SARS-CoV-2(その2)
3.構造と「感染」の仕組み
これが分からないと薬の開発につながらない。まとめ・要約は最後。
CDC(Centers for Disease Control and Prevention:アメリカ疾病予防管理センター…もはやおなじみ)による顕微鏡写真だとか。
・1本鎖のRNAを持ったウィルス
・SARS-Covと79.5%同じ遺伝子
SARSは2003年に中国広東省から報告された「重症急性呼吸器症候群」のことで、これの姉妹種であることが同定された。「急速に悪化する肺炎」むべなるかなである。
●細胞侵入メカニズム「アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)レセプター」
まず、 ACE2というのは上気道(鼻-鼻腔-鼻咽腔-咽頭-喉頭…要は鼻の穴から気道の入り口まで)の細胞が沢山持っている。
次にウィルスは「エンベロープ」と呼ばれる要は「脂質の袋」に入っている。
(サラヤのサイトより)
この表面には「スパイクタンパク質」が存在する。スパイクは靴のそれと同じで「とがったもの」の意味。冒頭の写真でオレンジ色のつぶつぶに映っている。
さて、ACE2レセプターというのは日本語で書くとACE2受容体、となる。ACE2は「Angiotensin Converting Enzyme-2」のこと。
まず、「受容体」は外部から刺激を受けると応じて何らかの反応を起こす。ACE2は「アンジオテンシン変換酵素2」を発生させ、
・全身の動脈を収縮させる
・副腎皮質からアルドステロンを分泌
・アルドステロンはケツ理宇を増大させる
となる(専門家の皆さんへ。間は端折っています)。
で、このウィルスはスパイクタンパク質でACE2に結合(連結)する。これは上記の身体の働きを起こさせるというより、「連結器としての形」がACE2に合っているのでそこで強くくっつくというだけ。くっつくのが目的なので。従って「ウィルスの細胞内への侵入」は上記の身体の働きとは全く関係がない。
次に、細胞には外から入ってくるタンパク質を切断する働きを持つ「プロアテーゼ」という酵素がある。存在する場所によって「切断」の目的が違うが(消化補助・廃却・侵入防止=外的攻撃)、上気道細胞に存在するプロアテーゼ「TMPRSS2」は元々消化酵素であったらしい。上気道での「本来の仕事の趣旨」はウィルスの抑止(ウィルス分解)…おや?
進めよう。スパイクタンパク質がACE2に結合すると同時に、TMPRSS2が外敵を切断しに出てくる。
(引用元)
この時、TMPRSS2は、スパイクタンパク質を切断する。するとスパイクタンパク質はS1とS2という部位に分かれ、何と活動スイッチがオンになる。このウィルスは人間細胞の持つウィルス切り捨ての働きを逆に利用しているわけだ。
この先の動きを細かく書くのは大変なので端折るが、スイッチが入ったS1S2は次々形を変え「ペプチド」を作り、細胞膜を切り、「エンドソーム」と呼ばれる、「細胞が外部からたんぱく質を取り込む機構」を働かせ、ウィルスを細胞内に取り込ませる。結果、ウィルスは自らの遺伝子(コロナの場合RNA)を人体細胞の核に送り込んでコピーさせることに成功する。このあたり、分子レベルの「変形ロボット」と表現した方が早いかもしれない。
●まとめ
①コロナウィルスは喉にある細胞が持つ「ACE2受容体」に結合する。
②人体が持つ防衛システム「TMPRSS2」にコロナウィルス表面の「スパイク細胞」を切断させる。
③スパイク細胞は切断されたことで本来の機能を発揮しはじめ、次々ロボットのように変形しながら細胞膜を切り、外部分子取り込み機構を乗っ取って動かし、ウィルス自身を人体細胞に取り込ませる。
これより、人類が目指すべき「薬」が持つべき機能は
・受容体結合阻止
・TMPRSS2の不活性化(活動を自粛させる)
・ウィルスの増殖阻止(RNAコピーを妨害)
となる。どこまで進んでいるのだろうか。また、巷間「効く・効いている」とされる薬の作用と整合はとれるのだろうか。
(つづく)
« SARS-CoV-2(その1) | トップページ | SARS-CoV-2(その3) »
コメント