極東ニ於ケル西欧ノ技術
ドイツ車に手を出してボンネットを開けてニヤニヤ眺め、「一見、応力の掛からなそうな部位」のパーツや造作が不安になるほど華奢で雑で驚いた経験をお持ちの方は多いだろう。割ピンで抜け止めとかね。あ、定期的にディーラーにお金渡して見てもらってる手合いは除く。でもって概ね
・キシキシカタカタした微小な音や振動が常時存在する
・本質とは関係ないが地味にいらつく小さな故障が多い
・同じところが何度も壊れる
「日本の環境に合ってないから」よくある説明。G7で「氷点下3ヶ月・1ヶ月粉塵が大陸から飛散し・1ヶ月雨が降り・35度超3ヶ月・南方から渦巻きが来て塩水をぶっかけて行く(台風)」これが1年サイクルで「全部同時に」訪れる国はないのである。極端のくりかえしは弱点から順次壊す。交換修理しても「弱点」は変わってないのでまた壊れる。こうなる。
オレンジ色のキカンシャは「DD54」というディーゼル機関車である。1964年。当時「DD51」という1000馬力のエンジンを2台積んだ機関車が既にあって、比してこの機関車は1820馬力を1台搭載する。総出力ではDD51を下回るが、エンジンは1台なのでパワーウェイトレシオは51を上回る……そんな目論見。ドイツの技術供与で三菱重工が製造、納入した。のだが。
エンジン出力を車輪に伝える回転軸「プロペラシャフト」が列車走行中にすっぽ抜けて線路に刺さり、棒高跳びの原理で機関車が空中に跳ね上がったのである。
プロペラシャフト自体は「両端に変速機や車輪歯車に接続する部分を備えた棒」である。ただ、ゴム紐を想像してもらえば良いが、大きな力が加わるとビヨンビヨン動くし、ねじるとこれまたビヨンビヨン動く。一方で、この機構を備えたドイツ本国の機関車に比べると。
・変速機と車輪との距離が異なる。日本が小型
・車輪の幅(線路幅)が異なる。日本が狭い
こうなっている。「ビヨンビヨン」をもたらす条件が異なっているのである。
「デリケートにチューンするなよ」とは紅の豚・ポルコの台詞であるが、何のことは無い「ライン川のほとりを高速でぶっ飛ばす」ことにチューンされたのがドイツの機関車なのである。エンジンは所定の性能を得られる設計値が得られれば、後は軽量化してナンボであるから、「エンジンの性能に影響しない」部位はガンガン削る。ただし、「全く同じ部品を全く同じように組み立て」れば、同じ性能は得られる。要はそういう思想(そこがドイツの技術)なのだ。そりゃ当然、極東に「仕組み」だけ持ってきても同じ性能は得られないどころか、異なった条件ならではの様々な問題に直面して当たり前、こうなる。
実は同じことはスイスにも当てはまる。電気機関車の黎明期、スイスは先進で、応じてナンボか輸入して試した。ところが「指示通りに整備すると整備前より性能が劣化した」という体たらくで、「スイスの技術」を取り込んだ機関車はついぞ日本の線路に定着しなかった。
(Wiki)
100年を経てローデシュワルツとかABBとかそういう国々の機械や装置なんぼか工場に転がっているが、
「壊れてるよ」
「また?」
「直るの来月」
環境規制とかいんだすとりー4.0とか、牛耳られると何が起こるかって話よ。
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