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手のひら端末でも読めそうな「夢見るようなファンタジーで、命を守る」お話を、ぼちぼちリストして行きます。

最近の更新

【魔法少女レムリアシリーズ】「テレパスの敗北」(10/20:隔週水曜更新)

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【理絵子の夜話】「サイキックアクション」(10/16:隔週土曜更新)

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 お話カタログ

●連載タイプ(掟破りの携帯で長編)
魔法少女レムリアのお話(現在15編)
超感覚学級委員理絵子の夜話(現在10編)

●長編
「天使のアルバイト」
天使が、人に近い属性を備える理由、そして、だからこその過ち。その結果。
(目次

●短編集
大人向けの童話(現在10編)
恋の小話(現在13編)
妖精エウリーの小さなお話(現在22編)
(分類不能)「蟷螂の斧」

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色んな切り口色んな長さ。他の「ココログ小説」の方々の物語。「へぇ、こういうのもアリだな」そんな発見をどうぞ!

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -24-

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「タクシーだ。親父だろ」
 背の高い進少年が垣根越しを見通して言い、程なくタクシーであろうクルマは走り去った。
 足音が近づき、垣根の向こうに人の姿。
「お、え?」
 縁側の3人は理論上あり得ない組み合わせであり、驚愕しか生まない。
「おばあさまはこちらにお着きになっていました。私は進君のクラスメートで相原姫子と申します」
「ああ、ああ聞いてます。この度は巻き込んでしまったようで本当に申し訳ない。母さんよう、冗談じゃないぜ?どれだけ……」
 彼女は怒気孕む父殿の目を見、手のひらを掲げて制した。
「悪いと思ってるよ……ごめんな……手間ばかりかけてよ。ふと、おれだけこんな便利なところで至れり尽くせりでいいんだろうかと思ってしまってよ」
 手間ばかり。この語に彼女は引っかかった。
 すると進少年。
「ばあちゃん、居づらかったか?」
 祖母殿は目線を外し、少し置いて。
「思っちまうんだよ。おれだけご馳走食べて、便利な生活して。じいさんに申し訳ないなって。お前らにも気を使わせてしまってな」
 炊事・洗濯……昭和的主婦業を祖母殿は全てこなしてきた。それが東京に行って全て上げ膳据え膳。
「進君」
「は、はい」
 彼女に名前で呼ばれてドギマギ敬語。
「普段、お家での家事はどなたが?立ち入ったことを訊くけど」
「かーちゃん」
「おばあさまが参加できるとすれば?」
 すると、人が増えたこともあり、自動食器洗い機、ロボット掃除機を導入したと答えた。後は洗濯だが、物干しは2階。よって、
「ばあちゃんに階段は怖いなって」
「お料理は」
 すると父君。
「妻が本見てカロリーバランスやら考えて作ってますわ……って、母さんすることねぇな。え?ひょっとしてそういうことか?」
 彼女は、祖母殿がうつむいてこちらを見ていないことを確認してから、小さく、父君に頷いて見せた。
「私、グループホームとか顔を出しますが」
 これに祖母殿は顔を上げた。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -18-

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騙されるか、彼は一瞬そう思ったようである。が、神性を備えた異国の娘に抱きしめられて彼は一介の“男”に戻った。
 “憑きもの”が剥がれる。
〈主(あるじ)よ、ここは我が……〉
 声と共に、理絵子の身の中から現れて貫く漆黒の長剣一閃。
 魔剣クリュサオールであった。黒い人型のようなものが中空で串刺しにされている。
〈美砂殿。我が力援用されよ。汝にしか能わぬ〉
 それは、美砂だけが、条件が整った時のみ、可能な力の発露を示した。
 瞬間移動テレポーテーション。但し彼女のそれは所要の目的地に送るものではない。
 時空を越えたいずこかへ投擲する。
 さらば……クリュサオールの感情と共に、パン!という、風船が割れたような破裂音がした。
 腕の中が脱力する。等身大の人形のように、にわかに筋骨が力を失い、グニャグニャになり、どころか皮膚が裂けどろどろとした内容物があふれ出し液化して広がり。
 骨と、“人体の70%は水分”を彷彿させる汚穢な染みの広がった姿に変わった。
 獅子王と、魔剣の意識が追跡できない。
「ゾンビだね」
 美砂が一言。理絵子は思わず我と我が身を見回した。それの残滓が付着してはいないだろうか……気にするなと言う方がムリ。
「整理していいでしょうか」
 登与が言った。

・地球在来種の魔族でもなく、外来のそれでもなく、人類が発達してくる中で獲得した魔性
・宗教や正義の名の下に精神肉体両面から攻撃をしてくる。ターゲットは“日本”

「国家国民?」
「恐らく。人類が獲得した魔性にとって、“和をもって貴しと成す”日本の在り方は気に入らない。征服者というスタンスが得られなくなるし、付随する人間としてのあらゆる快楽を欲しいままにする権力も存在しない」

