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2023年5月 4日 (木)

全力で脱力

昼まで寝て何か食って昼寝して昼メシ2時。義妹と甥っ子が訪ねてきて駄弁る。

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買ってきたビル等を配置する。右から茶色い建物は役所、コンビニ、銀行(の予定)、薬局というかドラッグストア、病院。バラバラ何か置いてあるのは公園。木も植える。

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ペーパーキットの納屋組み立て中↑とその配置↓。

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こういう三角形のスペースが出来るのは実物に比して線路のカーブが急すぎる模型ならでは。どうしようかね。商店街の裏側だから適当に駐車場兼野ざらしの物置・空き地でもいいんだけどね。意表を突いて裏の畑か。ここ掘れワンワンポチが鳴く。今日は以上。

2023年4月29日 (土)

それはそれで実用性がなくては

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鉄道模型ジオラマ(レイアウト)はそれなりに建物並べておけば、列車が走る姿自体はリアルに見える。が、「人の住む場所」として体を為してないと俯瞰した時に興ざめになる。つまり「街作り」……都市設計を要求される。ここは終着温泉駅前で、役場と公立病院(右奥のビル上構造物)が集約配置された場所。このスペースをどうするか。メルヘンチックな「おうち」が4軒並んでいるが、これは昔良くあった「公営の間取り2Kの平屋の借家」をずらっと並べようか……と仮配置したもの。しかしそおゆうのって、どっちかつーと都市部あるいは都市近郊において「新しく独立した世帯」のためにあるんじゃないか。ここは老舗旅館が並ぶ温泉宿。

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で、まずは「人の集まる場所」ということでコンビニを配置。後は薬局や銀行もあるといいだろう。

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ビルを買うw。証明写真機もこういう場所「あるある」としてコンビニのそばに配置。メルヘンおうちのあるスペースは適当に狭いので「列車の見える公園」とし、更に木を立てる。病室から緑が見えるのは良いこと。なお残りのスペースは駐車場。これだけ揃ってると応じた駐車キャパがなくては。

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こなた都会駅のサイド。駅ビルの向こうの空間はバスターミナルで、線路際まで歩道になっている。ここは所定の位置に列車を止めるため、駅を見通す必要からも好都合。にしても幾つビルを買っても空間が埋まらない。都会ってカネが掛かるわw

2023年4月21日 (金)

うろちょろしてじたばたする

・義父の処方箋の受け取り
・整形外科でケツを揉まれて湿布をもらう
・取り置き雑誌の受け取り
・新しい鉄道模型のカタログ購入
・ポケGOのタスクを進める

外出から戻ってきた妻と交代で出撃。まず薬局に行って取りそろえに時間のかかる義父の処方箋を依頼し、その間にケツ揉み。終わると自分の処方箋を薬局に持ってって二人分もらう。

本屋に行って受け取り、ポケGO対応でわざと遠回りして模型屋に寄ってカタログを買う。

以上2時間。

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カタログ。こういうのは別にweb版があれば十分なのだが、「検索性」という点で一日の長があるのよ。「カタログのこの辺のページ」って奴がwebではできない。また、テキトーにページめくって適当な読み物になる。「調べる」だけなら手のひら端末で事足りるけどね。

ミッションコンプリート。

2023年4月10日 (月)

VVVFインバータという奴(その8・最終回)

●ベクトル制御

20230409-230717

やる?

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本当に?w←責任持って書け

・ベクトル制御の目的

見るからに面倒くさいのだが、それでも採用したからにはそれなりに理由がある。端的には前にも書いたシーメンスのドレミファがベクトル制御で、通常のVVVF制御(V/f比一定制御orすべり周波数制御)より省エネ性能が高かったから各社なびいた……という噂話を聞いた方もあるだろう。実は誘導機はVVVF与えておけば負荷(お客様の数、レールと車輪の粘着状態)に応じて、適当にズルズル滑りつつも回ってくれる。そこで例えば空転するとモータ周波数が与えた正弦波周波数に追いついてしまうのですべりが無くなる→誘導起電力が働かなくなる→回転子の電流が減少してトルクが減少する……となり、「空転したら回転数を絞る」という鉄則が「勝手に」発生してくれる。逆にトルク不足については電圧上げる(トルクブースト。弱め界磁の逆「強め界磁」)という力業で絞り出すことが出来る(※)。
それでもリアルタイムにトルク監視して制御できるこいつが採用されたのは、モータ電力が大きいので「適当に」でチョイチョイ生じるムダが「塵も積もれば」的に大きくなるので、ベクトル導入による効果が結構大きいから、というのが一つ。もう一つはベクトル出始めの頃には磁石モータの可能性が既に見えていて、こいつは逆に滑っちゃいけない。どういうことか?誘導機はかご形導体に電流を発生させるために正弦波周波数をモータ周波数より少し高くしてやる必要があるが、磁石モータは最初から磁力を持っている=励磁されているのでそうした特性は不要で、むしろ正弦波周波数と全く同一の周波数で運転してやる必要がある。なぜなら磁石部分に電流を発生させてはいけないのである。その電流が生じる熱で高価なレアメタルの磁力が減少してしまう(減磁という)。出力周波数とモータ周波数を精度良く一致させるには「瞬時に」必要なトルクを確保する必要がある。その方法はベクトルしかない。ベクトル開発する意義がある、というわけだ。
※負荷に対してトルクが不足するとモータは回転を維持できず失速(ストール:Stall)する。モータは過大な電流が流れて過熱し危険な状態になるため避けなければならない。

・ベクトル制御の考え方

馬が3頭のメリーゴーラウンドを考えてもらいたい。その3頭の位置を方程式で示せという課題が出たらどうするか。ターンテーブル回ってるし馬は上下に動いてるし、しかも3つ。途方に暮れる。でも、アナタがターンテーブルの上に乗っていれば話は別だ。馬の位置と上下運動だけ考えれば良い。更にどれか1頭の馬に乗っていれば、自分の馬と他の馬の差だけ表現できれば良い。その差の表現に高校数学の最難関3次元空間のベクトル表記「空間ベクトル」を使うのだ。

