【ハイレゾ音源再生】Enya「Dark Sky Island」on96kHz/24bit
7年ぶりの新譜はリリースの報を聞いて考えてはいたが、やっと?とうとう?96/24で配信開始である。この人の楽曲は一人コツコツ多重どんぶり……テープレコーダを使ったセルフの重ね録りと聞いていて、ヲタク的にはPCMでやってくれとずーっと思っていたのだが、一足飛びに96/24。期待は高まる。リリースを出先で知ったのでスマホで購入手続きだけ実施、帰宅するとe-onkyoとリンクしているパナのレコーダにDL完了。早速聞いてみた。代表2曲紹介。
1.The Humming...
弦ものイントロだがここだけでもうスケールが違う。音場が手前にふわっと広がり、オレは勝手に「ケルティックドーン」と呼んでいるが、大地の咆哮のような重低音がズドンと地を這う。周波数レンジ自体は「広い」とは思わない。ただノイズフロアは格段に低い。メインボーカルはセンターやや手前に空中浮揚、自声コーラスとギターが左右にパンニング。サンプリングメインだし、元々コーラスを重ねて架空の音楽空間を作るので、いわゆる「生っぽさ」はない。しかしハイレゾの恩恵は絶大と言って良く、デジタルの作った透明な空間にハーモニクスが飛び回る。一般に芸術家は一度これと決めた手段をなかなか変えないものだが、彼女の場合ハイレゾリューションデジタルミキサーを見事にねじ伏せたと言って良い。タイトルハミングだが「ハニング窓」見ていて楽しい。なお、イントロでそのハニング窓32kHzに何か出てくるが耳には聞こえない。ディザでもないようだ。広がりと指向性はこいつが与えているのかもしれない。
7.Dark Sky Island
タイトルトラック。静かにハミングで始まる(むしろこっちが!)。メインボーカルはツイータ同士を結んだ線、よりも若干高い位置に立つ。やや上から降ってくる感じの音場。幾重にも重ね録られた彼女の声がスピーカから耳までの空間に充ち満ちる。さざ波から大波までベクトル異なる波同士重ね流れる水面のようで(Dark Skyなのに!)圧巻である。ハイレゾはスピーカで聞け。なお、彼女の作品はほとんどが「声」で、楽器は脇役的な音作りが多かったが、これは弦たち十分な階調が与えられ声の海中で埋もれず分離できる。壮大なコーラスワークに埋没耽溺しつつ、弦の響きに鼓膜を任せる。至福の時空である。
●まとめ
声が主体でサンプリング楽曲なので、高域伸ばして倍音ゆんゆん、ひっくり返して「ハイレゾっぽさ」を強調した作りではない。それ期待すると肩すかしを食らう。むしろSACD的なナチュラルさが持ち味で、そこはひょっとすると個々声トラックオリジナルはアナログで(っぽいひりつき、付帯音が少しある)、どんぶり作業をデジタル化したのかも知れぬ。どっちにせよノイズフロアが低い分、浮揚感を得ており、北欧の冬の星空を彷彿させる「音だけの空間」確保に成功している。これはコンピュータ作業とハイレゾならではの世界で贅沢だろう。是非スピーカからスケール大きく鳴らして欲しい。なお、一通り聞き込んで前作「And Winter Came」を再生すると「え?こんな音だったっけ?」と愕然とする。音が引っ込んでしまい、丸く、(特にピアノが)金属的に聞こえる。逆に言うと、エンヤは楽曲はさておき音質が……で躊躇っていた向きにも(そんな偏屈がどれだけいるか分からんが)、手ばなしでおすすめ。浸るように聞いて、「どーん」で圧倒されてしまえ。
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