2025年ノーベル化学賞について
京大・北川進博士らの「金属有機フレームワークの開発」に対して授与することを決定しました。
おん。
冷蔵庫やクルマの「脱臭剤」としてツブツブの物体が売られているのはご存じと思う。「活性炭」とか「ゼオライト」がそれで、表面穴だらけで、その穴にニオイ物質が吸着される。
(ユニチカ)
北川博士は同じような「穴だらけ物体」を「金属」と「有機物」の化合物「金属錯体」(きんぞくさくたい)として作り出すことに成功した。「金属錯体」の代表的な奴は「ビタミンB12」である。
真ん中に「Co」すなわち「コバルト」がある。その周りをうにゃうにゃ有機物共が囲んでいる。「血行をよくするお薬」として「メチコバール」とか「メコバラミン」を処方されている方おられると思うが、ありゃ、これである。薬名の「コバ」はコバルトのことだ。
で。
博士が開発したのは「多孔性金属錯体」である。
(日経)
こいつはその小さい穴のサイズをかなり自由に変更でき、ゆえに特定のサイズの分子を取り込むことができる。すなわち。
・溜め込む
・取り除く
・分離する
能力を持てる。
(ノーベル財団)
MOF-303:水蒸気を捕捉。加熱することで変形し、液体の水として取り出せる。
MIL-101:巨大な空洞を有する。汚染水中から原油を取り出す、抗生物質の分解触媒として「利用中」。水素や二酸化炭素を貯蔵するのも可能。
UiO-67 :水から最近注目されている PFAS を吸収できる。水処理・汚染物質の除去に有効。
ZIF-8 :廃水から希土類(レアアース)をフィルタリングする。「実験中」。
CALF-20:二酸化炭素を吸収する。カナダの工場で「試験中」。
NU-1501:常圧で水素を出し入れ出来る。水素は自動車の燃料・燃料電池として使用できる。高圧タンクに気体を充填する際の爆発リスクを低減できる。
……応用範囲は環境対策・エネルギー源の他、コイツに薬を抱かせて患部へ送り込むなど医療用としての応用も研究されているそうだ。
多孔性金属錯体(MOF)そのものの話は面倒くさいかも知れないが、応用できる結果はこの通りで、簡単明確で画期的「ノーベル賞級の仕事」そのものであると言えるだろう。
イイ時代に生きてるよ我々は。
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