パンデミックに備えよ
怖い話をする。
「エボラ出血熱」(Ebola hemorrhagic fever)
は、フィロウィルス科のエボラウィルス族のウィルスによって生じる感染症である。5種が知られ、中でもブンディブギョ(Bundibugyo ebolavirus:BDBV)、スーダン(Sudan ebolavirus :SUDV)、ザイール(Zaire ebolavirus :EBOV)の3種はしばしば局地大流行(アウトブレイク)を起こしてきた。その症状は「出血熱」の名の如く、当初は風邪同様の様態を見せるものの、やがて身体のあちこち(粘膜や消化管内などを皮切りに最終的には突如皮膚が裂ける)から出血しながら死に至る凄絶な経過を呈する。死亡率は25~90%にも及び、仮に寛解しても失明など重篤な後遺症が残る。それは人体が生きながら破壊されると表現するに値する。
とはいえ、これらはアフリカ内奥に限られた病気であった、これまでは。
沿岸部に出て来た。そして現地の医師やアメリカ人の感染者。死者が出ている。
かつて世界的に流行し多くの人が亡くなった大病が幾つかあった。1918年に流行ったスペイン風邪(インフルエンザ)、欧州史に幾度も登場するペストなど代表だろう。ペストはダニやネズミが主な原因だが、都市化によって彼らが殺戮されるや減少した。ちなみに日本では1926年を最後にペストの患者は出ていない。
しかし、ペストは1990年代以降、世界的に見れば患者が増加しているという。理由は簡単で、ノミやネズミが生き延びた地域まで人間の生活範囲が広がったから。自分たちで追いやっておいて、自分たちで追いついたのである。そして今般、エボラが国際交流の多いアフリカ沿岸諸国に達した。
生き物寄らずそうだが、その時の環境下で最も広がりやすい仕組みを備えたものが広がる。ホテイアオイが湖水を埋め尽くす話は知られているし、アメリカでは砂漠化防止にと愚かにも日本の「葛」を移入して大繁殖。人の生活圏を脅かす事態になっているとか。
日本は島国であるだけ伝搬ルートは限られる。極論すれば鎖国で流入は食い止められる。しかし鎖国すると日本は自給できるだけのエネルギ・食料がない。エネルギや食料政策に関しては甲論乙駁存在するが、「てめえの食い扶持はてめえで確保する」が生き物として基本である事は論を俟たないであろう。が、この期に及んでギャアギャア言うだけ手遅れである。
遠からず、この病はアフリカを出るであろう。世界的大流行(パンデミック)の危険性は一段と高まったと見るべきであろう。5つの大陸をジェット機が飛び交う現在、「今そこにある危機」を正確に把握することは不可能である。比して、現在人類が有するエボラに関する知見は以下の通りである。
・チンパンジー、ゴリラ、オオコウモリ、サル、レイヨウ、ヤマアラシを経由して感染した事例が知られている
・ペストにおけるネズミのような確実な宿主は不明である
・人=人感染は体液の接触で発生することが分かっている
・治療法はない(感染してもどうにもならない)
・エボラと確定する技術は専門の研究機関しか有していない(感染判明まで時間を要する)
・エボラを扱うにはBio-Safety Level4の設備が必要であり、世界に44。日本には「0」である(日本には厳密に言うと2カ所がレベル4で動かせるが、反対運動でレベル3として動いている)
以上。
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