない。
新幹線は長らく「200キロ超えたしぃ」に甘んじて更なる向上を考えていなかった部分がある。技術的には速度上げすぎると車輪-線路の摩擦が減少して空転という思い込みがあった。実際初代新幹線0系はこの摩擦を荷重で稼ぐためにかなり重たいし、リニアモータカー開発の動機になっている。ただこの辺は空気圧で車体を線路に押し付ける(ダウンフォース)という考え方で解決し、速度向上に不可欠な電力消費問題も同じく空力と軽量化、パワーエレクトロニクスの進歩でまぁそこそこ稼げると見えてきた。最もその代りあまりカッコイイとは言えない顔つきになって来た気はせぬでもない。
さておき、この車両と線路に日本の鉄道技術のすべてが注ぎ込まれているのは確かである。空力、軽量化、パワーエレクトロニクス、集電、空調気密、カーブでの車体傾斜制御、線路の維持管理センシング、それを維持する保線の人力。0系は既存特急車の延長線上の意味合いが強いが、N700はその辺り全て隔絶された存在になったと言って良い。ICの出現でLSIが作れるようになったがごとく、過去の蓄積と最新のエレクトロニクスのゆえにN700は存在できる。こうした総合かつ最新の成果としての「+15キロ」は大いに威張って良い。
新幹線50年。当時210キロを実現し、その当時のインフラに事後技術で75キロ上乗せしている。
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