豪壮サウンドの宝箱「ONN」
●冒頭の能書き
前に書いてるBlu-Swingではキーボード系のご担当、中村裕介氏のソロアルバム「ONN」をレビューする。電子音源による実験・前衛的な内容と言え、自分が手にしたアートブック仕様はCD限定プレス300程度とか(別にiTunes配信がある)。知らない人がこの板に巡り合い、更に手にする(ジャケ買いする)機会はまずないと思うが、逆に知ってるからって何もレスポンスしないのは意味なさないし、聞く側の視野拡大にもつながらない。この辺りは自分のようなヲタ、マニアの仕事(仕業?)だろう。まぁ、ありのまま書く。ちなみにウォークマン放り込むに際し曲名ちまちま書いてたら、Gracenoteがジャンル選べとやかましいから、「どれでもねぇ」程度の意図でオルタナにしてある。
●印象だら書き
ノイズ・パルスのミニマル反復で始まる。コンデンサ型で全解像して「音の良いノイズだ」となる。それは「4分33秒」のバックグラウンドノイズが無いと褒めちぎるかの如く。
変な書き出しだが、実はこの円盤、再生するシステムと耳への挑戦というのが第一印象である。ウォークマンに突っ込んだと書いたが、殆どのヘッドホンステレオ・イヤホンでは2曲目以降の「低域」は再生できない可能性が高い。ほぼ根こそぎ出ないか、クリップして音圧にならないかのどっちかだ。ZX1+EX1000でいっぱいいっぱいである。出せればあなたの手のひらシステムは優秀だ。
従いスピーカシステムに回すと当然サブウーハが吠え猛る。クロスオーバ40Hzの地鳴り専用空気砲が本領を発揮する。
JBLの43やTADはどんな咆哮を上げるのだろう。通奏低音という言葉があるが、そこにどっかと座ってメロディが乗る。演色・エフェクトの類は感じず、カリッカリに乾いた、しかし素材そのものの音色で音と声が乗って行く(ヴォーカルに多少のリバーブは付けてある)。録音というよりパルスコードモジュレーション、変調であり復調解像である。耳も機械の一部と化す。というか良く44/16フォーマットに収めたなこれ。
ジャンル的な話をするのは無粋だが、トランス、アシッド、ハードコアテクノに覚えのある方は意外とすんなり入れるだろう。ドラム&ベースの流れも汲もうが、モダンでクールを突き詰めた感じ。ちなみに爆音テクノの一部に見られるような、脳みそ圧迫するようなまでの低音の窒息感はない。メロディラインやグルーヴ感はジャズの雰囲気。
家族で飯食いながら流すもん、ではあるまい。一人の夜にオーディオシステムと対峙する楽曲群と考える。趣向合えば耽溺でき心地よくなれる。なおYMOみたいなフルエレキではない。そのBlu-Swingメンバーのサポートも得てアコースティックが少々加わる。曲名ft.と付くのはフィーチャリングヴォーカル(featuring→ft.)つまり歌唱のある楽曲だが、サンプリングして打ちこみや初音ミク的なものではなく、普通に歌っているので念のため。
冒頭のノイズ、パルスはアルバム内随所にチラつく。ノイズを克明に書き出せれば気分が良く、システム的にはそこに静電気放電みたいな痛さを感じるくらいなら勝ち。突き刺さるよ、耳障りに聞こえるよ、ったら負け。低音もボンボン言って主旋律邪魔するならシステムのチューニングが不十分。
●総括
オレはまずニヤニヤしながら聞き、ついで真剣に聞き込み、そして気持ちよくなってウトウトした。開放空間でスピーカでもイヤホンヘッドホンの密閉時空でもOK。少しトリップできる。異世界だが不気味ではない。普段起きていることのない、深夜というには朝に近く、夜明けというには暗すぎる空に、二つ向こうの季節の星が煌めいている静寂の雑音をバックに。
(2011年12月の皆既月食時)
・機材
CDP:アキュフェーズDP-65
アンプ:ヤマハDSP-Z11
SP:ヤマハNS-F500+NS-SW210
ヘッドホン:スタックス(SRM-323S+SR-404)
手のひら:ウォークマンNW-ZX1+MDR-EX1000
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