正しく怖がる放射線【1】
●冒頭の能書き
これあまり書いてない気がするが、何を書いてもイヤな人はイヤだろうし、そうでない人はわざわざまとめ記事を読む必要もないからである。でもまあ、「万人にわかりやすい」記事少ないし、自分自身娘などへの説明文が欲しいので自己まとめとして書いておく。なお、【1】とシリーズナンバーが付いているように1回では終わらない。応じて平易に書こうとするとこうなる代物なのである。
1.放射線って何だ?
歴史的な流れを書いた方が良い。1895年、ドイツのレントゲンが物体を透過する謎の電磁波の存在に気付く。読んでの通りレントゲンの主力光線「X線」の発見である。この「X」には未知の、という意味が込められている。「謎の光線X」である。写真に撮れることから光の仲間であるとすぐに判った。翌1896年、単位に名を残すベクレルが同様に写真乾板に写る「何か」をウランも出していることに気がつき、キュリー夫妻がそれをウラン由来であると結論。更にすいへいりーべ……と各物質ゴソゴソ調べ、トリウムからも同様に何か出ていることに気が付く。こうして「目に見えないが、写真に写る何か」の何かは「放射線」と呼ばれるようになり、X線以後、α、β、γ、と名前がつけられた。その後の知見の増大により、「放射線」は「高速移動する粒子」(電子や陽子、ヘリウム原子核など)と「電磁波」(X線・γ線)に分けられることが判った。
2.放射線の発生
X線は「真空放電」で発生するが、他は主に放射性物質の放射性崩壊(いわゆる核反応)に伴って発生する。この記事では当然放射線崩壊を扱う。放射性物質とは要するに不安定な物質のことを言い、放射性崩壊を起こして安定な物質に変わろうとする。「錬金術」はそもそも他の物質を金という物質に変化させようという無駄な試みが発端だが、放射性物質はその「物質が他の物質に変化する」を実際起こす。ウランは分裂し、その結果セシウムやストロンチウムに変わり、この際、放射線と大量の熱を発生する。この熱はアインシュタインが発表した方程式「E=MC2」に従うもので、原爆や原子炉はこの熱を利用するものである。なお、金自体は陽子79個と中性子118個をくっつければ作れるが、崩壊で熱が出る(エネルギをため込んでいた)ことから判るように、くっつけるためには応じたエネルギを与えてやる必要がある。現状、そんなエネルギが出るのは自然界では超新星爆発しかなく、人工的には加速器で陽子や中性子を地道に積み上げて行くしか方法はない。但し、金1gは金原子91475564000000000000000個で構成されていることから考えると、人造で金を得るのに必要な資金とエネルギは、店で金の地金を買うより遙かに高額となり、割に合わないので誰もやらないのである。
« 宝永地震を範として【3・終】 | トップページ | 正しく怖がる放射線【2】 »
コメント