・手順

行列式並べてもしょうがないのでかいつまんで。あ、クソ面倒くさいので、結果だけ欲しい方は下の方の「要するに」まで飛んでください。

①三相→二相変換

1頭の馬に乗って他の2頭を表記する。

V1

ソース以下同)

モータ出力u相をα軸として固定し、vとwを見ると、それぞれ常に120度ずつ差を持って表現できる。この位相差は常に固定なので、ベクトルの合成で表現できる。

②1次巻き線(モータコイル)2次巻き線(かご形導体をトランスと見なした)の分離

V2

固定子を座標軸上に固定すると、回転子(かご形導体)はそこからある角度離れ、角速度ωで回転している。

③固定子と回転子の座標軸合わせ

V3

上に方に出てくるめちゃくちゃ面倒そうな行列式は③を出す物(dq変換……ベクトル制御の技術上のキーワード)である。

④すべり周波数を用いた回転座標系による表記

V5

「地上とメリーゴーラウンドターンテーブルの関係を式で表現」としておく。この図がピク誌図18に相当する。

ωs:すべり角周波数(註:すべり周波数自体はfで、ω=2πf),1:モータに与えている電流,φ2:回転磁束(=トルクの元になる磁力成分)。

・要するに

で、欲しいトルクは、これがベクトル化した最大の効能だと思うのだが、

V6

ベクトルの外積演算で立体方向に答えが突き出てくる。「ベクトルなんか習ってどうするんだよ」……ここで使ったでしょw。なおこれは電流と磁束と更に直交して生じる力、すなわち「フレミングの左手の法則」に合致すると書いたら少しは感動してもらえるか。

V7

τ=トルク,p:コイルの数,MとかL:モータコイルのインダクタンス(モータに少し電流を流して測る),ω1=モータ回転周波数+すべり周波数→θ1が積分で得られる。

これより、ベクトル空間の計算のお約束によって、モータで測定して得られる固有の電気定数と、すべり周波数の検出によって、必要なトルクと、それを得るのに出すべき電流値が算出できる。

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すべり周波数を観測して瞬時に最適なトルクを提供できるモータ制御機が爆誕する。なお、家庭用においても、洗濯機や、エアコン・冷蔵庫のコンプレッサなどでは、1回転内でトルクが脈動するため、ベクトル制御を導入すると騒音低減・省エネの効果が大きい。

お疲れ様でした。令和最新型に到達です。

・SiC素子のMOS-FETを使う

スイッチ用の半導体素子紹介してきたが、あれらはいずれも「シリコン」すなわちケイ素で出来ている。水晶・石英が二酸化ケイ素であるから、要するに地球の主要構成要素の「石」である。このため、真空管スイッチに対して石と呼んだりする。

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(石)

「シリコンカーバイド」Silicon carbideはそのシリコンと炭素の化合物、炭化ケイ素である。

Index

(まだまだデカく作れない)

シリコン半導体に対するメリットは

・耐圧が高い
・かなり高温まで動ける

ここで「耐圧」はぶっちゃけ素子を分厚く作ることで確保する。お見せしたIGBTの実物で「コレクタは裏」と書いた。表と裏の間に母線電圧が加わる。厚み=距離であるから、電子なりホールなりが通過すると応じた電気抵抗で発熱する。比してSiCはそもそも耐圧が高いので、薄く作れる。IGBTでも「板」に見えたと思うが、SiCになると、

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スケスケレベルになる←他の書き方は無いのか。
MOS-FETのところで「耐圧と大電流の両立が難しい」と書いたが、耐圧の高いMOS-FET=分厚いMOS-FET=内部抵抗の大きなMOS-FETとなるからだ。対してSiCならスケスケレベルなので抵抗値ももちろん小さい……高耐圧大電流の夢の素子爆誕、というわけだ。

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鉄道用SiCのモジュールはスペックが公開されていない(輸出貿易管理令該当=輸出するのに経産相の許可が必要なレベル)ので産業用で申し訳ないが、

20230410-212648

rDS(on)のところに25℃で4.9mΩという文字が見えると思う。オームの法則よりP=RI2であるから、300A目一杯流しても損失は441W。同じくスペック表を書いた3300V1200AのIGBTがオン電圧2.0V(25℃)とあるので、同じく300A流すとP=E×Iで600W。オフからオンに要する時間は0.25マイクロ秒(SiC-MOSFET)、1.4マイクロ秒(IGBT)……画期的な理由がお分かり頂けるだろう。なお、FWDは「ショットキバリアダイオード」という方式を採用している。これは、ヴァルタ・ショットキ(Walter Schottky)という物理学者が発見した「ショットキ障壁」という性質を使ったダイオードで、「金属と半導体を接触させる」だけで実現でき、早くて損失が少ない。また、シリコンのダイオードでショットキを作ると、電圧が逆(カソード電圧が高い)時に漏れ電流が大きいという弱点があったが、SiCはその弱点が前に出てこない。早い・簡単・低損失というわけだ。なので先にFWDだけSiCにした「ハイブリッドタイプ」のスイッチモジュールが存在するのはご存じの通りである。

小さな素子で大きな電流が流せて損失が小さい……電車用インバータ装置はGTO時代の1/3のサイズになったとか。そして小さいのでモータ一つ一つにインバータ装置をあてがうことが出来、モータの特性を測定する必要があるベクトル制御のメリットを最大限発揮できる、こうなるわけだ。永久磁石同期電動機(PermanentMagnetSynchronousMotor:PMSM)磁極センサレスベクトル制御SiCインバータ……現下最新最高性能の電気車推進装置の姿である。

