モンスターの行方
台風2014年8号。紀伊半島再上陸直前の姿である。可視画像でどうにか渦巻きを確認できるのは「モンスター」と呼ばれた名残か。
今回はあまりにモンスターだ史上最大だ言われたせいか、「台風そのもの」に注目が行き過ぎた気がしてならない。
これはその南木曾で土石流が起きた頃のレーダー。
九州上陸直前。山形や北海道に赤い部分がある。熱帯低気圧は不連続線の活動を活発化させる。
これはいわゆる「東海豪雨」(2000年9月11日)の天気図および雲の写真である(名古屋地方気象台HPより)。天気図内の解説の通りで、台風へ向かう高温で湿った空気が前線や地形により発達した積乱雲を生み出す。台風ばかり見てるとこうした周辺の状況に気づかない。
そして惜しむらくは南木曾は土石流の好発地で、将来へ伝える碑があったというのだ。昭和28年7月の土石流に伴うもので、以下のように刻んであるという。
白い雨が降るとぬける
尾先 谷口 宮の前
雨に風が加わると危い
長雨後、谷の水が急に止まったらぬける
蛇ぬけの水は黒い
蛇ぬけの前にはきな臭い匂いがする
(http://www.pref.nagano.lg.jp/sabo/kyoiku/shogai/bosai/doshasaigai/hebinuke.html)
わかる?
白い雨:雨粒自身が砕かれて白い煙状になるほどの豪雨。滝の下の方が霧に包まれたようになるのと同じメカニズム
抜ける:土石流そのもののこと。「蛇抜け」(じゃぬけ・へびぬけ)という。黒くぬめぬめした身体でのたうつ蛇に似せたか。なお説話に多い「蛇神」「龍神」は大抵こうした土石流を差す。
尾先 谷口 宮の前:尾先は「一段高く突き出たところ」。この三つの部位は家を建てるには禁忌とされる。
長雨後、谷の水が急に止まったら:崩壊物で堰止め湖が出来ている
蛇抜けの水は黒い:この地の基礎岩盤である花崗岩層の上の土が全部ほじくり返され、黒く染まるから
蛇ぬけの前にはきな臭い匂いがする:巨石同士がぶつかり合って「火打ち石」と同じ理屈で火花と匂いを発する
…斯くして今般土石流前にも「白い雨」と「きな臭い」は感ぜられたそうである。でも、こうして科学的機序を書き表すと初めて理解できる話で、そうでなければ体験した人、意味知る人が言い伝えなければ伝わらない。逆に言うと水害常習地にはこうした碑文があるのが普通で、紐解けば貴重な教訓として覚えとすることが出来る。
あなたが学生ならばお住まいの地にあるこうした碑文を解読するのを自由研究としてはいかがか。
★南木曾の災害で流された中央本線は復旧に1ヶ月以上を要すの由
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