箱根の山は天下の険
ゴチャゴチャ書くより一目瞭然。見ての通り箱根山は「◎」形をしている。これは外側の○が本来の山の裾野であり、大きな噴火で山体が崩壊。今は噴火口たる本体とその周辺だけが残っている状態であることを示す。ちなみにこのことはお隣、富士山が噴くと同様に山体が崩壊して、同様の姿に成り果てる可能性を示唆する。
さておく。
箱根は現在活動の変容が報じられ、直下を震源とする地震も起きている。何が生じようとしているのか。
「理科年表」には箱根山について「噴火記録なし、しばしば地震群発」とあるのみである。このことは有史以来人が書き残すような噴火はなかったことを示す。
地質年代は大きな活動の痕跡があって、火山灰が関東を広く覆ったと推定されている。6万~6万5千年前の話である。
不思議なことに山体が崩壊するような破滅的噴火を人類はここ数万年経験していない。現代文明はここ1万年からで狩猟採集よりインターネットでうんこなうまで進化したが、これは進化のポテンシャル自体はホモサピエンス登場した20万年前から常在したものの、大きな災害で都度リセットされてきただけかも知れない。トバ火山噴火(7万5千年前)など、人類が「全地球で数千人」まで減ったとされる。このことは、我々はたまたま、噴火の少ないタイミングを生きているだけと考えた方が良い。
実際箱根山のエネルギ源たる運動は関東大地震・南海トラフ地震をもたらすフィリピン海プレートの陥入であって、これは現在も止むことなく続いている。一方で山体崩壊を起こしたと言うことは、山体(恐らくは、富士山類似の円錐形成層火山)形成に至るまで連続的に火山活動があったことも意味する。「今、こんな格好をしている」だけで、我々の生涯たかが100年は地球にとって瞬きの刹那ですらない。それは同時に科学的知見の蓄積が同程度に過ぎないことを意味し、即ち箱根山の動向について予断を許さない。
じゃぁ破局的噴火すんのか。
最近の研究で、破局的噴火を起こしていた時代とマグマのルート(プレートの配置や運動の向き)が違うこと、および箱根山はもう少し規模の小さい「水蒸気爆発」を繰り返しているらしいことが分かってきている。ただ「小さい」といっても、例えば記憶に新しいところで御嶽山火山災害は水蒸気爆発とされるが、箱根のそれは高温のガスが周囲数キロにわたって時速100キロで広がるという代物で、御嶽の規模を基準に見ると大変な目に遭う。
現下「噴火口」というか、一番煙噴いてる大涌谷に着目したとき、溶岩噴くような活動は3000年前が最後という。その後「水蒸気爆発の痕跡」(要するにクレーター)が5つほど見つかり、2800年前、2000年前、鎌倉時代に3回、と同定された。
「噴火の記録はない」
そう。ただ、鎌倉時代は地震の記録が多い。
1213年・1217年・1230年・1240年・1241年(★)・1257年・1293年(★)。
山崩れ・寺社倒壊などの記録がある。★は津波を伴っており、1495年の関東地震(明応関東地震)の1回前の関東地震だった可能性がある。江戸期、大正期の活動から、関東地震の前には直下型が増えるので、この記録は虚偽ではあるまい。さすれば、箱根の活動はこの中に埋もれてしまっている可能性がある。
いずれにせよここのところは800~1000年周期で水蒸気爆発している可能性があり、さすれば、鎌倉時代より800年を経た現時点はまさに「その時」の可能性を示唆する。未経験の現象が起きているのは確かだが、科学的知見の推定の範囲を超えるものでは無いように見受けられる。鎌倉幕府が存続し、噴火の記録がないこと自体、そこまで事象が及んでいないことを裏打ちする。
関東全体が、にはならんと思うが、御嶽山を越える水蒸気爆発のリスクは孕むとしておくべきであろう。
日本列島自体、生きて動いている。
参考文献:例えばこれ。後は理科年表など。
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