「八王子ムラウチ電気」終焉
「閉店だってさ」父からメールが飛んできた。
「ムラウチ電気」
八王子の土着家電量販店にして「地元の大企業」。鉄道模型からHiFiオーディオまで扱うオレの楽園だった。数百の車両、数百のCD、オーディオ機器、みんなここで買った。
16号バイパスが延びた頃からだろうか、急速に周辺に店舗を増築した。「家電」「照明」「パソコン」…専門館がいくつも出来た。CD売り場も独立した屋号を持った店舗になった。そこでバブル崩壊。
CD売り場は縮減され、店舗は収縮、「ハードオフ」が入った。
が、逆風は吹きすさんだ。「ヨドバシカメラ」が八王子駅前北口に出店する。
がくんと客が減ったと記憶している。駅前で全国チェーンで10%ポイント還元。「ハードオフ」の売り場が増え、「ブックオフ」も入り、鉄道模型の扱いは終了し、HiFiオーディオの売り場が縮小した。
回転率の良い物を残す。店として当然の選択。だがそれは同時に、「どこでも買えるもの」だけが残って行くことを意味し、逆に店としての個性を奪う。「予兆」はこのときには存在したと言って良い。
2009年。ムラウチに「ジョーシン」の名が冠された。ジョーシングループの一員として再出発。ジョーシンカードを持つ身としては歓迎すると言って良かった。しばらくは安泰か。そう思った。
しかし1年後、2010年。今度は八王子駅南口駅ビルにビックカメラが出店する。
更に震災と計画停電、民主党不況…店の営業は続いたが、品揃えは減っていった。HiFiオーディオは姿を消し、売り場は縮小を続け、「ジェネリック」と呼ばれる安物家電が増えていった。鉄道模型もオーディオも無い駅から遠いムラウチに「行かねばならない理由」はないのであった。
ただ、実家から車で行けて駐車場が空いている。
メリットはそれだけ。
宜なるかな。
中学生の頃、鉄道模型売り場で修理や展示品の工作をしていたおじさんは、頭髪が真っ白になった今も家電売りまで笑顔で応対している。オレのことを覚えていて、通りがかると「いつもありがとうございます」と声を掛けてくれる。2017年となり年齢60過ぎは明らかであり、セールスのキーマンとして嘱託扱い・後進の育成、そんなところだろう。
八王子の「ならでは」が、昭和の残照が、またひとつ。
どう冷静に考えても、自分の購買意思や金銭的損得に、何らの影響も無いのだけれど。
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