趣味商品のコストを削るな
アナタは自分のクルマのエンジンが外為法における「ろ地域」の産品だった場合、そのクルマに乗りたいと思うか?
この山のようなモータは鉄道模型の走行用で全部不良品である。前はマブチから供給を受けていたが、真鍮製の部品(フライホイール)を付加する代わりに「ろ地域」の産品になった。マブチは30年以上問題ないが、ろ品はヘタすると買ってきて30分でぶっ壊れる。何がどう不良なのか説明すると長くなるが、直流モータは回転し始めると「発電機」としての性質も表れるため、発電された電流を上手く流してやるよう、停止時と回転後で「ブラシ」と呼ばれる電気接点の位置をちょっと動かしてやる必要がある。が、こいつにはそれがなく、ショート故障してぶっ壊れる。フライホイールという実物により近づく利便の代わりに根本的な性能を失ったわけだ。こういうのを「安物買いの銭失い」という。
一般に使用部品のコストを下げようとするのは、売価を維持して原価を下げようという意思・必然が生じた場合だ。だが趣味商品でそれをやると、趣味=金を掛けてもいいからその道の最高を目指したいというユーザの意図と反する方向になるので、往々にしてこのようなほころびが生じる。必要なのは売価でなく品質の維持だ。売価が上がってもいいのである。2倍になってもこういう結果になるよりずっといい。ケチるんじゃなくて必要な利潤が得られるようにフッかけて構わない。ちなみに鉄道模型のモータはポツンと1両編成から大都市圏の10両編成以上まで再現する可能性があり、速度は変わるし坂も登る可能性がある。負荷も速度も常時変動する難易度の高い用途である。「へなちょこ」に務まる原動機ではない。
これ。先にJR線上から引退したディーゼル車「キハ85」である。令和最新型リニューアル品が出てきたので調達した。連結器の部分に「トイレタンク」が表現されている。これは初期製品には付いてなかった。ディテールアップと言うわけだが、驚きは箱から出した瞬間しょんもりに変わった。
台車にくっついて動くな。ウンコが線路に落ちるじゃねーかw
このメーカのこういう対応を見たのは実に昭和の頃より40年ぶりである。鉄道模型特にNゲージは実物より遙かに急なカーブを通るので、連結器は車体より台車に付いていた方がスムーズに動く。ただそうすると特に機関車の場合、車体の下のスカートを大きくえぐって台車と連結器が左右に動く構造を取る必要が出てくる。
(えぐった事例)
同社はこれを嫌い、スカートを台車側に表現して、台車ごと左右に動く構造を選んだのだ。模型はデフォルメがあってナンボだが、これは流石にドン引きしたファイルも多く、あたかも人がアゴを左右に動かしているかのように見えることから「アゴ外れ」とか揶揄された。その後この問題はスカートから連結器を生やしつつも大きく動く構造を編み出して解決するのだが
(解決)
まさか正面から見てニヤニヤする機会の殆ど無いディーゼル車の連結面でやらかすとは。ちなみにこの令和最新型は、モータがフライホイール非装備など、リニューアルというより「旧製品をちょっといじりました」感がハンパなく、要するにこれもコストケチったの部類と言って良い。前述の通り本物はJR線から引退したので(京都丹後鉄道に2両+部品取りが買い取られて移籍したが)、今後新たにこれを買おうという人は多くないことは誰でも想像つく。大きな費用を投じられない……素直な結論であろう。だがその結果動力機構は30年前のまま、ディテールは先祖返りでウンコ垂れ流し、でいいのか。
趣味だからこそ妥協したくないのだよ。妥協したくない水準だからこそ趣味なのだよ。そのためにお金掛けてるのよ。あなた方が作っているのは趣味商品なのだよ。
まぁ、40年でようやく売価が2倍程度に収まっているので「ようやっとる」方だとは思うが。鉄道模型なんか大人の財力で初めてガバガバ買えるくらいの水準でいいのよ。だからこそ子供たち・入門者は「それだけカネ出しても必要かどうか」懊悩するし、買えば買ったで次の買い増しまで長い時間がかかるので、虎の子の「最初の編成」をずっと大切にする。するとここに議論トップに戻って「長持ちすべき」蓋然性が生じる。
しっかり作ってしっかりふっかけろw
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