ロストテクノロジーの予兆
ドライブシャフト(ちっちゃw)と聞いて、特にクルマがお好きな方は、その重要性と難しさをご承知のことと思われる。原動機・変速機から離れた場所にある駆動軸へ回転動力を伝達する「棒」であるが、強度や耐久性は当然のこと、ねじり、まげ、たわみといった力学特性、直線度、真円度といった加工精度、これらを確保するための材料と工程……「新しく設計したくない」部品の筆頭候補ではないのか。
大出力を扱う鉄道車両において、このドライブシャフトは、内燃機関を採用したときから永遠の課題であると言って良い。図示した原動機は名をDML61Sといい、V12気筒61000ccターボチャージャ付きで1100ps/480kg-m(1500rpm)を発生するディーゼルエンジンである。84トンの機関車に2台搭載して4軸を駆動する。
無論変速機(液体式3段)を噛ますのであるが、エンジン-変速機-台車-台車内と実に3カ所×2セット6本の「ドライブシャフト」を有する。
ドライブシャフトを知る人は絶望するであろう。実際、別の機関車ではあるが、外れて線路にブッ刺さり、棒高跳びよろしく空中へ舞い上がった事故も起きている。
そしてこのシステムを備えた機関車は間もなく名古屋の地で終焉を迎える。
後継は。
サクッと電気である。すなわち、エンジンと発電機を直結して電気を作り、モータを動かす。
実は上記「ドライブシャフト3本」は、その時代の技術では電気方式とすることに困難があったから選ばれた。モータを制御して、モータが必要とする電力をエンジンで与える。「制御の対象」が2セットあったのである。しかもモータ自体もサイズの割にパワーは得られなかった(というか、スペースの関係で電車用の小型のものしか載せられなかった)。
比して現代はエンジン制御、モータ制御ともコンピュータが行い、通信で連携制御を行うとともに、トルクと回転数を自在に制御できるVVVFインバータ+交流電動機によって、大出力のモータをコンパクトな電気回路で動かすことができる。しかも電気機器は電気機関車用として実績があるものを持ってくれば良い。ドライブシャフトの負っていた責務は「電線3本」で終わってしまう。
ここにドライブシャフトで駆動する大義は失われたのである。
鉄道は最大効率で動かさないと無意味であるから、技術伝承だけを目的に機械伝達の重くてデカくて面倒くさい機関車を有する意義はない。蒸気機関車は動く機械と煙と音と匂いがあり「五感」全て存在を感じるとともに、全てが人の手で動かされるという「人次第」な部分があり、全ての(鉄ヲタ以外の)人をも引きつける力がある。鉄道の始まりという部分もあろう。でも、鉄道において内燃機関はそこまでじゃない。
HOT7000の355PSターボチャージャー2発の咆哮を聞け pic.twitter.com/cQfvZi4gV7
— すのぴ@キュアカイシャイン (@sunop2000) June 15, 2018
このターボチャージされた咆哮を聞いて身震いするのは原動機ヲタであろう。しかしこのとき車体は震え、応じて騒音が聞こえるのであり、チト臭いもする。それが電気だと一掃される。
ドライブシャフトに感謝と栄光の誉れあれ。
(ソース・日立評論とか東芝レビューとか日本機械学会誌)
« プリキュア見たし短歌出したし | トップページ | 安い・簡単・便利・喪失 »
コメント