知ってるようで知らない南海トラフ
考えられていた以上に動きがあって応じて歪みがって……小さくて見づらい。セコいからnature無料会員だでよw
「この辺」の地震が周期的な物だと言い出したのは今村明恒で、現在ガチガチに張り巡らされている「予知システム」は昭和東南海地震(1944年12月7日)の当日、彼がその発生を危惧して海岸を測量していたら、水平設置が困難なほどの地殻変動を観測した。
水準測量を担当していた越山(1976)の手記
「(午前にでた大きな往復誤差について)原因不明のまま,午後の観測に入った。ナンバー5259 から掛川に向かって(東西方向)7 点終わって8 点目にタンニングした。前方の標尺は(東西方向の路線を西から進めていて,水準儀は東方向を向く),固定点に立っているが,川本測手がセットした器械で,いつものように観測しようと(合致式)レベルを合致させようとするも,(合致式)レベルの気泡が動いて静止しない。たんぼの中の一本道で強い風が吹き抜けていた。日傘で風よけを作らせたり,器械のセットをやりなおしたりいろいろ試みたが,レベルの動きはますます大きくなるばかりであった。そのうち,大地震(東南海地震)がおき,瞬間,道路が波うってくるのがみえた。」(越山,1976;括弧内はコメント)
に基づき、これをエレクトリックで引っかけよう、それだけである(これのソースはここ)。
って今まさにんなとこで地震起きるんじゃねぇよバカヤロ。
そう、科学的知見は実は殆どない。地震学の勃興は明治で、気象庁が残してる「科学的に有意な」データも関東大地震からだが、何せ戦争末期・戦後の混乱の中で起こった地震なので、ろくなデータが無いのだ。わずかなデータと被害状況からさかのぼり推定するしかない。
で、学者が何しているって「具合よく説明できる岩盤のサイズをシミュレーションで逆算する」だ。「東南海」と「南海」の境目にデカい海山が沈み込んでる……と推定すると、「2年後」(昭和)とか「32時間後」(安政)もうまく再現するらしいが、「慶長地震」(1605年・津波だけ)はどうにもならんらしい。ただ、学者の分析も結構いい加減で、明応4年(1495年)に「津波が鎌倉大仏に達した」という記述を、1498年の明応南海トラフの誤記であろう→南海トラフで鎌倉まで津波は回り込まない、この記述自体ウソだろう。と解釈したのだ。ちなみに「明応4年」は2016年現在「関東大地震」の2個前という見方が有力だ(1495→1703→1923)。しかし1703年元禄関東地震と1707年宝永南海トラフをきちんと峻別したくせに、何でその1個前はごっちゃにするかな。
てなわけで「最前線」の南海トラフもこの有様。ただまぁ、この連中は長いこと首都であった京都・奈良で応じて記録され「大体の周期」は見えているから、向こう30年……2050年までには来るでしょ。
684年白鳳地震(日本書紀。ちなみに675年頃から西日本各地で地震が起きた旨書かれている)
887年仁和地震 (日本三代実録。1ヶ月前からの地震現象、多くの余震が記載されている)
1096年永長地震・1099年康和地震(中右記。藤原宗忠の日記。やはり前後の地震の記録が多い)
1361年正平地震(『太平記』、『和漢合運』、『南方紀伝』、『阿波志』など、前年11月からの内陸での大きな地震が幾つか記録され、余震も多かった)
1498年明応地震(『御湯殿の上の日記』、『後法興院記』、『実隆公記』、『言国卿記』および『大乗院寺社雑事記』など。中国上海でも津波の記録)
1707年宝永地震(文献多数。1685年頃より三河~安芸エリアで地震多数。1ヶ月前から名古屋で地震多発)
1854年安政東海地震・1854年安政南海地震(文献多数。「最新」の東海地震。顕著な前震として「伊賀上野地震」が知られる)
1944年東南海地震・1946年南海地震(逆にデータが無い。前震として銭州海嶺とか日向灘とか鳥取地震など)
ここで白鳳と仁和、康和と正平の間が200年空いているが、「慶長地震」を南海トラフと機序が違うとして抜くと、明応から宝永の間が200年空き、そう変でもない、と言える。逆に安政地震から昭和の間が短いが、これは「濃尾地震」(1891年)によって、内陸の歪みの持ち替えが行われ、東海側が抜かれ、逆に南海側が増幅されて地震が起きちゃった、とも言われる(普段は海から押されるだけなのに、陸からも押された)。なお、昭和の東南海・南海はそれまでの南海トラフに比べると津波が弱く、Mも小さく、素直に1854年から起算して150-200年で起きると考えておいた方が安全サイドの見方だろう。
名古屋が震源域として完全に黙り込んでいるのは、長い目で前兆と言って良く、近づけば内陸の断層からパリパリ割れ出すだろう。
東海三県伊達に割れ目だらけってわけじゃない。
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