40度の名古屋で、私はウンコをしていた
午後2時。催して自席を立つ。
古い工場なので便所は外である。水分塩分、人体由来の有象無象が製品に着くのを嫌う。
うちわにタオルを装備し、ドアを開ける。
もっ。
擬音にするとそうなるか、それはキャンプファイヤーの夜を思わせる。そばに火元があり、加熱された空気が揺らぎながら顔を覆う。ただ、暑いとか熱いという言葉で表現される高温感はない。
トイレは当然、屋根があるだけの小屋だ。風が吹くというより、その炙られた空気が通り放題。通称便所小屋。
ケツ出してしゃがむ。
ヤフーから速報メールが来た。
名古屋で午後2時に40℃。
記録である。39℃台は何度かあったが、40℃越えは初。そしてこれは、「三大都市圏」で初めて40℃を越えたことも意味する。そのタイミングでウンコしているオレ。
さておき、39℃に比して40℃が圧倒的に少ないのは、応じて上昇気流が強くなり、周囲から風が吹き込むためである。しかし今日の名古屋は違う。流れる空気自体が加熱されており、北西の風向きから考えるにフェーン現象と推察される。すなわち、上昇気流が呼び込んだのは、鈴鹿山脈を越えて加熱されて吹き降りて来る熱風。
汗をかいてないことに気付いたのはこの時である。数字ほど暑く感じないことと合わせて得られた結論は、
「これはマジやばい」
気温が体温の調節範囲を大きく越え、汗の分泌を忘れてしまっているのだろうか。
或いは、危険な熱の侵入を防ぐために汗腺毛穴を塞いでいるのか。
長居は得策ではない。それが結論。しかしウンコを途中で切り上げるほど器用ではない。
出が悪い。それは当たり前である。人体は水分を欲し、最後の吸収は大腸で行われる。畢竟、ウンコの水分は少なくなって硬くなる。
頑張って出すしかない。が、息むと応じて筋肉の運動を呼び、身体の温度が上がる。
少しくらっとした、気がした。
リミットである。残便感は…ないようだ。流してケツをしまう。生きている。手を洗うべく自動水栓にかざすとお湯が出てくる。水道管は後付けなので便所小屋の外を這う。温水になるのも宜なるかな。
熱い気体の中を泳ぐように歩き、オフィスへのドアを開く。
人間社会に帰ってきた。
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