水面下の胎動
データ処理が恐るべきスピードで終わる時代が来ている。
「ビッグデータ」という言葉がメディアに出てくるようになって久しい。「を、使って○○ができる」といろんな人がいろんなことを言うわけだが、実際にはそんな悠長なレベルはとっくの昔に過ぎている。
マハラノビス・タグチシステム。(略MTシステム)
タグチは田口玄一という日本人の名である。故人である。統計学を駆使して認知工学というか「これ、ちょっと違う」という人間の持つ「ピンとくる」識別能力を演算で持たそうとしていた。個々の数値は普遍の範囲内だが、全体的に見ると少しおかしいということが世の中ままある。その「ちょっとおかしい」を数値で明確化しようとする試みである。
それは「普遍」を見いだす作業であり、数値化しておくべきデータを見いだす作業であり、違いの集合体から非・普遍を導き出す作業である。「逆行列」なんてエンジニアでも日常使わない算術のテクニックだが、MTシステムではこれを常用する。そしてビッグデータという概念と扱うコンピュータの処理速度は、この「常用」をほぼ一瞬レベルまで持ってきた。
イプシロン、というJAXAのロケットが2015年に打ち上げられた。それは傍目には固形燃料を使った新型、であるが、大きく進歩したのはその発射管制・制御である。ロケット自身のコンピュータと、地上側のノートパソコンだけで済んでしまう。エンジンと自身の各部のセンサから一瞬で最適条件を導き出して各種制御を行う。「一瞬の常用」の一例がこれである。
「インダストリー4.0」という言葉が製造業界でチラホラしている。スマホの後を継ぐ「目に見えて・誰でも判る」イノベーティブで「エモい」ガジェット最近見ないが、何のことはない、欧米の技術リソースはこの4.0に突っ込まれているのである。なぜならこれこそ製造・流通においてビッグデータから最適条件を得ようとする革命の胎動だからである。
すなわち、ICの開発で更に小型で集積度の高いICが開発されていったように、コンピュータの発達はより高度なコンピュータを生み出し膨大な処理を可能にしつつある。製造技術とその管理であり、試験装置であり、設計値の最適化である。小型化されれば同じ面積・体積でより多くのことが出来る。人間の五感にベネフィットした機器の開発はほぼ「あうふへーべん(Aufheben)」に達した。アウトプットが満たされれば、ターゲットはその上流へ波及してゆく。遠からず爆発的なスピードで高品質な生産システムが「人間自身が気づかなかった人間が本当に欲しいもの」を生み出すようになるだろう。キカイは人を越えて自立・自律し、それにより人はより多くの利便を享受する。
従い日本を支える「人の手の技術力の高さ」……あぐらをかいてちゃ日本丸ごと置いて行かれるよ。だって欧米は日本に取られた「おいしいところ」取り返すのに必死なんだから。日本でしかなしえなかった所を人の手を使わずになそうとする。実際、ごま粒みたいな電子部品を目にも止まらぬ速度で実装とか、人の手では無理な領域。同じことが「人じゃ無いと出来ない」と今言われている領域で起きないと誰が言い切れるだろう。土木作業……農作業……同じだよ。アメリカがTPPを結びたがったのは何故だと思う。
およそ手に職をして生業となす者はコンピュータで出来る範囲の拡大を刮目して見よ。そしてそれに対抗するのではなく、最適な使い方を時流より取得して援用せよ。「コンピュータにやらせろ」。
革命の時が来る。
« 地味鉄 | トップページ | 短歌と俳句と140字と »
« 地味鉄 | トップページ | 短歌と俳句と140字と »
コメント