#ハイレゾ USBケーブルで音質は変わるか?(5・終)
●音質劣化の因子
「音質が悪い」というのは「元信号と異なる」ということであるから、
・必要な信号が不足している
・余計な信号が付加されている
どちらかか、両方であろう。ひずみやノイズが加わっているのは後者で、電源電圧低下やノイズでマスクされている場合は前者だ。ところで、
・USBはデータ伝送の規格だから、USBケーブルを変えた程度で音質は変わらない
・USBで異常が起きてデータ伝送に失敗すれば、音質が変わる前にブツッと切れる
この「定説」と、巷間言われる「音質差はある」の差はどこにあるのか、の答えであるが、一つ言えるのは、「USBでデータ伝送に異常が起きても、インターリーブその他の工夫で異常を検出し、補正する」という動作が入ることと、最終兵器として「どうしても復旧できなかったデータは前後のデータから類推する」という処理が入っている、ということだ。それでもお手上げの場合に初めて「ブツッと切れる」ことになる。
●USB接続が音質に影響を与えそうなこと
①伝送するデータそのものへの影響
要するに音楽データそのものが損傷する。損傷レベルが訂正符号等で復旧不可能な場合「補完・類推」で「作られる」ことになる。それはCIRCで規格された内伸であったり、前と後ろを足して2で割るなども再生機によっては行っているかも知れない。これらの場合、失われたデータに何らか俊敏な変化をしたデータ(=高周波成分)が含まれていれば、それは失われる。こうした補完が多数発生すれば、周波数の高い成分から情報が失われて行き、ニュアンスや、高周波成分が支配する「音像定位感」が不足する、こうなる。
②USBが動作することで周囲に及ぶ影響
要するに周波数の高い電気信号を流すことで、ケーブルから電磁波を放出し、空間的に距離がある周囲のオーディオ機器にノイズとして侵入する可能性が考えられる。そもそも、「パソコン」というギガヘルツで動き、様々な電線の繋がった機器から生えてる電気のヒモであるから、電気的に直接繋がっていなくても、毒電波放射源が近くまで来ていると考えた方がむしろ自然。この場合、デジタル系の動作の他に、アナログ音楽信号の段にまで毒電波として入り込み、繊細な動作を要求されるアナログ系に悪さをしている可能性はある。
③その他
誤り訂正やデータ補完は応じて電力を食うので、再生機の電源への負担が増加する。アナログには平滑で俊敏に反応する電源が必要だが、デジタル処理にリソース食われると不安定になったり遅れたりする。それらはアナログ波形の変化(反応や振幅の遅延)として顕在化する。
●要するに?
①USB接続で推定される音質劣化の因子は、楽曲データそのものの異常と、USB由来のノイズ・電磁波による受信側オーディオ機器の不完全(≒完璧でない)動作の大きく2つである。これらによって音質が変わる可能性はある。
②「音楽専用サーバ」はコンピュータではあるが、一般のパソコンと違い、音楽再生以外の機能は有していないので、ノイズは少なくUSB伝送リソースにも余裕があり、①のいずれも可能性を減らすことが出来る
③USBケーブルは短いに越したことはない
④USBケーブルに対する「シールド」は、電気回路技術の基本……データ線をツイストペアにし、グラウンド電位で全体を覆う……程度で充分である、というか、これに則っていること
⑤USBにおける「データ線と電源線を分ける」設計はパソコンに依存しない安定でノイズの少ない電源を与えるため、安定したデータ伝送・ノイス放射抑制に寄与すると考えられる。ただし、電源は専用の別電源とし、送り出しのパソコンは、USB駆動リソース確保のため、音楽再生以外の作業は極力やらせないようにすることで最大限の効果を狙うべきである
⑥再生機におけるノイズ対策も重要である。USBを絶縁して受信する。デジタル系をシールドする。アナログの電源はトランスの2次側から分けて独立して安定化させる……等々、考慮された再生機を選ぶ
●まとめ
1.送信側、再生側とも応じた対策がしてあって、USBが短ければ、USB自体が音質に与える影響はほぼない
2.ひっくり返して、USB伝送距離が長いなら、シールドや電源・データ分離構造のケーブルを使うことで音質向上の余地が出てくる
こんなところか。まず、ハード固めて微細な変化をケーブルで行う……オーディオの良くあるパターンに落ち着いたと思うがいかがか。
パソコンに音楽取り込んでUSBで聞こうなんて手合いは、ほぼほぼハイレゾ指向であろうから、再生機はまぁ、それなりのグレードと推定している。しかしパソコンのUSBはオーディオなんか考えちゃいないので、「とりあえず動けばいい」程度のものもあるかもしれない。
だったらまぁ、ケーブルよりはサーバをかねて「Soundgenic」あたり置いた方が動作も安定して幸せになれる。「USBはオーディオ信号送信専用に使う勢い」と「USBの距離は極力短く」、まずはここに注力すべきだろう。線の材質=直流抵抗なんて相当長い距離じゃないと影響は出てこない。むしろ受信端のインピーダンスマッチング(差動の場合90Ω)ちゃんと取れているか気にした方がいい。
本シリーズ記事は以上。理屈で動いてるキカイなんだからある程度理屈を理解しましょう。「理屈はさておき最後は耳だ」そうかも知れんが、試してみてたいしたことなかったらコスパ悪いどころの騒ぎじゃないすよ。
(おまけ)
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