DSD256(11.2MHz)への挑戦【ハイレゾ音源再生スペシャル】
●冒頭の能書き
その昔CDが出始めの頃、ソニーが「サウンドアドベンチャーシリーズ」として、その能力限界に挑戦した楽曲集を幾つか出した。「コントラバス・マリンバ・エクスプロージョン」
とか典型だ。ちなみにこれはレコードでは難しかった超低音再生(その低音でレコード針が逆に動いてしまう)を、「コントラバス」なマリンバ…巨大木琴で挑戦したモノ。楽曲的には、当然それを目したクラシックなどないのでオリジナルとなり、プログレッシブというか、音楽自体実験的な内容になっていた。なおこれの発する32.7Hzはサブウーハが動いてズン、というものではなく、部屋の空気の揺らぎとなる。「ん?」ってな感じになる。そして今般、ハイレゾ音源で似たような試みが始まり、「超・高解像度」の方向、DSD256(11.2MHz)の再生を試みたので報告する。
●11.2MHzDSDの位置づけ
まずDSD:Direct Stream Digitalを雑駁に解説しておく。いやクソ簡単に書くから。技術的には差分量子化(前の音と今の音の差をデジタル化する)の流れを汲み、「その比較作業を超高速でやってやれば、『増えた』『減った』だけで済むんじゃね?」という思想に基づくものである。当初CDを目した音楽信号のデジタル変換・逆に音楽信号への復調に用いられたが、追って、CD用に演算する前の状態、つまり、作成された「増えた・減った」の集合体をそのまんま円盤にして売り出した。スーパーオーディオCD(SACD)である。ここで書き込まれる増えた減ったの信号は2.822MHzである。CDの比較周期44.1kHzの64倍なのでDSD64と呼ぶ。
で、タイトル分かった人多かろう、比較周期をその更に4倍、CDの256倍11.2MHzにしましたというのが今回音源DSD256・11.2MHzである。SACDは録音も再生も専用機械を必要としたため、出す側聞く側音バカ以外ついて行けず、商業的には「失敗」したが、技術自体は伝承発展し、今般ハイレゾブームで4倍速い奴になって戻ってきた。ということになる。なお、録音再生の技術的にはこの更に上、DSD512・22.4MHzまで開発されている(2015/3)。
●ハード・ソフト
2015年春現在、ハイレゾ中でも最も高い周波数を扱い、技術的にも難度が高いため、再生可能な機材やソフトは限られる。送り出しはパソコンからUSB、なのだが、音源を扱うソフト、音楽信号に復調する機械が少ない。また、音楽データ自体扱っている所は少ない。公的に販売しているのはe-onkyoなど一部の配信会社で、後は実験的に無料で公開しているところが幾つか、という状況である。最高音質を無料放出とかスゴそうだが、扱える環境が少ないのでどのみち商売にならないという判断もあるのだろう。自分の環境は以下の通りである。
・PC:富士通win8.1★パソ自体はwin8なら応じた動作してくれる
・音源再生:foobar2000★DSD再生モード(SACDプラグイン・ASIOドライバ)を整えること
・DA変換:iFi-Audio nano_iDSD(winPCのみ11.2MHz対応。Macは1クラス上の「micro」が必要)
・音源:千葉史絵「Rougequeue」(e-onkyo)他、漁って落とした無料音源各種
この辺の具体的方法は書かない。興味持ってこの記事読んでる人は、細かく書かずともできるスキルが既にあると思うので。
れっつらごー
●再生の実際
千葉氏の商業ソフトで代表として結果を書く。まず、nanoDSDちゃんと11.2MHz認識して紫に光った。紫は4倍速い。
最先端の音源再生(キリッ
ちなみにnanoはこれが目的で買ったわけではない。USB-DDCが本務であったが、娘のミニコンポでウォークマンの出力受けたり、クルマに持ち込まれたりしている。iFi社が最先端ドライバを用意してくれたので対応してしまった、だけ。なお、DSD256が再生出来るハードとしては、iFiのnano、microの他は
だ、そうな。
●音質
・コンポーネント(ヤマハDSP-Z11+ヤマハNS-F500)
いつぞやオーディオフェスタのソニーブースで「5.6MHzDSDの情報量の多さに圧倒された」と書いたが、その圧倒的情報量持ち込むことに成功した。周波数特性が~とか書くだけヤボである。濃密に音が繰り出される。千葉氏の楽曲はピアノ中心ジャズバンドで、長さ6分からだが、あっという間に6分過ぎる。ここまで有毛細胞ざわめかせる音は自然界を対象にしてもそうそうは無いのではないか。ちなみに高音質には臨場感とかスタジオ感とかいう表現つきものだが、これ違う。音楽データのまさに復調である。「音好き」が耽溺して聞く物。なお直後にCDや44/24聞くと幻滅するので通常ハイレゾ音源(スゴイコトバ作ったなオレ)を一旦聞いてクールダウンすること。
はっはっは。
・スタックス
nanoから直結する。
千葉氏走らせると「ザー」っとホワイトノイズ聞こえる。アナログのそれである。DSDはマルチトラックで後から編集とか出来ないので、一発録りか、編集を介するならアナログのミキサー類を使う。録音プロセス不明だが「アナログ段」のそれが含まれていると見てよさそう。
(ご本人より)
他は分解・解像・描写である。オシロスコープに波形を取り出す作業を耳でしているよう。音楽鑑賞と言うよりは信号復調という「作業」。究極のハードコア、趣味のオーディオの先端と書いておく。トランシーと言っても良い。病みつきになる中毒性を有する。
●総括
完全にエンスージャストの手慰み。オーディオ興味ない人に聞かせて「ふーん」で済ませられても文句言わないこと。nanoたん27000円でここまで出せれば何も言うことは無い。とはいえ、「この方法」しか再生出来ないし、音源も高いしデータ量もべらぼうだ(1曲1GB!)。常用・一般向きの段階ではあるまい、というかこの流れの中にあってDSD再生すらも出来ないウォークマンNW-ZX2の残念仕様が改めて浮き彫りになり、ため息ああ~あである。拙速に過ぎたろうアノ機械は。
★2015/10/24補遺
その後買い換えたデノンSACDプレーヤ「DCD-SX11」でも同じ設定で再生成功。スピーカの存在が消えたかの如き音であった。
●参考元一覧
・foobar2000でDSD再生
・ifiAudio
・e-onkyo
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