直感的に理解できること ソニーポータブルラジオICF-P27
「ラジオを買って欲しいんだが」
義父のラジオ。ソニーICF-P21。2009年。義父はこいつでNHKの「ラジオ深夜便」を聞きながら寝落ちするのが日課だ。「女性の声」が聞き取りづらく、テレビの女性キャスターなんか「何言っとるだ」状態なのだが、ラジオは聞き取りやすいという。
「壊れました?」
「そろそろ新しくしようかなぁと」
回路も構造もシンプルだから壊れにくい方だが、外見上はテープ貼り付けてあるの見えると思うが、電池ボックスのフタがガバガバになってるくらい。音も出るが。
「スイッチ切れたか分からんだわ」
こいつのスイッチはボリューム兼オン・オフダイヤル、周波数選択ダイヤル、AM/FM切り替えスイッチ、以上、という操作性。ボリュームを絞り、更にもう少し回すとカチッとクリック音がしてオフになる。
カチ。あれ?
「指先の摩擦でクリックのノッチを越えて回しきる」というのがわかりにくいのであろうか。
10年以上経過してるしまぁええやろ。
ICF-P27。21年11月発売のチャキチャキの新製品。
(AVwatch)
操作性の点で21との相違はボリュームダイヤルはボリュームのみの単機能になり、オンオフスイッチはAM/FM切り替えスライドスイッチと一体に変わったこと。OFF/AM/FMになる。これ実は大きな変更で、要するに「ノッチを越える」という特有かつ大きな力を擁する操作を排除している。および、「オフになった」ことがスライドスイッチの位置で一目で分かる。
ちなみに回路は21の「バリアブルコンデンサ(という電気部品)をダイヤルつまみで直接動かす」方式から、電子回路式に変わった。同調も取りやすいし、温度で特性が変わったりしない。ちなみにバリコン式の場合、その部品構造によってダイヤルの動く範囲が決まってしまい、応じて「ダイヤルをどの程度動かすと周波数がどの程度変わるか」は、この構造で決まってしまったが、電子式ならダイヤルは指令を与えるだけであるから、ダイヤルの角度に対する周波数の変化量はどうにでもできる。受信性能の向上はもちろん、操作性向上への寄与も大きい。ちなみにだいたい、AM放送で周波数を少しずつ動かして行くと、無音→ザラザラ→声が聞こえてくるがサ行がささる→良く聞こえる→声が聞こえてくるがサ行がささる→ザラザラ→無音……という変化をたどるが、電子式は大体、9kHzずつステップ状に変化するので、聞こえない→聞こえる→聞こえない……といった変化になる。感度は高まり(S/N比が向上し)、混信は減る。
外観上は「周波数の書かれた数字の間を赤い針が動く」という操作性への変化はないので、問題となることはないだろう。「変わらず」「よりよい」珍しくソニーに対して褒めてやると書くことができる。
デジタルチューナというとボタン操作と数値表示が主体なのだが、実はダイヤル式だと「一旦回しきってそこから3番目が○○局」という使い方ができる。もっと言うと手探りでも大丈夫。この手のキカイの大いなるレゾンデートル。古いとか言っちゃダメな領域。いいね。
見れば分かる。触れば分かる。直感的に理解できる。それは世代を超えて共通な「一元的品質」であり、利便性を越えて失われてはならないもの。
「ええタイミングで買えたわ」
「ですね~」
ソニーが電気自動車発売を公表した日に。
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