中性子星の合体
中二病な響きふんぷんだがノーベル物理学賞の解説にも繋がるのでやる。長いがやるw
この世ありとあらゆる物体は「原子」で出来ている。原子は「原子核」と「電子」で出来ていて、原子核は「陽子」と「中性子」で出来ている。陽子と中性子が幾つ集まっているかでその物質が何か決まる。水素は陽子1コだけ。酸素は陽子8コと中性子8コ。
「中性子星」というのは星まるごと億兆京の中性子だけというシロモノである。大質量の星が生涯を終え、核爆発の圧力よりも重力が大きくなった時、自分で自分を支えきれずに潰れて高温高圧となり「超新星爆発」を起こす。
(超新星1987Aの残骸)
この際、元の星の質量によって、完全に潰れて「重力だけの存在」=ブラックホールになるか、そこまで行かず何か「芯」が残るか決まる。その芯が中性子の塊であるものを中性子星という。太陽ほどの質量があるが直径はわずか10キロ、1回転1秒以下という物凄いスピードで自転しており、ビーム状に電波を出すので、自転に合わせて短い周期の電波が届く。というシロモノである。遙か数千光年の彼方から時計のように正確な周期パルスが飛んでくる事から「パルサー」と呼ばれ、当初は地球外生命の証拠かもと騒がれた。
で。
星は2個3個同時に生まれることが多い。太陽のようなぼっち星の方がむしろ少数派である。2個ペアを連星。三個なら三連星と呼ぶ。例えば夜空で最も明るいシリウスは連星だし、お隣星アルファケンタウリは三連星、ふたご座のアルファ星「カストル」は何と六連星である。このため、連星の双方が中性子星に成り果てる、というパターンも当然存在し、そのうちの幾つかは超新星爆発の衝撃や、運動エネルギの放出等でバランスを崩して接近、合体する。表題「中性子星の合体」である。
それで。
太陽を代表に一般に恒星は「水素の原子核反応」により熱と光を放っている。水素の原子核同士が融合してヘリウムになるのである。水素がなくなるとヘリウム同士が反応してリチウムが、以下すいへいりーべぼくのふね…鉄までは星が生きているウチに核反応で作られる。しかし鉄は核反応を起こさないので、「熱と光を放つ」行動は出来なくなる。この結果、核爆発の圧力が重力に負けて超新星爆発に至る。
すると。
人工的な核反応が始められる前に見つかっていた元素はウランまでであるから、鉄からウランまでの各元素は「恒星の通常活動以上の高温高圧」で生成されたと考えられる。その候補が「超新星爆発」であり「中性子星の合体」である。
そして。
今回、重力波望遠鏡「LIGO」と、世界各所の電波や各種光線の望遠鏡の観測により、
・中性子星の合体
・鉄より重い元素の生成
が、確認されたのである。つまり、人類は「この世のありとあらゆるものはどうやって出来ているのか?」という謎の一つを解明したのだ。
ちなみにLIGO(Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory )
は一辺が4キロのトンネルを2本、L字型に配置し、中でレーザ光線を往復させている観測施設である。中性子星の合体のような大きな重力変動が発生すると、空間の構造にゆがみが生じ、波のように宇宙へと広がって行く。この「伝搬するゆがみ」が重力波である。これがLIGOに到達すると、空間が部分的にゆがむので、光が行って帰る時間に変化が生じ、上記L字の片方のレーザがちょっと遅れて届くことになる。これを検出している。LIGOによる重力波の検出は2016年に初めて成功し、2017年ノーベル物理学賞を受賞した。その直後、今度は中性子星の合体という現象の検出に成功した、のである。
…久々に「おお!」と感動したので短歌にしたいが難しいなおい。
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