林ももこ「CIRCLE」ガチ聞き
●概要
林ももこソロで通算4枚目のアルバム。昨日ライブで発売開始を入手し早速試聴。
全曲ダイジェスト動画を貼っておく。
●聴取機材
今回からオーディオ装置にサブウーハを加えている。5.1のシアターシステムだが、そのうちメインの2本とウーハを駆動。
1.室内オーディオ再生
・CDP:アキュフェーズDP-65
・アンプ:ヤマハDSP-Z11(スタンダード再生。室内特性に合わせたイコライザとサブウーハへの振り分けのみ行う)
・スピーカ:メイン=ヤマハNS-F500/サブウーハ=ヤマハNS-SW210
2.ヘッドホンモニター再生
・CDP:同上
・ヘッドホン:スタックスSR-004(コンデンサ型)
3.ウォークマン
NW-ZX1+イヤホンMDR-EX1000(音源はflac形式44.1kHz/16bitで収録)
●全般音質傾向
クリアで清涼感のある音質で好感が持てる。いい意味で軽さがありハキハキとした音を繰り出す。それは本人の歌い方に通じるところがあり、生を閉じ込めたエレクトリックという観点で「OK!」と声に出したくなる。手のひらの端末に彼女の歌声抱きしめて。そんな愛おしさがある。
実は彼女の声は録音が難しい部類と思われる。「ハスキー」と一般に表されるが、全域にちりばめられた微粒子のような音要素で構成され、女の子っぽい可愛らしさも重ね持っていて、持ち出そうと思うとマイクや機材、サンプリング周波数まで考慮した、高度な内容を要求する。比してこの板はハイレゾ機器で取り込んでデジタル演算でスパッと切った明快さを有する(※)。Tr.3「Tokyo」の録音など秀逸である。
●定位・奥行き・広がり
ボーカルは中空の前に出て浮遊感を持って定位する。音像自体は大きいがリビングにヴァーチャル林ももこ降り立つ姿はオーディオ再生の快楽最たるところ。
バックサウンドは壁に沿って展開される形となり、動く絵画の如く。それはプライベートライブを投影したかのようだ。ただ、ステレオフォニックかと言われると左右はさておき手前←→奥行き方向のベクトルは少ない。贅沢な要望として出しておく。
●周波数・ダイナミックレンジ
実は別記事書く予定だがサブウーハの追加で林ももこ全部聞き直した。そもそもベースとドラム・パーカッションが常在しているので当然低域ある程度持つ。それは知っていたのだがサブウーハが結構重心下げることに気付いたからだ。上で「いい意味で軽さ」と書いているが、低域まで十分なシステムだと安定感のあるサウンドになる。「君とロケット」などハッとさせられる。
ダイナミックレンジ、すなわち音の大小は彼女の場合重要なファクターである。バラードが多く、囁くような歌い方多く、耳に届けるのに混濁は邪魔をする。この板はスッと出てくる。静寂の中に彼女の応援する歌声がある。その点で例えば「星の降らせ方」は消えゆくように作品を閉じて行く。
●総括
時代のゆえ、手のひらイヤホンの聴き方が多いと思う。安心できるヴォーカル・録音なので、少し大きめ、マッシヴに再生する楽しみ方提示できる。高域補完・疑似ハイレゾ化の類いは不要。また是非に自室で、あるいは音響ショップのショウルーム等で、スピーカから雄大に響かせて「溺れる」ように聞くという体験を一度試みられたい。特に今作顕著だがリリックが心象世界・気持ちであるから、笑みであれ痛みであれ、あなた自身の経験と寄り添う言葉が流れた時、その時の風景や空間を呼び出すことになるだろう。ちなみにそっち方面で贅沢を書くと、「東京」と書いて東京を知らぬ人には東京が思い浮かばぬというデメリットになる。テレビに出て来る東京はドラマの中のスタイリッシュな都会生活であり、行列の出来るオシャレなスイーツのお店であり、場末のやさぐれを有する「本当の」東京では決して無い。この辺は恐らく「初めて林ももこを聞いた」10代以下若年層への説得力に繋がる。
彼女は本作を楽曲作成からトラックダウンまで本当に苦労したとネット番組で語った。応じた成果物になっていると思う。自分は彼女の追っかけに分類されるだろうが、オーディオヲタクの矜持は外さぬつもりである(きついこと言ったこともある)。その点でも満足な円盤と書いておく。
いっそうの飛躍に繋がることを願う。
※について。この辺は自分でハイレゾ音源を同様に加工した場合の結果との比較の話で、実際どうかはもちろん分からない。
ちなみに音質の落としどころについては、自分の記事を見た歌手の方や、歌もリリースされる声優さんなんかともやりとりしたが「まんべんなく」聞ける音質にチューンしたり、CD用、圧縮配信用それぞれに「聞きやすく」することが多いようである。だがそれは今の時代は不要というのが自分の印象。ハイレゾ→CDフォーマット→MP3と落としていっても、楽曲のエッセンスのような物は充分保たれる。最強を一発作ってデジタル演算に任せるで聞く側としては十分である。
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