レビー小体型認知症の経緯と予後に関する書き留め(4・終)
●知りたいこと・知っておくべきこと・伝えておくこと
よらず認知症と診断されるとこの手のパンフレットをもらえると思うが、大抵「ぬるい」。誤解を恐れず言うならば、認知症と診断された家族と当人が知りたいのは「どの程度『ボケ』て、いつ死ぬのか」ではあるまいか。しかしこの手の奴にはそういうことは殆どの場合触れていない。個人差が大きすぎるというのもあろうが、それ以上に情報がなさ過ぎて当事者としては困ったというのが実態。最も、webでちょっと掘ると出てくるし、専門的なことは医療・看護従事者向けの資料や「論文」を漁ると出てくる。なのでここにも書いてしまうが、後で触れる通り知っておくべきなので書いておくという意図である。
・どの程度?
→「どこで何をしているのか」「何をすべきなのか」わからなくなることがある。状態が悪い時は別の人格に変わる(その間のことを当人は覚えていない)。ただ、おおむね、人としての、家族同士のコミュニケーションは取れる。「ドラゴンズ勝ちましたよ」「そうかね」
・いつ?
→論文等に出てくる数字は5~7年。義父は「悪夢で叫ぶ」等、典型・前駆症状は2017年には確認されており、確定診断が2019年。亡くなったのは2025年である。
「レビー小体型認知症という病気なんですよ」というのは絶対本人に伝えておくべきと断言する。なぜなら認知機能や運動機能の低下、応じた日常生活上の失敗や「迷惑」も、全部「病気のせい」で片付けられるからである。「だから気に病まないで」(病気の所為と言ってこの字面はアレだが)と伝えることができる。失敗を恐れて隠してしまい、より状況が悪化するようなことを防げる。前にも書いたがそれこそ認知機能の低下によって、アクシデントに対する最適解を導き出せないので、「やって欲しくない選択」をしてしまう可能性があるからだ。「何かあったら言ってね」これを言い続けることが大事。DLBはコミュニケーションはちゃんと取れる時間が長いので、その段階で「病気なんだ」というコンセンサスを取っておく。そしてそれはもちろん、家族の側も、何かあっても怒鳴りつけたくなっても「病気で仕方ない」という認識を持つこと大事。判らせようと思っちゃいけない。病気だから。
・最期
パーキンソン症状に代表されるが運動機能が下がって行くので途中経過はともかく「寝たきり」になる。これ当人は意識活動は充分「普通」の状態で「思った通りに身体動かない」のであるから辛く屈辱的なはずである。今これを読んでるアナタが「身体動かないならオムツにウンコやシッコをしろ」と言われて出来るか?それを誰かに世話してもらえと言われて素直にウンコ拭いてと言えるか?このことは「病気の所為」の同意が重要であることを再認識させると共に、そうなるまでに専門家・施設の確保が必要であることを示唆する。身内だから家族で……これは物理的な問題が大きい(まず無理)だからやめた方がいいし、「病気の所為」に通じるが「専門家に任せて」という物言いも屈辱感を緩和する効果を持つであろう。
そして……「ものを飲み込む」機能の低下によって飲食物が肺に行ってしまって「誤嚥性肺炎」を起こすか、そうでなくても運動=呼吸器や循環器を動かす能力の低下によって「心臓が止まる」ことによって臨終を迎える。義父の場合2月下旬にはもう自力で立ったり歩くことは出来なくなっていたが、つかまり立ちは出来たし、手を引けば足を前に出せる。なのでどうにか自分の車に乗せて病院へ行くことが出来た。だが、それから急速に状況が悪化し、殆ど寝ているようになり、コミュニケーションも一見取れているように見えるが会話が成立しなかったり(聴力検査のヘッドホンをかぶせたらおどけたそうな)、食事中に口に物を入れたまま寝入ってしまい、それが気管支に行って咳き込む(こうやって「誤嚥」する)という状態が出現し始めた。典型症状に「幻視」「悪夢」があるが、常に夢見ているような状態になったようで、名を呼ぶと目を向けるが何も見ていない。脳内で生成される妄想・幻覚と五感から入る刺激が混交し、峻別されない(それこそ認知の障害)になったのだろう。そしてもう、飲むとか食べるとかを身体が求めなくなり(食欲の消失は生命活動終焉のシグナルである)、ずっといびきかいたまま眠るようになった。このいびきは舌ベロがコントロールされなくなって喉の奥の方へ垂れ下がって生じている物で、「脳出血で突然いびきを掻いて寝始めた」とメカニズムは同じである。両手が不随意に動くがそれはパーキンソン症状なのか、何らか「夢」に対して身体が反応しているのかそれは判らない。そして翌朝旅立たれるのであるが、最期は意識が無くなったか夢見る人のままだったはずで、呼吸困難や激しい痛みなどの業苦はなかったと思われる。と、信じたい。
・まとめ
レビーは認知症と言えど、初期の段階では「普通の人」なので、残された時間を切られるのは辛く恐ろしい瞬間であろう。たまに40~50代で発症する例もあるので、それで突きつけられるのは本人も家族にも耐えがたい事実としか言いようがない。その点でここにこうやって詳らかに書くのは少し憚られるのであるが、調べりゃ幾らでも出てくるので隠すのは無意味だし、むしろ詳らかな方が「何も判らない」不安よりはいいと思うのだ。そして誤嚥性肺炎さえ避ければ(普通に食べて飲み込んだら肺に行ったという例もあるので難しいのだが)、意識活動は低下し、眠りの中で鼓動が止まるので、安らかに旅立てるはずである。
レビーは「普通にコミュニケーションできる」。だから、家族としていつも通り、普通に、会話して。可能な限り。そして、早めにケアマネさんと相談して専門家の対応が受けられる施設の確保を。
(終)
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