ブラックホールに穴が無い(かも知れない)
●冒頭の能書き
(ネタ元)
太陽などの恒星は、その大質量が有する重力で縮んで行く力と、縮んで生まれた高温高圧で生じる核反応の爆発圧力が釣り合い、ある大きさで光っている。核反応が進むと中心に鉄が出来る。鉄は核反応をしないので縮む一方となり、一気にぐしゃっと潰れる。その際の高温高圧で大爆発(超新星爆発)を起こして極めて明るく輝くとともに、中心は永遠に潰れ続ける。この結果「大きさはゼロだが質量は無限大」の何かに成り果てる。これが「ブラックホール」である。ちなみにこの「何か」は、アインシュタインの一般相対性理論で提示された方程式を解いたら出てきた解の一つで。
「大きさゼロで質量無限大」
「ちょwおまwwんなもんあるわけねーべ。あったら光も吸収されて何も見えない真っ黒な穴だわな」
ってことでブラックホールと呼ばれるようになった。で、
「げ、マジであるじゃん」
となって、データから↑のように画像化に成功したのが去年の話。そこへ。
●理研の発表
(ネタ元)
・ブラックホールには「そこから先へ入ると光も出られない境界線」(事象の地平面・イベントホライズン)はありまへん
・極限まで高密度化された「物体」です
・将来馬鹿でかい記憶装置に使えるかも知れない
=ブラックホールは穴じゃない
「革命的理論」である。平易に解説するのは面倒だが要約を試みると以下の通り。地球重力を脱出するには秒速7.8km以上の速度が必要である(第1宇宙速度)。ブラックホールではこれが光の速さを超える領域が現れる。その境界線が上記「事象の地平面」である。一般にこの大きさ(シュバルツシルト半径←人名)をブラックホールのサイズとしている。
一方、先に亡くなったホーキング博士は「ブラックホールの近傍では真空から光の粒子が生成され、応じてブラックホールの質量は次第に減って行く」すなわち「やがてブラックホールは蒸発する」という理論を発表した(ホーキング輻射)。
理研の発表は「重力に引かれて行く途中でその重力源がホーキング輻射起こして小さくなるやん。せやから事象の地平面も一緒に小さくなるから上から落ちてくる粒子は事象の地平面に近づけへん」…というのがミルフィーユみたいに重なっているというもの。冒頭の能書きで縮む流れと核反応がバランスしているのが星と書いたが、同様に「落ちようとするけど蒸発で小さくなるから追いつけない」がバランスした状態が「ブラックホール状態」だというわけ。
ブラックホールの中心は長く「特異点」と呼ばれ、物理法則の成り立たない(=科学的に解明できない)場所とされていたが、今回の発表は特異点は無くても良いことを示唆する。ただ、特異点のある方程式の解を否定するものではないほか、ブラックホールはビッグバン直後に起きた爆発的な多重宇宙創成(インフレーション)で時空のゆがみの集まった場所として多数(ワームホールの片側として)生成されたとされており、それはそれでアリなのか、など、「謎は更に深まった」と言わざるを得ないのが今回の発表であろう。
ちなみにこれでワリを食ったのが、ブラックホールの事象の地平面ギリギリがーとか、遠心力でぶっ飛ばしてもらって超高速航行とか、ドーナツ状になった特異点のドーナツの中に突っ込んで行くとか、そこそこ考証働かせたSF作品であろう。逆に「そういう生命体」という厨二病なシロモノが出てくる余地を与える。
ニヤニヤ面白く展開を見たい。
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