21世紀になれたんだし、そっとしておいてやれよ
1999年7の月
恐怖の大王、天空より来らん
アングルムアの大帝を蘇生さすべく
マルスは、大義の為に統べん
占星術師、ミシェル=ノストラダムスが残した四行詩のうち「世界の滅亡」を示唆したとされる部分である。センセーショナルな内容とともに、ユリ=ゲラーによる超能力ブームも手伝ってか、オカルティストを中心にあっという間に火が付き、示唆の内容についてあれこれ詮索が行われた。「天空から来る」「マルスは軍神」より核戦争が起こるとか、アングルムアはモンゴルのことでアジアに侵略国家が出現するとか、天から降ってくるんだから天体の衝突で、1999年は「しし座流星群」の大出現が見込まれていたから、その中に巨大な隕石があるのだとか。占星術師だからマルス=火星の位置や見え方に由来する。etc…etc…。
新約聖書の同様な「この世の終わりの預言」とされる「ヨハネ黙示録」との類似性も指摘され、文字通り「世紀末ブーム」を呼んだ。負の側面として「どうせ終わるんだから」とネガティブな思想・行動に走ったり、新興宗教による集団自殺なんて現象もあった(それ自体はこの著書がきっかけではない)。プラスな方向としては世紀末や新世紀をテーマにした数々の超能力・未来科学を扱ったSF創作物が誕生した。但し、世紀末物の嚆矢であり、黙示録の終末戦争「ハルマゲドン」の語を扱った作品である平井和正・石ノ森章太郎(共に故人)の「幻魔大戦」はこの著書より6年早い1967年の作品である。
追って何も起こらず21世紀になってこうしてネタにされているのだが、その間に研究が進み、「1999」はノストラダムスの時代(西暦1500年ごろ)には遥かなる未来で、「9」の連なるいかにもこの世の終わりみたいな字面であったこと、逆に黙示録の終末預言に影響を受けていたこと、占星術における火星の持つ悪い意味…この辺を組み合わせた「この世の終わりってこんなもんじゃね?」という彼なりの解釈と判断すべしと言ったあたりに落ち着いた。ひっくり返してリアルに1900年代後半に真面目に読まれることを想定されて書かれたものではない、ということだ(実際、ノストラダムスの「予言」は当時の王家の盛衰について語ったものが大半を占める)。
まーそれを盛って紹介しただけで非難されるほどか、とは思うけどね。とりあえず21世紀に足突っ込んで20年近くたってから、89のじーさんを攻撃する必要はねーだろよ。なお、信じる人は「たまたま、何も起こらないパラレルワールドに生きているだけ」とか「ただの誤差で、ハルマゲドンはまさに近づいている」と言い続けている。
総じて「壮大な空騒ぎ」で〆なのだが、「この世の終わり」を真剣に考えると、人間自身の手で起こす事も、事象によっては人間の手では防げずそれを迎える可能性もあることを、再認識させた、という効能はあるだろう。
ちなみに。
「離れた情報を得るには時間とお金が必要」という常識が「インターネット」によってぶっ壊れた時代の境目が20世紀の終わりと書いて嘘ではあるまい。ネットのない地球はその時代確かに滅びたのである。
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