「明治男」過去の言葉になる
「降る雪や明治は遠くなりにけり」とは中村草田男(明治34-昭和58)の句で、昭和になってから詠んだものだとか。
こりは「理科年表」に掲載されている「近代320年表」である。明治は元年が1868年で156年前、最後の45年(=大正元年)が1912年である。つまり明治生まれの人は全て112歳以上ということになり、このほど「明治生まれの男性」が全て鬼籍に入った。なお女性の最高齢者は明治41年生まれでいらっしゃる。
前にも書いたが父方の祖父は明治27年、祖母は明治38年の生まれである。大正・昭和・平成を挟むとそれこそ「遠い」ように感じるが、世代としては2つ前に過ぎず、3つも戻れば江戸となる。実際曾祖母は文久3年の生まれである。「ちょんまげ」から「スマホ」まで160年経ってないということだ。「明治」は変化の暴風のまっただ中であって、昭和になり振り返れば隔世の感も然りというところだろう。
・最初の鉄道 明治5年
・電話機の上陸 明治10年
・東京電灯(渋沢栄一)による送電事業の開始 明治16年
・東海道線の全通 明治22年
・映画のはじまり 明治26年
・東京駅落成 大正3年
・ラジオ放送の開始 大正14年
・写真電送(ファクシミリ)実運用 昭和3年
・テレビの実験放送 昭和14年 本放送 昭和23年
電気と情報インフラおよび鉄道の変化がこんな感じ。「徒歩か馬」だった移動手段は22年で十日を要した東京-大阪を24時間に変えた。おおよそ60年で「インターネット前」の電気と情報インフラほぼほぼ揃っている。
・コンピュータの運用 昭和21年
・トランジスタの発明 昭和23年
・東海道新幹線開業 昭和39年
・コンピュータ間の通信による情報授受(インターネットの前身) 昭和43年
・マイクロコンピュータ 昭和46年
・パーソナルコンピュータ 昭和50年
・光ディスク商品化(レーザービジョンビデオディスク) 昭和56年
・東北・上越新幹線開業 昭和57年
・インターネットサービスプロバイダ登場(現在のスタイルの基本) 平成3年
・iPhone1号機(スマホの始まり) 平成19年
気づかれた方多かろう。「コンピュータ」という存在が生まれてからスマホに至るまでやはり60年である。草田男が令和の世にあれば昭和が遠くなったと懐旧したであろうか。
ちなみに「明治男」は近代社会におけるジェンダーが確立された姿である。気骨というか、男子かくあるべしみたいな概念の中で男達は日本の近代化「富国強兵」の原動力となり推し進めた。120年を経てそれは間違いであり存在すべきでないという風潮がはびこる令和の昨今である。だが悲しいかな「性別による差」は生物学的な事実として存在する。なくなるように優遇せよと。それは一理あるように見えるが、日本の国体が21世紀に保持する姿に沿うものであろうか。
「男は喋るな、泣くな、白い歯は一生のうちに三度も見せればいい」(笠智衆/明治37年生まれ)
最近のコメント