(こっそり:ピク誌図11なんか違わないか?SiCは基底周波数が高く取れるんじゃなくて、実印加電圧が高く取れるから応じて基底が少し伸ばせるんじゃないのか)

・用語の補遺

ピク誌しれっと説明せずに出してる用語を追加説明。

IPM:インテリジェントパワーモジュール。実物紹介したIGBTやMOS-FETのモジュールに、これらのオンオフ用回路や、過電流遮断回路、遮断が働いたことをマイコンへお知らせする回路などを内蔵したもの。ただ、VVVF駆動信号はあくまでマイコンが生成。インテリジェントと言うわりに脳は持ってない。

PGセンサ:パルスジェネレータ方式の回転数検出器。ガラスの円盤に1024本とかバーコードみたいに放射線状の線が書いてあって、モータの回転軸に取り付ける。光が反射する/しないでモータの角度や回転数を検出する。

レゾルバ:小さな発電機で同じくモータ軸に取り付けて回転方向・回転数の検出に使う。

●まとめ

①VVVFインバータは6つのスイッチセットを高速でオンオフさせて、擬似的に三相交流を生成して、誘導電動機や同期電動機を任意の速度やトルクで駆動する電子回路である
②VVVF駆動装置から発生する音は、高速のオンオフで発生する磁力急変に伴ってモータコイルなどから発生している
③VVVF装置は、スイッチ用半導体や制御するマイクロコンピュータの進歩に合わせ、時代時代で小型・低損失・低価格を追求してきた。この結果、「音」も時代と共に変化してきた
④現下最新の構成はSiC半導体で構成したスイッチセットで永久磁石モータを駆動する装置である。モータ個々の特性値を学習させ、ベクトル制御で瞬時に最適なトルクを発生させることが出来る

路面電車に1セットだけ乗せて恐る恐る……から、40年でモータの特性を学習して瞬時トルク制御でこなすようになりました。

以上お付き合い頂いた方お疲れ様でした。

(おわり)

2023年4月 9日 (日)

VVVFインバータという奴(その7)

・制御方式と「音」の話

インバータの歴史は「使える半導体とその制約。および制約を越える工夫の産物」で積み上げられてきた話は前に書いた。この結果がニョジツに反映されているのが、インバータ制御の電車から出てくる「音」である。電磁石の実験の話で、自分の磁力で自分を振動させると書いたが、他にも、巻き線コイルの磁力と鉄芯通過中の磁力による吸引反発、急な大電流オンオフによる発熱冷却がもたらす膨張収縮など、モータとして回転力に寄与せず振動に化けてしまう成分が少なからず存在する。このうち、自分で自分を振動させるのを、「磁気歪みによる磁性体の変形」という現象に伴うものであるから、磁歪音(じわいおん)と呼ぶ。たま~に電柱のトランスがジーと唸っているが、これは磁歪音がほぼほぼを占める。

ピク誌図4のVVVFの波形イラストをご覧頂きたい。パルス列の始まりと終わりのポイントを、正弦波1発分の始まりと終わり(位相0度~360度・ぐるっと一週)に合わせてある。逆に言うと、正弦波を近似するに何個のパルスを使うか決めている、こうなる。正弦波4ヘルツをパルス45発で作るとすると、パルス自体の周波数(1秒間に使うパルスの数)は4×45=180Hzになる。PWMについてPWM「変調」と書いたが、これは、パルス列の周波数で正弦波を搬送しているという解釈になる。なので、パルス列のことを搬送波(キャリア)、搬送波の周波数をキャリア周波数と呼ぶ。

加速するためにインバータの出力正弦波の周波数を上げよう。8ヘルツになった。するとPWM自体の周波数は倍の360Hzとなる。うぃ~ん。モータの発する唸り音の「音程」は上昇する。磁歪音を「キャリア音」とも呼ぶゆえんがここにある。どっちでも良い。電磁音と言っておけばこだわる人にも角が立たない。

さて360HzとかGTOだと動ける限界に近い。それ以上周波数上げるにはどうするか。正弦波を作るパルスの数を下げるのである。27パルス。すると同じ出力正弦波8Hzで216Hz。キャリア音としてはいったん下がる。だが、インバータは加速しているので再び上がる。うお~ん。

以下、素子の動作限界に近づくとパルス数を下げる……を繰り返し、応じて音色が変わって行く。最後は簡単インバータで出てきた1発パルスに行き着く。こういう方法を、出したい正弦波とキャリアが同期していることから「同期式」という。シーメンスのアレはこの性質を利用してドレミファ~にしている。
なお、電車用VVVFは多く出力0.5Hzからスタートするが、こういう低い周波数は、出したい正弦波の位相無視してキャリアを一定にしている。「非同期式」である。

で。

(GTOかと思ったらSiCに更新されてたよ。いいけど)

「唸って」ますわね。すなわち周波数成分が1つじゃない。いろんな音が混じっている。これは矩形波をコイルに与えている所為で、ちょっと書いたフーリエ級数を実際に展開すると答えが出てくる。

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さてこの「音」を喜んでいるのは我々ヲタくらいなもので、世間一般にはウケが悪いらしい。また、音になるということは電力の無駄が発生している。このうち「うるさい」の解決は、IGBTになって動作が速くなり、耳障りな周波数を故意に避けることができるようになったし、キャリア周波数を細かく変更して、見かけ上(聞き分け上?)ランダムにするなどの方策がとられている。

(名鉄4000)

・一時的な存在?「3レベル」式

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(富士時報)