(次回・最終回)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -23-

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 電源を入れるとクラシック音楽。すなわちこの地域の放送周波数に合わせたまま。
「ああ、済まないね……」
 祖母殿はラジオを傍らにコトリと置いた。
「まぁ、お二人ともここへ来ておくれ」
 ラジオを挟んで着座を促される。
「進、ほら」
「お、おう」
 彼を促し、率先して座る。
 祖母殿が口を開く。
「まずは……いきなり飛び出して済まんな。いたたまれなくなってな。ほんでこご来だはいいけど携帯電話があるわけでなし、ここの電話も止めたでね。連絡しようがなくてよ」
「常磐線から来られたとか」
「海へ行げでねっがらな。新幹線じゃダメだ」
 件の原子力発電所は太平洋側にある。当然、避けたくなる。
 うぐいすの鳴き声。
「わぁ、きれいな声。初めて聞いた」
 彼女の感想に祖母殿は微笑んだ。
「おめさん、進が初めで此処(ごご)で春告げ鳥聞いた時と同じだな」
「え?」
「そうなんですか?」
 二人は驚いて祖母殿を見た。春告げ鳥はウグイスの別名。
「ああ、じいさんが庭いじりしてて驚かしちゃなんねがらってハサミ持ったまま固まってよ。人形みだいだって……ああ、これは進じゃねがったか。彰(あきら)か」
 平沢進の父君であると彼女は察した。
 と、突如祖母殿はしょげたようにうつむいた。
「ごめんな。オレばっか進と遊んでよ。挙句に厄介になってまっでよ。じいさんに申し訳なくてよ」
 ラジオに向かって。
「それでここへ……」
「迷惑かけてすまんな。クラスメートちゅうこどは学校抜けて来ただが?しかしめんこい子だなおめさんは」
「人命にかかわる事態かも、という第一報でした。なら、天下御免ですよ……めんこい?」
 地面にたたきつける日本の古いカードゲームの“めんこ”なら知っているが。
「か、かわいい、って意味だよ」
 説明する平沢進の耳まで真っ赤。
「あら。恐れ入ります」
 彼女が応じると、ウグイスが唐突に飛び去った。まるで逃げるように。すなわち。
 程なく、クルマが止まった。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -17-

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「違う。こいつは……」
 その生涯を殆ど戦乱の中で過ごし、追って獅子王と呼ばれた男であった。
 むろん英雄である、いわゆる“十字軍”を派遣した側では。
 そこで登与がロザリオを示してみせる。我々は敵対する者ではない。しかし、
〈偽なり異邦人〉
 その反応は彼女らの外見“人種”に起因する情動とすぐに判った。
 アングロサクソンキリスト教徒にあらざれば人にあらず。
 キリスト教原理主義と結びついた人種差別。
「霊をしてなお肌の色を価値と見る哀れで笑止なる者よ、去ね(いね)」
 登与はロザリオを突きつけるようにし、言った。
 対する返事はウォー・クライ。すなわち戦士が挑みかかるときに放つ咆哮。
 獅子王と称された男の手に剣が“沸いた”。
 何か途方も無い力がその剣には宿っている。それは誤謬を誤魔化すための信念を十重二十重にまとった、

 いわば、呪詛の集合体。

 剣が登与へ向け振り下ろされる。だが、彼女は微動だにしなかった。
 ガラスが割れるに似た、あるいは鍛冶の槌が振り下ろされるに似た、鋭い金属音。擬音でガチンとでも書くか。
「邪なる者破れたり」
 それは元々、オカルト雑誌の裏表紙に載っていた“魔力を備えたロザリオ”を買った物と彼女に聞いた。
 それこそ邪な存在であるはずだが、今ここに、3800円のクロームメッキの十字は淡い金色に輝き、邪悪な霊剣を受け止めているのであった。
 果たして驚愕か、獅子王は動作を止めた。
 理絵子に示唆が下る。その刹那に自分のなすべきことは一つ。
 素手で剣をなぎ払う。横から叩けば傷も付かない。勇者の大剣は吹っ飛ばされてガシャンガシャンと二転三転。
 油断というか、意表を突かれたのであろう。小柄な東洋の娘に必殺技を無効化され、縋る術なし。
 次は何をされるのか……そんな目で怯えるような獅子王を、
 理絵子は抱きしめる。
 意図して意表を突くために。
「敵対と戦闘に生きた貴殿を慰謝する者が無いなどあってはならぬこと」
 自分を超能力者と知らぬでも、巫女属性の持ち主だと言うクラスメートは多い。
 その属性こそは、今ここで発揮されるべき。
「愛し愛されることすら政略とされた貴殿の生涯に永久の安らぎを」

