自動機械の罠
金属加工をドコに委託するかの話。
「マシセン加工ですね」
「ならいいか」
即答して、それがとても「怖い」ことに気づいて我ながらゾッとした。
マシセン=マシニングセンタ(machining center)
削りの磨きの穴あけの。自分で工具ひょいひょい交換しながら加工して行く装置。コンピュータ制御なので応じた仕上がりである。しかし。
本来こういうのは図面と材料から手段を選び、順番を考え、工具を選定し、そして正しく設置し、確実に固定し……とやって行くもの。
機械の操作に当たっては、機械がそういう過程を経ていることをメーカ自身の講座に参加するなどして学習し、「機械に対する指示」を人が行う。ただそう、調整やら最適化やらはコンピュータが自分でやっちゃう。
ええんかそれ。
カーナビというシステムは地図が読める人がやっていた作業を液晶画面で肩代わりする。しかし、最初からスマホや車載のナビがある環境で育った人には、「行き先を打ち込んで矢印や合成音声の指示通り進む道具」に成り果てている場合がある。そう、機械加工が「コンピュータに指示すればできあがるもの」に成り果てる可能性は無いか。
金床にブロックを噛みつかせてヤスリでゴリゴリ……機械加工の技術者を目指す人が新人研修を受けると大体その辺から始まる。失敗してすっとこどっこいの加工を繰り返す中から、水平直角を取ること、ゼロ点出しや突き当て固定の重要性などを「体得」して行く。現状、殆どの加工屋さんはまだこの仕組みでたたき込みをすると思うが。実際の現場は自動機がゴリゴリやるばかりで、たたき込みが実際必要なスキルかというと。
で、気づいた「怖い」は、機械の動きが妥当で理に叶ったものかどうか、それは身体で覚えた知識に基づいて判断していることが多いので、単なる加工プログラマが出現したとき、機械は妥当で効率よい動きになるだろうか。
結果の上澄みだけ啜って暮らしてると、根っこの腐った大木は倒れるのみ。
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