どうしよう。やる?wピク誌は図16。

母線電圧に対して十分な素子耐圧が確保できない場合、単純には素子を直列にすればいい。ただ、直列の2つを「完全に同時に」オンオフしないと、先にオフした方に全ての電圧が掛かることになってぶっ壊れる。しかし完全に同時にオンオフさせるのは、素子の個体差のみならず、駆動回路の特性まで揃える必要があり、現実的には難しい。そこでまず、母線コンデンサを2個直列にして中間電位(NeutralPoint:NP)を作った上で、ぜってーNP以上の電圧が加わらない・加わったらNPに逃がす(クランプするという)構成を取ったのが3レベルインバータである。プラス・マイナス・NPの3つの電圧を持つので3レベル、である。4階建ての上2つのアームの動作で見てみよう。下から1階~4階と呼称する。正弦波の裾野の低い電圧を出すときは、3階の素子だけパタパタする。NPC電位から3階を結ぶダイオードを経由してNPC電圧がモータに出て行く。正弦波のてっぺん近くを出すときは3階と4階を同時にパタパタする。マイナス~NP+NP~プラスの全ての母線電圧がモータコイルに出て行く。ここで、3階素子がパタパタしているとき、4階素子が耐える電圧はNP~プラス間の電圧で良く、3階と4階がパタパタしているとき、全ての電圧が1階+2階の素子に加わるが、直列なので耐えられる。こうなる。ちなみにもし、何らかの理由で1階素子にNP以上の電圧が加わると、1階→NPに接続されているダイオードでその電圧は逃がすことが出来、3階素子の電圧がNP以下に下がると(つまり4階素子にNP以上の電圧が加わりそうになると)、NP→3階に接続されているダイオードでNP電圧に戻される。こうなる。

この方式は素子を守り、よりなめらかに正弦波を近似できる一方、素子は2倍+クランプダイオードも6個追加になって制御も面倒と、デメリットの方が多い。なので、IGBTの高耐圧化が進むと「不必要」になって採用されなくなった。

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(3300V/1200A……1500Vの2倍あるからいいだろ?という設計。これは1アーム分で、紹介した実物と同じく2素子並列)

更には「そもそも高耐圧」なSiC素子の登場により、ますます出番は減る一方……と考えて良いと思う。なお、これをもう少しこじらせた「階調インバータ」という奴が、UPSや太陽光パネルの電力系統連携装置などに使用されている。これは家電用の安価素子を使えるというメリットがある。

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今日はピク誌をなぞった内容じゃないが、これで現在主流のIGBTインバータに追いついた状態。磁界はちゃうわ次回は令和最新型「SiC-MOSFETによるPMSMのベクトル駆動」と、ピク誌で解説なしで使われている用語の説明、で、最終回、の予定w。何が「ちょっと補足」だよスゲーボリュームじゃんかオレ。

(次回・最終回)

2023年4月 8日 (土)

VVVFインバータという奴(その6)

●素子の変遷(つづき)

一通り書くわね。いやムダにならんから。

・逆導通サイリスタ

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これは簡単。こういう奴。そのFWD構造も内蔵したサイリスタ。日本最初のインバータ電車である熊本市電8200が載せたのはこれ。

・GTOサイリスタ

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あー、素子カタログ読め、ということではありません。

GTO:Gate Turn Off

「ターンオフ」というのはサイリスタの消弧のこと。前述した基本的なサイリスタでは、オフさせるためにはカソード>アノードとなるように逆電圧を与える必要があった。これに対してGTOでは、ゲート端子をカソードより電圧を低くして(逆バイアスを掛けると言う)、カソード→ゲートと電流を流す。すると、カタログ図にあるゲートの「P」にある「プラスの電気の運び屋」(ホールという)が、マイナスの電圧に引き寄せられてゲート端子に抜かれる。すると今度は、ホールと合体しようとカソードから入ってきていた電子が行き場を失う→「ホール」と「電子」という電流の担い手がいなくなってサイリスタとして動作が止まる。すなわち、アノードカソードという「サイリスタ全体の電圧」ではなく「ゲートG端子を使ってターンTオフOできる」。GTOと。で、ホール引き抜きは1カ所だけだと時間がかかるし、電車用のサイリスタはデカい円盤なので、隅っこのホールが残ってしまう可能性がある。そこで、円盤上に二重三重の円を描く形でゲートを配置し、花びら状にカソードを配置したのがピク誌図7のイラスト。

これの画期なところは、ゲート→カソードに流せばオンになり、カソード→ゲートに流せばオフになる。オンとオフで扱う動作を逆にするだけで良いこと。転流回路まわりごっそり不要なこと。応じてサイリスタ全体の動作も早くなること。で、ようやく1500V電車の床下に載せて扱えるレベルになり、80~90年代インバータの主役に躍り出たのは皆さんご存じの通り。うぃ~んうぉ~んわぉ~ん。なおGTOGTOと気安く呼ばれるが、GTOサイリスタであって、あくまでサイリスタの一種。

・トランジスタ

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ここまでの記事で何回か出しておいて今更だが一応。正式には下記FETなんかと原理が異なるのでバイポーラトランジスタ。この人は家電品に一杯使われていた物(廃盤)。端子左からエミッタ・コレクタ・ベース。略号がECBなので「えくぼ」なんて覚え方をした。ベースからエミッタに電流を流すと、コレクタからベースのホールめがけて電子が突っ込んできてベースを貫通、エミッタに流れる。ベースの電流をオフにすればコレクタからの電流は止まる。ベース電流でコレクタ電流をコントロールするスイッチ。電子顕微鏡サイズで何億も作り込んだのがICやマイクロコンピュータ。すなわち現代電子技術産業の立役者がトランジスタ。さておく。GTOは「オフするために電流を流す」必要があったが、トランジスタは流すのやめれば良い。かんたん。直ちに大型化して電力制御に用いる試みがなされた。工場なんかで使う産業用インバータ、

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(こんなの。宣伝したやったぞ金よこせ三菱電機)

はこれで登場した。が、大きな電流を流すトランジスタは、内部損失が大きいし、制御のベース電流も多く流す必要があって、そのための回路や放熱に工夫を要した。

・MOS-FET

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先に紹介した照明基板に載ってるこいつらがそう。Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor酸化金属皮膜電界効果トランジスタ……ってその意味はどうでもいいです。韻を踏んでる発音をお楽しみください。

