唯々諾々だったインダクタンス
理科の実験で「電磁石」(コイル)を作った経験をお持ちの方は多いと思う。釘3本程度にエナメル線を「1000回」とか巻いたと思う。で、強い磁力を得ようと電池大量に繋いでスイッチオンで感電までがお約束。
さておき。
半導体が加工技術の微細化によって、小さな面積で大規模な回路を作り込むことが可能になってきているのはご存じの通り。でも電気製品は半導体だけじゃ動かない。コイル、コンデンサ、抵抗を適宜接続して初めて機能を持つことが出来る。半導体は基本的にスイッチで、自分で電流をオンオフするが、コイル、コンデンサ、抵抗は、その半導体で制御された電流が流れ込むことで機能を発揮する。このため「自分で動く」半導体を「能動素子」。電流待ってるコイルコンデンサ抵抗を「受動素子」とくくる。
で。
抵抗の特性はそのまま「抵抗値」(レジスタンス)という数値で示すが、コイルの特性は「インダクタンス」という数値で示す。
数式イヤ?趣旨はそこじゃないっす。
L→インダクタンス
μ→芯の素材により決まる
N→電線巻けば巻くほどインダクタンスがデカい
S→芯の面積がでかければでかいほどインダクタンスがデカい
l→でもコイル全体の長さは短いに越したことは無い
つまり芯の材料と欲しいインダクタンスでコイルのサイズが決まってしまうのだ。そして現状、半導体の小型化に比してコイルの芯材のそれは遅々として進んでいない。
これはモータの電機子コイルである。薄板が積み重なっているのが見えると思うが、これは芯材の代表格「珪素鋼板」と呼ばれるモノで、工業化されたのは実に1903年。黒板等にくっついてる磁石は黒いが、あれは「フェライト」という材料で日本の発明。それでも1930年である。つまりその頃から「芯材」は基本的に変わっていないのだ。この結果、半導体と鼻くそみたいな超小型抵抗・コンデンサがびっしり並ぶところに、指先サイズのコイルがところどころべったり貼り付いたりそびえ立ったりというのが昨今の電子基板の姿になっている。まことアンバランスでエレガントさに欠ける。
そこへ。
こんなネタが飛び込んできた。要約すると。
・スキルミオンと呼ぶ3次元の渦巻き構造がおもろい電磁相互作用を発揮する
・コイツで得られるインダクタンスは断面積に反比例する(小さくするほどインダクタンスがデカい)
・インダクタンス機能を持つのは電子の渦巻き状の振る舞いだけで、それを生じさせる空間は別に立方体で構わない
=必要なインダクタンスをごく小さい立方体で確保できる
(引用元は同一)
20ケルビンと言うから液体ヘリウムで冷やす必要はあるけれどもこのサイズでインダクタンスは「数百ナノヘンリー」得られるという。プリント基板用のコイルで100ナノヘンリー言うと0.6×0.3mm程度であるから、
(TDK)
「百分の一」になる。
超伝導ばりの低温が必要なのは電子は温度だけで運動するからであろうが、まぁ何らか動けないよう拘束することは出来よう。逆に局所冷却の技術が進むことも考えられる(電子回路は集積すると熱密度が上がるので、まるごと冷やすのは無駄ではない)。
「原理だけ」であるがゆえに、「物量」に頼るしかなく、応じて素材・組み立てメーカの言いなりの値段にならざるを得なかったコイルが、ついに素材依存から離陸する。それはコイルのみならず、応用部材であるトランスやモータ、発電機にも波及する。
我々は飛躍の瞬間を目にするかも知れない。
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