痕ぞ悲しき
これね。現場「通勤電車の車窓」なのよ。何が起こったのかと寄ってきたわ。
当初未成年の運転、とだけ伝わっていたが。
・4人乗りの車に5人
・未成年者が飲酒運転
・徹夜で飲んで雨の夜明け前にイキリ走行
・当初警察には替え玉出頭
……まぁ、三倍満とか数え役満とか揶揄される「起きて然るべき」事故と言えばそれまでだが、
まず、事故の現場と概況である。矢印のように県道15号「瀬戸街道」を走行、交差点を横断して橋を渡る方向へ進行しようとし、「左カーブ上り坂」のてっぺん付近で後部がスリップ、車両が横向いた状態で反対側の欄干に側面から衝突した。この事故から得られる教訓はないだろうか。
現場、交差点上にスリップ痕等は確認できない。
橋の側から。この道は、画面奥手、プロ野球ドラゴンズの球場バンテリンドームの方から来ていて、ここで矢田川の堤防を上る。その上の交差点、というわけだが、特徴としてこの交差点そのものは平坦ではなく、画面奥方バンテリンドームの方が少し下がっている。交差点自体が緩く傾いた位置にある。
で、事故の概況を見ていただきたい。事故車は画面奥方、「緩い左カーブの上り坂」を走ってくるので、重心はそもそもが後部座席側に移動し、前が軽くなる。事故車は後ろが定員超えの3人であるから、この傾向はさらに大きくなる。一方「曲がる力は」前のタイヤがアスファルトに食いつく力(グリップ力)で発生するが、上記のメカニズムで前の荷重は抜けて浮き気味になり、なおかつ雨で滑る。すると後ろに移動した遠心力が勝り、車体は右に傾き、後ろが飛び出そうとする。この「右に傾いた」とき、右側のタイヤにグッと力が掛かり、車両は急激に左に回転を始める。それは「クルマがつんのめった」のだが、フィギュアスケートのジャンプ直前、軸足が氷上をガチッと食んで回転軸を作ったのと同じである。すなわちそこを軸に急激な回転を起こす。この現象をオーバーステアという。
後ろは外側へ飛び出そうとし、前は内側へ向こうとする。が、後ろが滑り出すたクルマはそのまま横滑りとなり、そのまま交差点……坂のてっぺんで反対側までジャンプ(スリップ痕が無い=タイヤと路面の摩擦がないため推定)して、
で、この事故の象徴的画像として使われているが、クルマは真横になり、車体側面から欄干に激突。右後部のタイヤをここに打ち付けた。前に突っ込む衝突であればエアバッグの効果があろうが、側面にそんなものはない。ましてや2人用のところに3人詰め込んでいる。遠心力で振り回され身動き出来ぬまま3人まとめてクルマの内壁か窓ガラスに打ち付けられたであろう。
ずれた欄干が衝撃の大きさを物語る。なおこの欄干自体は「飾り」で、橋梁本体はもう少し離れた場所から始まっているので、橋梁の構造や強度への影響はない。
定評あるスポーツカーでも重量オーバーの状態で路面との摩擦を失えば何も出来ないのである。アクセルを踏めば走るのは確かだが、ハンドルを切れば絶対曲がれるわけでも、ブレーキを踏めば絶対止めるわけでも無い。そこを逸脱しないよう考えることが「運転」である。ある程度力学が分かれば、1000キログラムを越える鉄の塊を力任せに動かしていることがどれだけ恐ろしいか感覚が付くのだが。単なる方程式の暗記と吐き出しではなく、体感できる場が必要なのではないか。
自業自得の数え役満。だが、こんな丸いタイヤ痕残して母の日に母より早く二十歳前に散ったとかおいたわしいことに変わりはなく、手を合わせてはおいた。起こる必要のなかった事故だ。切ねーな。
速度とルールは守りましょう。飲酒運転、ダメ、絶対。
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