【ハイレゾ音源再生】Color Talk @shihorainbow
●ちと長い冒頭の能書き
彼女の声を知ったきっかけは、「moraで無料配信してた」である。ハイレゾこじらすと勢いジャズ・クラシック偏重になるが、挙げ句、これ女性ヴォーカルいいんじゃね?と思っていた所であった。Enyaやシセル(シセル・シルシェブー(Sissel Kyrkjebø):リレハンメル冬季五輪の歌姫)など透明系はもちろん、ハスキー・ウィスパー・パワフルなど、女性は喉の構造に起因して周波数分布が複雑になりやすい(スピーカーで言えば分割振動)。応じて周波数方向キッチリ録音しないと、こもり、付帯音、ヘタすると別人に聞こえてしまったりする。また、音源としても、娘と一緒に聞けて継承出来るような、「平成の歌声」を探していたところであった。果たして伸びしろを感じ、プレイリスト「Shiho Rainbow」を準備してのアルバムお迎えである。「Color Talk」虹の七色7曲入り。96/24。再生機材はウォークマンNW-ZX1+イヤホンMDR-EX1000。スピーカ再生はHDMI経由ヤマハDSP-Z11+NS-F500。
●全体傾向
「まじめに取り組んだ出来上がり」というのが第一印象。彼女はmoraの新人発掘プロジェクト「mora factory」の第1号アーティストなのだが、宣伝で盛り上げてキャッチーな楽曲、という良くある流れを取らず、意を汲んだリリックと似合ったメロディラインがタッグを組み、リスナーに寄り添う楽曲群に仕上がっている。派手さは無いかも知れないが、聞く人の心の糧になる作りと感じる。歌は時に「心に染みこむ」ように響くことあるが、その効能大であり、もってハイレゾの持つ自然さは効き目をいや増す。活かしたのは「ゴスペルを意識した」というアレンジがなされたタイトルトラック「Color Talk」であろうか。ただ、個人的にはもっとコーラスワークがあっても良かったかも。なお、「学園天国」は言わずと知れた昭和の楽曲カバーであるが、ノスタルジーではなく、2010年代応じた「いかにも」な出来映えになっていて面白い。
●音質
良くも悪くも、ありのまま録音してある。ヴォーカルは伸びやかパワフル系で、これはどっちか言うとビット深度が効くタイプだが、瞬発力は96kHzならではの過渡特性を見せ、ニヤッとさせられる。特にアルバム用に新規録音した楽曲はスムーズで、書道の払いの筆捌きのように素直に伸び、聞いていて心地よい。
「悪くも」と書いた。例えば打ち込みや声にエフェクトを掛けたところは、それら電子機器の上限が露わになるし、「星空」のピアノや弦の鳴り方も、新録「ハート 裸」のそれに比べると鮮度が下がって聞こえる。肝心なヴォーカルはちゃんと録れているわけだが、こうした「古い」部分が混じっているとハイレゾ音場では大きな違和感になって現れる。こんだけ力のあるヴォーカルであるから、エフェクトで変質させる必要はなかろうし、ありのまま普通に聞きたい。生楽器もハイレゾのヘッドルームにかまけてそのまま録れば良い(多少低レベルでも分解能は保たれる)。改善要望としておく。そろそろコンプレッサというキカイをスタジオから捨てようぜ(おいおい)。
●まとめ
プロデューサー氏の解説で、「日本にとどまらないアーティスト」旨の文言を見た。オペラ歌手に代表されるように、世界で歌姫(DIVA)と呼ばれる歌手達は、身体の大きさと構造全体を駆使して、文字通り身体の限りで音声(おんじょう)を繰り出している。オペラ歌手に『ぽっちゃり』が多いのは応じた音響用体積の確保が目的なのだ。当然、手強い市場ということになるが、聞く限り「響かせるポイント」(共鳴点)は把握出来ている印象であり、もう少しの音域と、後は戦略的な楽曲の準備が課題かな、という感じ。でもまぁその前に、日本のポップス界に円盤に収まりきれない虹色の声響かせてはくれまいか。ハイレゾには「録りきれないので妥協」という制限は基本、ない。
だったら、思い切り。これからの歌声にエールを送ろう。
★デビュー曲無料配信「虹の世界」まぁ、ハイレゾお試しも兼ねて落としてみんしゃい。
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