平成28年熊本地震
●概要
パソコンに仕込んだ緊急地震速報システム3つが全て鳴動し、
6強(速報値)と出た。やや遅れてテレビで緊急地震速報が流れ、震度7が報じられる。「3.11」以来5年ぶり。設定以降4回目の「震度7」であった。しかも直下型。これは深刻な事態になったとすぐに判じた。
直下型は「地震だ」と感じた次の瞬間には大きな揺れに見舞われる。ほぼ、何も出来ない。2014年の長野県北部地震を旅先で受けた話は前に書いたが、震度7でそれは非常に厳しい状況であったに思われる。亡くなられた方にはお悔やみを申し上げる。身体の不自由な方がお風呂で溺れるとか、なんと痛ましいことか。
震源が浅くマグニチュードが6クラスということもあって、被害は狭い範囲に、但し激しい結果をもたらした。これは長野県北部の地震もそうだが「M6」であっても、震源が浅いと破壊力を発揮する事を示す。日本列島は次の巨大地震「南海トラフ」に向かい、こういう「内陸のひび割れ」が増えて行く。良く書くが「足元の地形・地質を把握し、リスクを認識」いただきたい。
●メカニズム
気象庁のレポートや、手持ち・ネットの文献等に基づいて記す。
震源と強く揺れた範囲はこれらの図の通り。ピンクの部分が「震度7」と見られる。
震源をプロットすると水色の線…断層に沿って分布する。「×」と「7のエリア」にズレがあるが、これは断層の割れ目が斜めになっていることと、地盤の柔らかさの影響により、地上へ伝わる振動が最も大きくなったのが益城(ましき)であったと理解されたい。
メカニズムは「北と南に引っ張られる横ずれ断層」。
断層帯の特定のために余震活動を見てみる。
余震活動は非常に多い。21時までに148回とか。少しタイムラグを置いてサンプリングし、断層図と重ねるとこの通り。日奈久(ひなぐ)断層の高野-白旗区間と呼ばれる部分が動いている。ここは
≪日奈久断層帯(高野-白旗区間)≫
地震の規模 : M6.8程度
(日奈久断層帯全体が同時に活動する場合M7.7-8.0程度)
(日奈久断層帯全体と布田川断層帯布田川区間とが同時に活動する場合M7.8-8.2程度)
地震発生確率: 不明
平均活動間隔: 不明
最新活動時期: 約1600年前~約1200年前の間
★参考資料。分かりやすいように書き換え
と、されており、「活断層と分かっているが、活動確率は不明」の部分であった。こういう辺り、研究の不足を感じる。もちろん、億年単位の地球の活動から言って「1000年」は「誤差の範囲」なのだが、それでもおおよその間隔が目安として存在するだけでかなり違う。なお、「日本の活断層」によれば、ここは「数百万年以内に活動開始」という新しいエリアである事が示されている。
●今後の動向
貼り付けた断層図の通り、ここはY字型に大きく2つの断層帯があり、6つの区間に分けられる(と、推定されている)。そのうちの高野-白旗区間をほぼトレースする形で南北両方向に向かって余震活動のエリアが広がっている。これが「高野-白旗」で収まっている事を示すものか、両隣に広がる可能性を示すのか、残念ながら知見は無い。ただ、気象庁の余震予測は過去パターンへの当てはめで出されている。
知見がないのでそうせざるを得ないのは分かるが、そもそも「連動」の可能性も見積もられている状態で、少し安易な気もする。地質学的にというよりも、確率・統計的に。
ともあれ「震度5-6クラス」のリスクはまだある。更なる壊れ・倒れ・落下、および火事への注意を。最後に近年の観測と古文書等によるこのエリアの地震分布を示しておく。これで終わりではなく、またあなた生存している間に同じようなことが起きるリスクはあるとしておく。
●その他お住まいの皆さんへ
「自分が住んでいる地域の持つ地学・気象的リスク」なんて普段から考えたりはしない方が普通だろう。「知るのが怖い」という心理の存在も理解する。しかし、アナタとアナタの大事な人が生き残るためには何が起こるかを知り、応じた備えをしておくより他に手は無い。
クソ細かい専門書を見ろとは言わないが、「リスクの高そうな」ものは国がまとめた資料があるので紹介しておく。
ここで今回の震源なら例えば
(2)日奈久断層帯
高野-白旗区間では、M6.8 程度の地震が発生すると推定され、その際には右横ずれを主体として2m 程度のずれを生じる可能性がある。高野-白旗区間においては、平均活動間隔が明らかでないため、将来このような地震が発生する確率を求めることはできない。
(平成25年作成)
となる。(予測震度図まで存在し、大体実測と合致しているのだが、活用されたのだろうか)
名古屋人だし、ツイッターのトレンドに南海トラフやら東海地震やら出たので、この資料から名古屋近辺を引っ張り出す。
「南海トラフ」ばかり気にしてると足元から突き上げられる。ただ、
なお、本断層帯の周囲に位置する笠原断層、天白河口断層(活断層研究会編,1991;名古屋市,1999 など)及び名古屋市付近の断層帯(中田・今泉編,2002 が示した名古屋市内を南北方向に延びる断層)の各起震断層に関しては、単独では地震調査研究推進本部(1997)の基盤的調査観測対象には該当しないことから、ここでは詳細な評価の対象としないこととした。
いいのかそれで。
前も書いたが、濃尾地震(1891)三河地震(1945)福井地震(1948)の震源と断層をプロットするとこのように一直線に並び、その直線中で歴史時代に動いていないのが名古屋市近辺、なのである。
「断層がいつ動くか」ではなく「断層がある」ことを知る事と、それがいつ動いても良いように心構えと準備を。
■参考資料
・平成28年熊本地震:気象庁サイト
・「新編・日本の活断層」(高額な本なので図書館等でどうぞ)
・日本政府地震調査研究推進本部「主要活断層帯の長期評価」
・災害教訓の継承に関する専門調査会報告書「1944 東南海地震・1945 三河地震」
~4月16日午前1時25分~
M7.1/震度6強。言わんこっちゃないわ。
関東まで有感。愛知もこの通り。さて、この有感地点の分布は何かを描いているような。
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