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こいつの特徴はゲート-ソース間に「電圧を与える」(≒充電する)だけでドレイン-ソース間がオンすること。充電されたのを放電すればオフになる。またこのメカニズムと、電流の運び屋が電子だけ(逆にホールだけのものもある)なので動作が速い。ただ、高耐圧と大電流化の両立が難しい。
※上記バイポーラ(ホールと電子)トランジスタに対してこの電界効果トランジスタは電子かホールのどっちか一方で動くので、ユニポーラトランジスタと呼ぶ、こともあるが教科書にそう書いてあるだけで誰も使わないw

・IGBT

トランジスタは高耐圧大電流用に作れるんだけど大きい奴は動作が遅くなってベース電流の回路も大きくなって……

MOS-FETの制御性とスピードで高耐圧大電流に作れればなぁ……

という切歯扼腕があって。「じゃぁ、MOS-FETでトランジスタオンオフすりゃいいじゃん」となって、

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(サンケン電気のサイトより)

「等価回路」の方を見ていただきたい。MOS-FETのゲートーソースに電圧与えてこいつをオンにすると、トランジスタのコレクタからベースを通ってMOS-FETに流れる回路が出来る。ベース電流が流れたのでトランジスタはオンになる。MOS-FETのオンでベース電流をずっと流し続ける事が出来る。MOS-FETをオフすればベース電流も切れるのでトランジスタ部分はオフする。やがて最初から両者一体化された新種のトランジスタが生産された。コレクタと絶縁されたゲートを持つバイポーラトランジスタ。すなわちInsulated Gate Bipolar Transistor:IGBTの登場である。現下、主流の素子で、動作周波数も201系サイリスタの253Hzから通常2kHz。上記産業用だと14.5kHzに設定できたりする。

さて本記事のハイライト。ピク誌図9のBにあるようなIGBTモジュール。中身をぱかりんちょ(おいおい)

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これ、ピク誌図2の例えば「SU1,SU2」など、プラス側マイナス側各1アーム入り「1相分」のセット。大電流用でIGBTとFWDと2素子並列に入っている。白い四角い部分が「シリコン半導体」そのもの。光の当て方により虹色にキラキラ光る。右側2素子こっち向いてる素子がIGBTで真ん中の短冊状の部分(セルという)から1本手前に引き出されているが、これがゲート。ワイヤが沢山生えているのがエミッタ。左端のセルから一本手前に戻っている。これがゲート回路に戻る。コレクタは裏面。右手素子の奥側にあるのが相棒のFWD。左右に沢山ワイヤ生えてて、これが左側素子のコレクター、小ぶりなFWDのアノードーそして右側素子のコレクタ(と裏側で接続されているフレーム)に繋がっている。左素子がインバータ用プラス電源(母線:ぼせんという)側のアーム、右素子がマイナス用アーム、となる。

以上インバータ用パワー半導体素子のオールスターキャスト。なにIGBTどっから持ってきたか?大学生時分に研究室に転がってたのをかっぱらったw

SiCは後で書くわ。とりあえずピク誌「IGBT」の説明まで完了。

(つづく)

2023年4月 7日 (金)

VVVFインバータという奴(その5)

・素子の変遷

インバータの出現には高速なスイッチが必要で、半導体技術の進歩でようやく可能になったと書いたが、その半導体の種類による「可能なことと不可能なこと」と「不可能を克服するための工夫」の存在が、インバータの理解や変遷をやや難しくしている。この辺単純でビーっと一本調子のチョッパと異なる。一方でその工夫が運転に伴い電動機から発せられる独特の音(電磁音、磁歪(じわい)音、キャリア音)の変化に繋がっており、音鉄たちに新たな地平を提供したことは書くまでもないだろう。素子の変遷と時々の工夫、技術者達の努力を知っておくのは悪くないかと。

サイリスタ

SCR(Silicon Controlled Rectifier)として開発された素子で、トランジスタに似た動作、ということで登録された商標が標準名称になったものだ。

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構造はこうなっている。2つのトランジスタを直列に重ねたのと同じ構成。アノードの電圧がカソードより高いとき、ゲートからカソードへ電流を少し流すと、NPNで構成されたトランジスタがオンになる。すると、このトランジスタは、上のPNPで構成されたトランジスタをオンにする。すると、PNPのトランジスタを通ってきた電流はゲートからカソードへ流れて行く……すなわち、自分の動作で自分をオンの状態で保持する。エンジンが自分の動力で燃料ポンプを動かすのと同じである。つまりゲートからカソードへパルス電流を1発流すだけでオンのままになる。こうなる。なお、オフになる条件はカソードの電圧をアノードより高くする。

これは元々交流回路に使う。

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上のような正弦波交流に対し、サイリスタのゲートへ図のような角度(位相と呼ぶ。位相が90度とか言う)で電流を流すと、サイリスタはオンして(円弧の特定のポイントで点火するので点弧という)正弦波が流れ出す。そのうち交流だからプラスとマイナスがひっくり返るので、そのポイント(位相180度や360度。ゼロクロスと呼ぶ)でカソードの電圧がアノードより高くなり、サイリスタはオフ。すると次のゲートパルスでまた点弧して……となる。こうすると交流から必要な電力を点弧位相を制御するだけで取り出せることが分かるだろう。この交流にサイリスタを使った電力制御を「サイリスタ位相制御」という。思い当たる用語でござろう。そう、ED75や811系はこれで走っているわけだ。
(点弧動作のことを英語ではFirelingと呼ぶ。着火そのもの。紹介した方法はゲートからカソードへ抜くのでカソードファイアとかいう。点弧用のちょろっと流す電流をトリガーTrigger引き金電流と呼ぶ。文字通り引き金だわ)

