サイレントチェンジに負けるな
「サイレントチェンジ」という言葉にトラウマな品管・設計業務の方は多いのではあるまいか。
一般に完成品メーカは部品をメーカから買って自社工場で組み立てて売る。その部品に完成品メーカに無断で変更を加える行為を上記のように言う。結果。
完「勝手に変えた」
部「部品のカタログスペックの範囲内だからとやかく言われる筋合いはない」
大体こうなる。そして契約時に「変えない」と約定を交わしても、腹黒いところは「どうせワカラン」と変えてくる。或いは買収等で事業主体が変わってチャラになったりする。
いつぞや日経ビジネスか何かが書いてて、結局「気をつけろ」としか読めなかった記憶がある(参考にならなかったので覚えていない)。普通に考えると契約時に材料分析して全てに規定するか、影響で被害が出たら賠償させる等の条項を盛り込み、必死こいて変化してないか分析する…とこうなるわけだが、分析もカネ掛かるわけで、現実の運用は困難である。
トップ「サイレントチェンジ気をつけろ」
部下「はい(ってどうすりゃいいんだよお前やれよ)」
大体こうなる。が、実は品質工学の教科書はぐると答えは書いてある。
まずこの「2段階設計」を実直に行う、するとその過程で、次の情報が部品ごとに得られる。
・ノイズの影響でばらついた時、どれだけ機能や性能に影響を及ぼすか
サイレントチェンジは特性のばらつきとなる。従って、サイレントチェンジに対して敏感になるべき物と、放っておいて良い物、優先順位が得られる。
次にサイレントチェンジ自体の検出に関しては、部品に対してこの「機能性評価」を導入する。どんなに複雑大規模な電子部品であっても、樹脂と金属とシリコンチップで出来ていることに変わりはない。熱と湿度と振動を加えれば、弱い部分によって、応答(グラフの傾き)が変化してくる。全数部品単体で調べるか、ロット単位で抜き取るか、完成品の試験に仕込むか、導入コストと廃却コストのバーターで決めれば良い。どっちも多少の出費はあるが、修理行脚の費用と「もう買わねぇ」による永久損失よりは安価に済むであろう。もちろん、品質ガチな日本の部品メーカと組んだり(=絶対に変えない)、校正やフィードバックで補正したり(=変化に追従して直す)等、戦略は複数立てられる。ともかくも言えることは、この辺の知識とテクニックを手にしておくと、ムダに恐れたりコストを掛ける確率は下げられる。
ちなみにここでスマートホンというヤツを考えてもらいたい。ありゃ基本的にデジタルの塊なので、「電圧の有無」さえ伝われば所要の機能は確保でき、あまりばらつきの影響はない。明るさなどもフィードバック制御するのでばらつきの影響は出にくい。電圧の有無さえ伝達出来ないと全く動かなくなり、ようやく「本当に故障」(新品交換で対応)となる。一方で唯一「ガチなアナログ」である撮影用カメラモジュールだけはソニー製で抑えてあったりする。
とりあえずケツ落ち着けて優先順位付けようず。SN比で説明せんでもばらつきの影響大小は定数的に説明出来ようもん。
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