杞憂
夕暮れのATM。
上下とも黒い着衣にマスクの男が機器を操作する。
『ピコーン!記帳数が多すぎます。窓口までお申し出下さい』
不審そうな衆目を背に男はコソコソATMを出てくる。
オレだ。
「クレカの決済終わってないじゃん」
「残高いくらあるんだ?」
「ATMで書かせれば判るんじゃない?」
で、起こった出来事がこれである。やばい。既に噂の「死後ロック」やられたか。
「駅前でやってみよう。念のため入金してみるよ」
がががーぴぴっぴー新しい通帳をお作りしています。
なんぞ?普通に出来るじゃんか。あ、こんだけありゃ決済落とせる。
「電気ガス水道……電話か」
実家固定電話は光回線である。だが、父親がセールスの口車に乗ってNTTとauを行ったり来たり。
こういう場合、116番に掛けると入っている回線を教えてくれる。auか。父は母より先に携帯デビューしたせいか、その時点でauにしていたオレと家族割りにしている。ただし現在、世帯をまたいだ同様の割引システムはない。その流れで固定電話もauだろう。
例によって相談窓口電話は大混雑。スピーカーホン状態にして放置20分。
「お電話お待たせいたしました」
「かくかくしかじか」
「そのお名前では契約されていませんが」
「(・・)?」
「息子様のお名前もう一度お願いできますか?」
「オレ様ですが」
「オレ様の名前で登録されてます」
あん?
蘇るおぼろげな記憶。実家にネットを引っ張ったのはダイヤルアップピーゴロピーの時代である。親が管理できるわけもなく、親のすねをかじる意味もなく、プロバイダ契約は自分で結んだ。電話:親。ネット:自分。
父親がau携帯持ちになり、光回線を引き込んでauで統一。電話:親。ネット:自分。
プロバイダがauとコラボ。料金は全部プロバイダ経由。電話:自分。ネット:自分。
「どうされます?」
「何もしなくていいです。そのまま維持で」
ヤレヤレ。
「株の口座が見つかった」
ナヌ!?
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