さて、交流だとプラスマイナスの逆転で「勝手にオフになる」のだが、直流はプラスマイナス固定であるから、「無理矢理オフ」する工夫が必要になる。流れを反転させるので「転流回路」と呼ぶ。ピク誌図6。わかる?不親切だわこれ。

①メインのサイリスタがオン。同時に右向いてるダイオード→コイル→コンデンサのルートでも電流が流れ、コンデンサが充電される。ここはコイル-コンデンサ直列の共振回路になっているので、充電が終わると逆流を開始しようとするが、その右向いてるダイオードに阻止され、この逆流は成立せず、コンデンサには書いてあるプラス、マイナスの極性で充電されたまま、いったん動作は止まる。なお、ダイオードは「アノードの電圧がカソードより高い」時だけその方向に電流を流す。その「電流を流し始めるタイミング」を自由に変えられるのがサイリスタというわけ。

②メインのサイリスタをオフする(消弧)するとき、補助サイリスタをオンにしてやる。すると右向きダイオードに阻止されていたコンデンサからの逆流が、この補助サイリスタを通して流れ、ぐるっと回って同じコンデンサに逆向きに充電される。つまり、メイン・補助双方のサイリスタのカソード側の方が、アノード側より電圧が高くなった。

③共振回路なので、再度逆流を始める。メイン・補助のサイリスタを消弧させつつ、メインのサイリスタに並列のダイオード、右向きのダイオードを通り、①の充電状態へ戻って行く。

ようやくサイリスタがオフになった(転流回路の方式はいっぱいある。これは一例)。で、以上の動作から分かるように、点弧は一発だが、消弧動作はすごくもっさりになる。メインのサイリスタがデカいと、応じて転流回路もデカい。また制御面でも、オンするとき、オフするとき、双方でサイリスタオン信号を出してやる必要がある。「デカくて遅くて面倒くさい」わけです。で、制御しやすい、より小さいサイリスタの開発が始まる……のだが、長くなりすぎるので今回はここまで。ただし、次の説明をしておきたい。ピク誌これの説明がないので。

・環流ダイオード

強力電磁石の実験で「バチンとなって感電」と書いた。電車のモータなんてバカでかいコイルにバカでかい電流を流しているのだから、いくらサイリスタもっさりとは言え、微分項di/dtのdiがバカでかいので恐るべき電圧が発生する……危惧がある。これを防止するには「スイッチを切っても、モータのコイルには同じ向きに電流が流れるように処理すれば良い」となる。

ピク誌図2をご覧頂きたい。図ではスイッチSU1がオンで、直流電源プラスからU相コイル-V相コイルに流れてSV2を通って直流電源マイナスに戻っている。いま、SU1をオフにしたとする。モータコイルには引き続き同じ向きの電流を流したい。どうするか、SU1の下側のアーム、SU…あら?SU2の誤記だろこれ……をオンにする。すると、上記マイナスに戻ってきた電流が再度U相コイルへ流れて行く。

ではわざわざSU2をオンにする制御回路を用意するのか。答えは「要らない」。その代わりダイオードを逆向きに(直流電源のマイナス側にアノード、プラス側にカソードが来るように)、SU2に最初から並列に付けておく。こうするとSU1のオフで行き場を失った電流が勝手にダイオードをオンにして流れ続けてくれる。この動作を環流といい、これ専用のダイオードを環流ダイオード、英語でFreeWheelingDiode略してFWDと呼ぶ。全てのスイッチが同じ。すなわち、インバータ用のスイッチセット「アーム」は、常に主スイッチ素子とこのFWDがワンセットであることを意味する。これで図6の転流回路をもう一度ご覧頂きたい。主素子と逆向きのダイオードが並列に付いており、消弧電流がここを流れている。つまりこいつFWD兼、転流用ダイオードというわけ。なおもちろん、チョッパ回路でも環流ダイオードは付いている。

つづく

※FWDなのでフライホイールflywheelダイオードと誤認する方が時々おられる。状態維持という役割が似ているので更に勘違いしやすい。しかしフライホイールはあくまで回転体の運動エネルギを維持する円盤円筒の事なのでゴッチャにしないように。テストだとバツです。

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2023年4月 6日 (木)

VVVFインバータという奴(その4)

・電圧を変化させる方法

電流型?いや令和VVVFほぼほぼ電圧型だし、「電圧を変える」って説明で電流型を先に持ってきたら混乱するだろ。

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「正弦波の電圧を変える」というのは↑こういうことを意味する。チョッパの説明で「オンとオフの時間を変更して、平均の電圧を得る」と説明したが、じゃぁ最初に説明した矩形波インバータでオン時間を半分にしてみようか。

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何か違う。そう、正弦波の電圧変化カーブに合わせて、少しオン、長くオフ→次はもう少しオン……と、変化させて、この山なりカーブを平均電圧の繰り返しで作ってやる必要があるのだ。

作図が面倒くさいので名大のシラバスからパクってくる(おいおい)。

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ソース

オンオフを繰り返して平均値を結んだ線が赤い線=インバータ装置で得られる正弦波である。このパクリ図をピク誌図4の回路図と比較すると、正弦波の上の方(電圧がプラス)に出ているパルスがスイッチS1S4のオンオフ、下側がS2S3のオンオフに相当する。

このパルスの幅を変えて所望の電圧を近似的に得る方法を、パルス幅変調方式(PWM=PulseWiseModulation)という。おなじみの用語、出てきましたね。

・周波数を変化させる方法

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周波数を変える、というのはこういうことを意味する(上から下へ並べてある)。忙しい波の方が周波数が高い=モータの回転数が高い=電車としてはスピードが速い。
従って、周波数が高くなるに従い、オンする時間=パルスの幅を広げるタイミングも、再度狭めて行くタイミングも変えて行く必要があることを意味する。以上まで揃って、ピク誌図4の①~③の説明になる。「電圧と周波数を同時に変える」のは忙しいのだw
(※図の横の式の最後に付いてる+8とかいうのはこの作図ツールのどこに波形を置くかという指定なので無視して)

・電流型?

