東芝に出戻る @TOSHIBA_LS
洗濯機の買い換えは「安物でいいや」としたのだが、偏りが起こりやすいらしくガッタンガッタンうるさい上に何度もすすぎを繰り返すので終わらず、音を上げて東芝に戻した。
「家電レビュー芸人」とかいるが、何たら機能!へー!ってだけであるので、もう少し技術者に報いる記事にしてみたい。東芝の洗濯機に戻った理由の一つは洗濯槽の駆動メカニズムと回路「ダイレクトドライブインバーター」(ターって書きたくないけど)である。
コイルがずらっと並んでいるが、こっちは動かない、その外側に「ホールケーキの外側のビニール」みたいに取り巻いてる部分に磁石が並べてあり、コイルに順繰りに電流を流すと磁石が引っ張られて回る。クルマやバイクをバラしたことのある方には「アウタロータ式のオルタネータ」と言えば通じるであろう。で、この「コイルに順繰りに電流を流す」仕事を電子回路がやっている。その電子回路こそ「インバータ」である。
さて洗濯機の回転翼(パルセータ)は、眺めていると判るように正転・逆転、脱水と、速度・方向とも頻繁に変わる。このため、クラッチ、ブレーキ、ベルトプーリーなど、クルマにも似た伝達機構を有している。ただ、それらは摩擦摺動を有し、減速のためにモータ出力を損失する。音も振動も応じて出てくる。インバータ駆動とすることでこれらは一気に解決される。
ただ、「家庭用のモータ」として洗濯機は唯一「モータ負荷が都度変わる」。洗濯物の量、水の有無、脱水により水がなくなって行く。
実はインバータ自体はこういう変動に追従するのは容易である。マイクロコンピュータで制御しており「オレはこの回転数で回すんじゃ!」という意思があるので、実際の回転数を検出して補填している。ただ、磁石モータの場合、ここを闇雲にすると、磁石の中に電流が発生して発熱し、磁力の低下を招く。そこで「ホールIC」という磁力センサで、並べた磁石が今どこにあるかを検出し、インバータが作り出す正弦波を制御している(進み位相の話は略すぜ東芝さん)。
さて今回の回帰動機は「脱水時の振動」である。この辺はこの機構強いのだろうか。
洗濯槽は手で動かすとゆるりと動き、しかしぶーらぶらしていると言うほどではない。実は洗濯槽は鉄板ドンガラからぶら下がっている。ブランコみたいなイメージである。ただし、ロープではなく「ダンパ」というこれまたクルマやバイクでおなじみの機構を使っている。
これによりアンバランスで洗濯槽が振動を起こしても、腕で支えたブランコと一緒でテキトーに振動は抑えられる。加えて東芝さん
だ、そうである。あ、いやここがキーテクノロジーだが、具体的には書かれていない。ってか、ホールセンサと回転数検出があって(洗濯槽が今どの角度にいるか判る)、後は振動センサがあれば「どのように偏っているか」判るんじゃね?
特許ござる。ほうほう。
要約すると「あちこちにアンバランスを模擬したオモリを取り付けて洗濯槽をぶん回す実験を行い、アンバランスと振動センサの挙動の関係を導き出した」そうな。で、マイクロコンピュータにこの計算をさせて、アンバランスかどうか常に把握し、アンバランスの場合、状況に合わせて解消動作(プチすすぎ)を行い、その際の水の入れ方やその後のパルセータの回転方法をインバータに物を言わせて色々変えてる、と。
昨今洗濯物は「とりあえず全部ぶっ込め」ではなく、デリケートな奴はネットに入れたり、大きな毛布も洗えたりする。こういうのは言い換えると「重さが様々な石を入れる」「いびつで大きな石を入れる」のと一緒で、布地丸出しの場合に生じる引き延ばされたり洗濯槽に貼り付いたりという「重心の分散」が起こりにくいので、アンバランス自体は発生しやすい上に一度起こると解消されにくいと言える。比して一通り見てきた通り、構造・駆動・制御ともアンバランスに対し「強く、柔軟なOK/NG判断能力を備え、対策の筋道を複数所持している」こうなる。まぁ、もう一歩進めてベクトル制御にして洗濯槽1回転の中でアンバランスを打ち消しながらぶん回す所まで行って欲しいが。DSP継承してんだろ?技術者がんばれ。
ともあれ係る問題には強そうだ。効果は如何に?期待しましょう。
« 一大事、令和ならでは | トップページ | 小ネタ・自己メモ・全部くだらない »
コメント