100年間走ったワニ
スイスはご承知の通りアルプスに抱かれた山岳国で、鉄道の普及に際して登坂とトンネルを苦手とする「蒸気機関車」で運用するのは深刻な困難を伴った。
一方でダムを使った水力発電は豊富に見込めることから、早い段階で機関車の電気動力化、すなわち電気機関車の開発が進められた。そして1918年、ゴッタルド峠越え用強力機関車として開発されたのが本形式である。正式にはCe6/8(8軸中6軸を動輪とする最高速度65km/h以下の電気機関車)である。
交流の電気機関車で、変圧器を使って電圧を下げてモータを回す。その変圧器は帯分数「16下2/3ヘルツ」(50Hzの1/3)に対応するため非常に大きく、真ん中の運転室の下に納められている。モータはデカいのを前後に1個ずつ写真の位置に納め、歯車ではなく蒸気機関車と同様の連結棒で車輪を回す。茶色い初期車の方は回転バランス調整用のカウンターウェイト「↓部」を有する。
このメカキチ大歓喜のダイナミックで複雑繊細な動きと姿形から、付いたあだ名がクロコダイル。すなわちワニ。世界中の鉄ヲタの人気者で、100年を経た今もルツェルンの博物館に所属し、時々特別運転をしている。そう、ガチのマジで100年越えて走ってるわけ。
ただこういう、手の込んだ大がかりなキカイ、ロストテクノロジになりつつある。
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