直流からスイッチパタパタPWMで交流を作るわけだが、大本の直流電源の電圧が変わってしまうと、PWMで出てくる電圧も変わってしまうことに気づくだろう。でもって、運転席の後ろにかぶりついて架線電圧計を見ていると(そんな奴あまり居ないと思うがw)、公称直流1500Vと言いつつ、1300から1700あたりまでフラフラしていることに気づくはずだ。
このふらつきを嫌って、インバータの電源電圧を一定にするべく更にチョッパを突っ込んであるのが西日本207系である。主回路構成はピク誌図3の「電流型」と一緒。

電圧型は上に書いたように周波数と電圧と両方を考慮しながらパタパタやるので忙しい=初期のインバータ装置では、制御するマイクロコンピュータもスイッチの仕事を請け負う半導体素子も、この忙しさに追いつけなかった。そこで、電圧は全部チョッパにやらせて、インバータは既出の矩形波かんたんインバータ動作にしているのが電流型(インバータ部の6つのスイッチは「電流を流すか流さないか」だけに使用しているの意味)である。ただ、この方式だと、チョッパ用とインバータ用と、両方ともモータ電流に耐えるデカい(=高価な)スイッチ素子が必要で、応じてデカくなるので、コンピュータで架線電圧をチェックしながらVVVFのパルス幅をいじれるようになると、鉄道車両用からは消えていった。

はい、以上で「VVVFインバータ」がナニやってるかの説明になります。これでもう一度ピク誌の1.および2.を読んでみてください。何言ってるか分かるはずです。そして、こういうのがある程度ニヨニヨしながら見られるはずです。

つづく

2023年4月 5日 (水)

VVVFインバータという奴(その3)

・電圧と周波数を変化させる必要性

この節の書き方はいささか同意しかねる。直感的な理解もしづらい。まず「誘導電動機」の特性を書く方が先じゃないのか。

小学校の実験で、トイレットペーパーの芯のような空洞の円筒に大量のエナメル線を巻いてコイルを作り、中に棒磁石をスコスコして「誘導起電力による発電」をやった方は多いと思われる。この実験は、コイルを固定して磁石を動かしているが、別に磁石を固定してコイルの側を動かしても結果は変わらない。重要なのは「電線=導体のあるところで磁力を変化させると、導体に電流が発生する」(ファラデーの電磁誘導の法則)ということだ。ピク誌は少し飛ばして図17、誘導電動機の模式図をご覧頂きたい。コイル3つあって120度ずつ並べて向かい合わせ、その中に「かご形導体」を入れてある。3つのコイルに前述の三相交流の正弦波を順番に与えることは想像が出来るであろう。でもって、その結果、「コイルによる磁力変化」で「かご形導体」に電流が流れる、ことも想像できるであろう。

で。

かご形導体に発生した電流は、今度はそれ自身磁力を発生する。右手をグッジョブ👍 の形に作っていただきたい。親指の向きに電流が流れると、残り4本の指の向きのように、電線の周りをぐるぐる回るように磁力線が発生する(右ねじの法則)。で、三相交流がコイルに流れることによる磁力と、かご形導体に右ねじの法則で生じた磁力と、「磁力と磁力」になったことが分かるだろう。ざっくり、この双方の磁力による吸引反発でかご形導体がぐるぐる回り出す。電磁「誘導」の法則に則って回転する「電動機」で「誘導電動機」である。なお最近流行のPMSM……永久磁石同期電動機は、最初から回転子が永久磁石になっているもの、とすれば、類例として理解しやすいし、「導体に磁力を発生させる必要性が無い=省エネ」ということにも気づかれるであろう。ちなみに誘導電動機の原理を説明する実験は「アラゴの円盤実験」として知られる。

で。本質に入りますよ。

電流と磁力の相互作用って「変化が急であれば急であるほど」得られる作用が大きいのですよ。小学校で太い釘にエナメル線まきまきしてコイルを作り、電磁石の実験をしたと思います。このとき、「超強力な磁石」を作ろうと思い立ち、電池をいくつも直列に繋いで、スイッチを、オン。

ばちん!

「うぎゃっ!」
「いって~~」
「やべー切れ切れ」

ばちん!

「ぎゃ~~!」
「火花出た火花!」

何が起こったか?

スイッチをオンにする→コイルに急に磁力が発生する→その磁力でコイルの巻き線に電流が流れて(上記かご形導体と一緒)電圧が発生する→その電圧が非常な高電圧で感電した(ついでに言うと急激な磁力変化でコイルが振動して音を出した)。こうなったのです。

式で書くとこう。

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Lはコイルのインダクタンスでぶっちゃけ巻き数に比例します。分数は微分で……いやいや読むのやめないでw……「電流の変化の大きさ」を示します。小学校のスイッチなんか鉄板同士を指で接触させるものですわね。逆に言うと一瞬で電流が流れたり切れたりする。電池マシマシで電流が大きい/一瞬でオンオフ→eコイルに発生する電圧がデカい。こうなるわけです。

戻って。

「三相交流が順番にコイルに流れることによる『回転する磁場』」の回転数が上がると言うことは、磁場の変化速度が上がる……微分の部分が大きくなることを意味する。応じて「かご形導体」に発生する電流・磁力も大きくなり、三相交流の周波数に少し遅れて追従する。「遅れる」部分を「すべり」。回転数の差を「すべり周波数」と呼ぶ。これより、三相交流の周波数を変化させることで、モータの回転数が変わる。周波数を変化させる必要性=バリアブルフリークェンシーVariableFrequencyに到達。

