カーペンターズ・シングルズ 1969-1981【ハイレゾ音源再生】
★注意:この記事は作成時点存在した「96kHz/24bit」仕様に基づいて書いてあります。その後配信が取り下げられ、2015年6月に再開しましたが、「mora」で「48/24」とされています。差異があることを含みおき下さい★
●冒頭の能書き
2014年9月17日。この一世を風靡した米国兄妹デュオの楽曲がハイレゾ音源により配信開始された(ジャケ写をクリック)。事前告知は配信サイト「e-onkyo」の予告ページや、メルマガ、ツイッターで流れただけで、17日当日になっていきなりレコメンドに出てきて「え!?」となった向きも多いようである。個人的には、別記の理由により、こうした過去録音のハイレゾ化を都度レビューする気はない(意義を感じない)のだが、彼らに関しては、広い年齢層に支持され、応じて検索してきた履歴がチラホラあること、および、これがハイレゾ導入の動機になればそれは良いとしてレビューを記す。
●別記の理由
アルバムタイトルで判るようにレコード時代に活躍したユニットであるから、当時録音によるアナログマスター音源からハイレゾ装置によるリマスタリングとなる。従って当時の音質以上になるものではない。この点で、「ハイレゾとしての音質」を評価することにはならず、マイケル・ジャクソンとか類例のレビューもしていない。上記「意義を感じない」はそういう意味である。ただ、アナログ磁気テープの経年はそのまま音質の劣化になるため、品質を維持して後世に継承し、なおかつその品質をリスナーに直接届ける、という点で、アナログをハイレゾで起こす大義は支持する。なお、2002年に同一タイトル、曲順のスーパーオーディオCDが出ているが、全く同一の音源なのか確認はしていない。
●音質
1曲目「イエスタデイ・ワンス・モア」(YESTERDAY ONCE MORE)。このカレンの語りかけてくるような冒頭だけで、殆どの方は一発KOと考えられる。喉の震えが、口の形が、唇の動きが目に浮かぶ一音一音の進行。サビと共に左右に広がり溢れる音の数々。クリアでいて、温かみがあり、たゆたう。それはアポロが月へ向かった60年代後半~70年代の陽光そのものである。ネットワークとエレクトロニクスでガチガチに縛られ、繋がった現代と隔世の感を抱かざるを得ない。それを室内に、あるいは頭の中に、彷彿と浮かび上がらせるネットワークとエレクトロニクスの力は「いい仕事した」以外の何物でもない。
特筆すべきはバックグラウンドのノイズの少なさである。磁気テープはヒステリシスノイズや、処理回路に起因する「サー」というノイズが常時重畳し、周波数高い音ほどその中に埋もれていって聞こえなくなる、という様相を呈するが、それがまるで水底まで透明な湖のように、明晰でクリアである。俊敏・過渡的な変化に付随するノイズも少なく、ほぼ「あるがまま」のマスター音源なのだろう。水晶の中に置かれた当時のスタジオを見通すようで見事である。
またノイズの少なさは微弱音に効いている。消えゆくような余韻が最後の一滴まできちんと漏らさず聞き取れる。これはハイレゾ+デジタルの恩恵だろう。なお、全体に録音レベルが低めにされているので、「ノーマライズ」機能の付いたソフト・ハードをお持ちの諸兄は活用されると良いだろう、増幅系の負担が減る。一方擬似的に超音波成分を付加する高域補完の類いは必要ない。
●総括
静寂からスッと立ち上がり、そして広がって行く有様は華麗である。楽器の数が少ないので豪奢な仕上がり、とはならないが、ブリリアントに輝くような楽曲はハイレゾの面目躍如である。「完成直後のレコードの音」それ以上を持ち込めるのは確かである。現代的なクリアネスとレスポンスが、往年の温もりをすくい取り浮かび上がらせており、極上としておく。
単曲購入も出来るので、まずは1曲からあなたのシステムで解放してみないか。45回転を包み込んで持ってきた96kHz/24bit。その音はもう、永遠にすり切れない。
★2015年6月時点で配信されているものは「48kHz/24bit」です
入力機材(2系統試している)
PC→HDMI→ヤマハ:DSP-Z11
DSDディスク2.8MHz→OPPO:DJP-103→ヤマハ:DSP-Z11
出力(同)
スピーカ:ヤマハNS-F500
ヘッドホン:スタックスSRM-323S+SR-404
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