【ハイレゾ音源再生】STAX SR-L500MK2 #ハイレゾ @STAX1938
●冒頭の能書き「STAX」って何だ?
STAX:スタックスは埼玉県にある音響機器メーカである。SPレコード原盤制作やコンデンサ型マイクの製造を経て技術を確立し、1960年より今回取り上げる「コンデンサ型スピーカ」応用製品の発売を始める。一時期はDAコンバータなどにも手を広げたが、現在はほぼコンデンサ型の「イヤースピーカ」とその「ドライバ」(アンプ)の専業になっている。
●コンデンサ型発音体の原理
一般にスピーカと呼ばれる「ダイナミックスピーカ」は、コイルに音楽信号を流し、コイルの中心に突っ込んである磁石を動かして音楽信号を振動に変換する。磁石の先に例の丸い紙が貼り付けてあって音波として放出する。
一方コンデンサ型は、薄い膜を鉄板で挟み、膜に高い電圧(スタックスのシステムの場合580V)を加えておき、鉄板に音楽信号を与えると、静電気でホコリや髪の毛が吸い付けられるのと同じ力で薄い膜が動く。で、音楽信号が音波に変換される。なお、この高い電圧を要するために専用の駆動装置(ドライバ=アンプ)を要する。
すなわち、ダイナミックスピーカは電気→磁気→磁気→紙の振動とエネルギが変換されるのに対して、コンデンサ型は電気→膜の振動と変換が少ない。以下比較を省略するが要はシンプルでロスが少なく、反応が早いのである。ただ、膜の動きが微小なので大きな音が作りづらいことから、STAXではヘッドホンの形状「イヤースピーカ」として販売している。
●出会い
1980~90年代オーディオブームの頃、電波新聞社が「オーディオビデオ」という雑誌を出していて、その中で「ヘッドホン」を特集した。ここで「STAXは別次元」と書かれていて興味を持ったのが始まりである。早速八王子「ムラウチ電気」(通販のみ現存)に聞きに行き、衝撃を受けた。
「何じゃこの透明な音は」
原理で書いた通りロスが少なく反応が早いから、超高音まで歪みや遅れなくスッキリ再生される。今思えば現在のハイレゾ野郎な自分の原点は、この時の「透明な高音」であろう。当時1日中音楽聴いていたが、深夜にスピーカ再生は気が引ける。導入する大義面分と用途は揃った。
●リファレンスとして
Lambda Nova BASIC SYSTEM(ラムダ・ノバ・ベーシック・システム)
(ハイファイ堂さんのサイトより。売約済み)
1994年、STAXが発売した最廉価なドライバと発音体のセット。当時4万3千円なり。イヤホン・ヘッドホンは、フィギュアスケート羽生のそれが40万とか、今でこそ「高級趣味商品」として開拓された感があるが、当時はヘッドホンに1万円出すだけでもタワケ扱いされていた時代だ。なぜならオーディオは部屋にスピーカを屹立させて聞くもので、ヘッドホンは「代用品」というステータスだったからだ。
さておき、就職3年目のボクは応じて収入源があり、同期がみんなクルマを買う中、最初にアキュフェーズのCDプレーヤを買って「高音質信号源」を確保済みであり、STAXのシステムは「高音質出力装置」として「もう買うしか無い」以外の何物でも無かった。
アキュフェーズ×STAX。
俊敏で透明でストレートで制限なし。全身が熱くなりそのくせ鳥肌が立ったのを覚えている。頭の中で雷が落ちたような音がし、堆積していたサビが剥がれ落ちて鋼鉄が輝きを取り戻すような感覚があった。「理想の再生」そのものであった。声も出せなかったのを覚えている。グラモフォンが当時最新技術で円盤にしたヴィヴァルディ「四季」とか弦楽、ピアノ曲、女性ボーカル「これが本当の音か」と聞きまくった。
●で「SR-L500MK2」
長くなるので端折るが、引き続き「スタックスのシステム」は音質的リファレンスとして君臨している。
イヤースピーカー:ベーシックシステム→SR404(2004~)→SR-L500MK2(2020~)
ドライバー:ベーシックシステム→SR-323S(2014~)→接地線追加(2020)
SR404をお役御免にしたのは、聞いてると「ピー」とか「チー」とかノイズが入るようになったから。原理からそういう信号が発音体に重畳されているのであり、それは要らぬ電流経路が出来たか、入り込んできているかである。「出来た」原因として発音体がコンデンサとして劣化し、ちょっと漏れている(580Vに対する絶縁が劣化している=感電危険)が考えられ、「入り込む」原因としてドライバ装置が「真の0V電位」(アース)を見失っている可能性がある。そこで発音体を更新し、ドライバ装置のアース端子をコンセントアース線と接続することを考えたのである。これで再生装置はデノンDCD-SX11→アクロリンクのRCAケーブル→STAXシステム。
「507MK2」自体のレビューとしては遅いし、ドライバがメーカ推奨と異なると思うが、まぁ書いてみよう。
1.千葉史絵/rougequeue(DSD11.MHz)
STAX同士なので大きな違いは無いはずなのだが目ん玉ひん剥いた。「あれ?こんな情報入ってたっけ」粒立ちとか陰影とかディテールを追いかけるのが楽しい。ピアノであれシンバルであれ、楽器の動きが目に見えるよう。やはり404徐々に劣化していたのであろう。ちなみにピーピー音は解消された。
2.Keiko/Ray ほか(48/24)
ヴォーカルユニット「Kalafina」活動停止してのソロ活動。「けこさま」シングルである。その歌いこなす能力のステキさは折り紙付き。
が。
歪むしサ行刺さるし音質的には残念の一言。勿体ないことこの上なし。なお変な話だが、404では刺さらないので、「ぐしゃぐしゃになった波形」を追従し切れていない、ということであろう。
3.H-el-icel//Amanhecer ほか(CD)
こちらは「Hikaru」さん。「ヘリカル」と読む。女性ボーカル聞いてて楽しいのはそのクリアな歌声どこまでクリアにしてくれるか、応じて耳そばで実態感持って聞こえるか、なのだが、まぁご本人彷彿させる再生音。ただCDゆえの帯域制限感はあり、応じた「オーディオ通してます」な音となる。
4.Wakana/時を越える夜に ほか(96/24)
更にWakanaさん。しかし3人でフォーマットバラバラとか。
音質的に安心できるのはレートが最も高いこともあるがこちら。新鮮なままパッケージされた印象で息づかいまで聞こえてゾクゾクする(50歳のおっさんの感想です)。
5.西山まりえ/作者不詳(ロンドン写本より): サルタレッロ / ゴシックハープ[15世紀メムリンク・モデル](192/24)
ハイレゾ系再生装置のリファレンスはこの曲。ゴシックハープを弾く「ピン」という音がどこまで俊敏さを備えて再生出来るか。
楽勝である。大きなストロークが出せないので「重低音」は概して不得手だが、逆に高音方向はどこまでも出てくる。カテドラルに長い長いディレイを伴って響き渡るその空間が頭の中に複製される。天国の音そのものである。
●総評
404に比して少しシルキーだが、出てくる音のディテールは遙かに濃密で、トランジェントを追いかける楽しみがある。駆動装置と発音体で15万円というセットになるが、同じ音を普通のスピーカーで出そうと思うと100万円でもムリ。ただ、ヘッドホンにカネ掛けようというならダイナミック型よりこっちだろう。ハイレゾに代表される「透明無垢・解像度指向」なら文句なくイチオシ。女性ボーカル・声優歌唱が好きというなら「一線を踏み越える」価値があるとしておく。
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