執念と馬鹿の境目
その昔、名古屋・栄の松坂屋では、鉄道模型の売り場は6階の紳士用品フロアにあった。「鉄道模型は紳士の趣味」だったわけだ。それはそれなりに高価なシロモノであるから「でんしゃだいすきなおともだち」が絶対寄って来ない(いたずら防止)の側面もあったと思う。ボクチャンが小学5年のみぎり、その売り場の最もてっぺんで文字通り光り輝いて飾られていたのがこれだ。
株式会社エンドウ製「近鉄30000系ビスタカー」。見ての通り当時これだけだった2階建て電車で、近鉄でも現在の「ひのとり」に相当する最高のステータスを誇る存在であり、子供心にとてもかっちょよかった。ただ悲しいかなプラスティック成形品が主体の鉄道模型にあってこいつは「全金属製」で、お値段も4両で14800円と、当時の水準からはべらぼうに高かった(たとえば「特急しなの」ならそのお値段+1000円で実物通り9両編成にできた)。お年玉かき集めて正月明け颯爽と売り場に向かうとてっぺんにあったビスタカーはそこに無いのであった。
「ああ、売り切れましたよ」
スーツの店員は、冷静にしかし丁寧に、ボクチャンにそう言って隣の紳士の応対を始めたのだった。1982年。
近鉄30000系ビスタカー。トミックスのプラスティック成形品である。中古屋サイトを見てたら「未使用新品」で転がっていたので上記悲運(?)の別れを思い出してお迎えした。「未使用新品」で売り飛ばして何のために買ったんだ?というところだが、そういうのは大概、クレカ決済即売却で、クレカの利用枠を現金化しようという目論見に基づくことが多い。2013年……10年前の発売。当時定価16800円。30年を経て同じくらいの価格水準ならそうべらぼうでもないだろ。ちなみにこちらはライトが点灯し、ディテールも細かい。比してエンドウ品は金属成形で細かいディテール持てるわけもなくのっぺりしていてライトも付かず行き先シールも入ってない。もし当時買っていたら時を経て継子になっていたこと必定であろう。負け惜しみでなしに。
(上記写真元……まぁレアアイテムだが模型としての実用性で言うとね)
てなわけで年末休暇は毎年私鉄特急を並べて走らせるので向かってドレスアップである。車体番号のシールやら本当に未使用新品で、紳士の趣味も金づるにされてかわいそうというところ。インレタの糊まだ付くのかこれ。息吹いて少し水分持たせて。あ、貼れた。
今でこそ特にJR東日本でバカスカ走ってる2階建て車両1978年の精一杯。模型だと窓の外からここまでよく見えないのだけれど、頑張って作ってあります。
ちなみに現物の「階下」はこうなっちょって。個室っぽく使えるのに仕切りとか無いので冬は寒いっす。
模型は2階建てのもう片方に動力搭載。おっと、アンタ全Nゲージャーの敵M9モータ付けてたね。交換交換。
整備完了。10年の眠りからお目覚め。さ、走れ。売り飛ばしたりしねぇよw
« こんな寒い日には | トップページ | 理屈・原理・常識 »
コメント