で。

コイルに突っ込む三相交流の電圧を高くすると、磁力が強くなってかご形導体に現れる電流も強くなって……となるのは容易に想像が付くであろう。磁力すなわち回転力トルクである。ここにトルクは電圧で制御できる=バリアブルボルテージVariableVoltageに到達。

「ん?ということはモータの回転数とトルクを別々に制御できる?」

気づかれた方多かろう。誘導電動機をVVVF運転する最大のメリットにして、大きな起動トルクと高速回転が必要になる鉄道への利用がジャストフィットしている理由がここにある。能書き記事の式。

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E=与える電圧、N=コイルの巻き数、2πn・cos()←まるごとsin(2πnt)の微分=周波数

・逆起電力の話

さてピク誌では「逆起電力に対抗して」電圧が必要になるような書き方になっている。逆起電力が勝ってモータから電圧が逆に出てくる状態……すなわち「発電機」になっているのが何のことは無い回生モードである。ただ、これに打ち勝つというよりトルク制御の目的で電圧をいじるのが主目的と説明されることが多い。なお当然、モータ回転数より三相交流の周波数を下げ、コイルの印加電圧も下げることで意図的な発電機運転=回生ブレーキ力の制御を行うことが出来る。

以上ようやくVVVFで誘導機が回転するまで来ました。ではVVVF運転するための回路構成と動作はどうなっているのでしょう。

(註:Vf比一定制御?ありゃVVVF制御の恩恵として定トルク領域が得られるぞって結果論じゃん。仕組みと概念の説明で触れる必要は無いと思うわ)

つづく

2023年4月 4日 (火)

VVVFインバータという奴(その2)

では「鉄道ピクトリアルNo.1011」を教科書に、補足を入れる形でブツクサ書いて行きます。図版等は基本的に同紙を参照してもらって。

・インバータと言う語とその目的

invert+er。「反転」。これは「交流から直流に変換する装置」が先に出来て「変換器」(convert+er=converter:コンバータ)と名付けられたため、後から出来た「直流から交流に変換する装置」は、その逆の動作ということで反転装置・インバータと呼ばれるようになった、という経緯による。なお、最初の交流直流変換装置はスイッチがモータの回転で順番にカチカチ切り替わって行くというシロモノで、ゆっくり切り替えて行く必要があった。同好諸氏におかれてはスイス等欧州の交流電化で「帯分数表記16(2/3)Hz」(50Hzの1/3)という周波数の存在をご存じの向きもあると思うが、これはその「回転式変流器」をゆっくり回すために考え出された。

この人もそう。

・インバータの基本

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最も身近な交流は家庭のコンセントである。ここにオシロスコープを突っ込むとこういう波形が観測できる。三角関数正弦波・サインカーブという奴で、交流電圧波形というとこれのイメージがある。が、「交流で動く機械」にとって、正弦波かどうかは実は余り問題にならない。プラスとマイナスが決まった回数逆になるならそれで交流の条件を満たす。ピク誌の図1をご覧頂きたい。スイッチS1と同S4を同時にオンにすると、「交流」と書いたところには、上の端子に+、下の端子にーが取り出せる。次にS1,S4をオフにし、S2,S3をオンにすると、「交流」部分には逆の電圧が出てくる。出てくる電圧は直角直角のギザギザ波形

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であるが、これでもちゃんと交流の電気として通用する(※)。こういうのを「矩形波(くけいは)インバータ」と呼ぶ。最も簡単なインバータのひとつで、「車の中で家電製品を使おう」みたいな安いインバータや、同好諸氏には「マイネ40が当初付けてた蛍光灯のトランジスタインバータ」がこれだと書いておこうか。なお、鉄道用でもGTO素子を使った初期のインバータでは、最高運転周波数付近はサインカーブに近づけようとせずこれだった(1パルスモード)。また、家電用でも20kHz位で動くIHクッキングヒータや、60~100kHz位で動く照明用インバータなどはこのタイプのインバータである。

※この矩形波を「フーリエ級数展開」という数学的処理を施した数式で表現すると、多数のサインカーブの集合体として記述できる。そのうちの一番目立つ正弦波の成分で駆動されていると解釈される

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(照明用のインバータ回路)

・三相用インバータ

鉄道車両の駆動用に使われているインバータで作る交流は三相交流である。

ピク誌図2をご覧頂きたいが、正弦波交流が3つ順繰りに流れてくる。3つの電線で3つの交流電源を少しずらして流している。これが三相交流である。モータに流すと順繰りに磁力が発生して回りそうな気がするだろう。そしてその通り交流電源=インバータ装置は3つ必要になる。三相交流の電源と負荷の関係を図示すると一般にこうなる。

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「~」のついたマークが交流電源。「Z」は誘導電動機に入っているコイルと考えて頂ければよい。すると「~」の部分に上記4つスイッチのインバータがそれぞれ必要なように思えるが、3つの電源は時間的に少しずつずれながらプラスになったりマイナスになったりするので、スイッチは半分ずつ共用でき(1つの電源がプラスに繋がっているとき、他の2つはマイナスに繋ぐ)、2個ずつ3セット、6組で三相交流を得ることが出来る。これでめでたくピク誌図2のスイッチ6個の回路図に到達できる。で、スイッチのことを「アーム(arm:腕)」と呼ぶのだが、これは冒頭に書いた「機械スイッチ式コンバータ」で、スイッチが動く有様が「腕を動かしている」ように見えたからだ……という説をここでは主張しておこう。そして、「機械スイッチが付いて来られるスピードのために、周波数の低い交流を作ることが必要だった」という事実をひっくり返すと、「好きな周波数の交流が得られるインバータ装置を作るには、高速なスイッチが必要」となり、実験的には真空管スイッチ、本格的には半導体スイッチの出現までの長い時間がかかったのである。

(つづく)

(註:三相の中性点の話はスイッチの実動作の方が直感的に分かりやすいので触れなかった)

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