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -22-

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「扉を開きます」
 エレベータに乗り、着いた。一連の挙動は感覚的にはそれに近い。
 気密が開かれ、にわかに外界の音が入ってくる。鳥と虫の声。
 扉の向こうに姿を現す緑の間の道。
 畑に咲く白い花。トタン屋根の農器具小屋。
 ひょいと飛び降りる。“ドアが閉じて開いた結果”をぽかんと見ている平沢進を促して下ろす。
「見覚えある?」
 一応尋ねる。
「お、おう」
「良かった」
 なら、船は帰してもよかろう。帆船なので帆を広げて滑空できる。イヤホンでピンを送ると、周囲に人目が無いと確認したか、帆船は文字通り忽然と姿を現し、その帆を広げ、翼のように水平になびかせ、丘の上から風に乗って飛び立った。そして風の届かないところで主推進システムに切り替え、超高速で飛び去る。
 その動きを身体動かして見つめる平沢進は声も出ない。
“思い”が届く。しかも、この足下の大地から。
 おばあちゃんは、この里山を遊びまわる進少年を、夫婦で見守りたかった。
 近所にある複数の大きな桜の木を、肩車して見せたかった。
「ばあちゃん家(ち)、行けばいいかな」
「うん」
 坂道を下りて集落へ。果樹(柿だが、欧州育ちの彼女はそれだという知識がない)が枝を広げる平屋建てのお宅。
 垣根の向こう、縁側にその高齢女性は腰を下ろしていた。
「ばあちゃん」
 進少年の声にゆるりと振り向き、次いで目を見開く。
「進かえ?」
「そう。あー見つかってよかった。親父は?こっちへ向かってると思うけど」
「そちらは?」
 彼女のこと。
「相原姫子と申します。進君のクラスメートです」
「ばあちゃん探すの手伝ってもらったんだぜ」
 すると……祖母殿は温和な表情でゆっくり頷いた。
「ちょ……」
 散々探したのに、ということであろう。声を荒げようとする進少年の左手に彼女はそっと触れ、その先を制した。
「差し出がましいことをいたしまして申し訳ありません。人探しにツテがありまして申し出た次第です。こちら……手がかりとして借用したもの。お返しいたします」
 トランジスタラジオ。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -16-

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 念動を駆使したと知る。“煙”が全て凍り付く。
 次いで雨となって降り注ぐ。
「どうやら、あらゆる物事に挑戦が仕込まれるようだね」
 美砂は言った。意識と目線を感じる。闇の中から自分たちを見ている。
 味方もある。
〈そばにいますぜ〉
 とは件の巨大クモである。
「来る」
 気づいた瞬間後ろに刀抱えた男がいる。以下、実際には刹那の認識であるが、そこで判ったことを細かく書くとこう。まず、男は戦国時代に近隣の山城で戦死した武士の地縛であり、敵方血縁者に取り憑かずにおけない。
 その戦は凄絶な殲滅戦で、城に残ったのは女子供ばかりであったが、皆殺しにされたという。
 応じた仕返しを女子供に。
 以上判った瞬間には“女子供”である彼女らに対し、侍の刀が振り下ろされるところであった。
 対する理絵子の反応は。
 真剣白刃取り。
 侍が驚愕で凝固した刹那、美砂が後を受け継ぐ。刀は見えざる力でぐにゃりとなり、反動で侍がよろけ、理絵子が手を離した瞬間に赤熱して溶解する。
 遠方より“槍”が飛来。
 否、フッと中空で姿を消す。次に現れるまでやはり一瞬であったが、その間にこれから起こる出来事を彼女らは察知した。
 登与がロザリオ片手に口走る魔法のフレーズ。
 そして日に向かってかざした手のひらに槍の先端が弾かれて甲高い音を立てる。こちらは弥生時代の縄張り争いであるらしい。
 そんな者が今後も次々沸くのか?
 否、一時的に“そういうもの”を遮蔽しておくシールドが外れただけ。
 なら、直せば良い。ただ、自分たちが維持する次元の存在ではない。
「キリが無い」
 理絵子は印契を切った。のうまくさまんだばさらだんかん。後は超常の皆様に委ねます。
 爆風の如き物が彼女らを中心に生じて吹き広がる。結界が生成され、封印が成された。
「終わった?おうち帰れる?」
 これは美砂の弁。勿論、そうは簡単に問屋は卸さないというニュアンスを含む。
〈何か来ますぜ〉
 クモが言い、巨体を具象化させ、彼女らの傍らに参じた。
「……アレクサンダー」
「まさか」
 それが正なら、アルヴィトが破れたことを示唆するが。

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -21-

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 青い空の下、再度衛星携帯のアンテナを伸ばし、短縮ダイヤルでコール。相手が出た。
「Hi,It's Lemuria.Please pick up me and friend,with use cloaking.」
 あとは待つだけ。1分もかからない。
「あの……」
「暴風が吹くから顔を腕で覆ってください」
 彼女は言いながら、ウェストポーチをごそごそしてワイヤレスイヤホン近似の機械を耳に挿した。
「来ます」
 ほどなく一陣の風が上空より吹き降りて広がり、順次風速が上がって轟轟たる暴風になった。
 園内を歩いていた人々から小さな悲鳴、走り逃げる人も。すいません。
“なにか”が二人の前に舞い降りる。ただその“なにか”は重量と大きさの感覚は有するが、目には見えない。
 風が収まって木の幹に見える部位に、黒い四角い領域が出現した。
 cloaking(クローキング)。いわゆる光学迷彩である。実際には二人の前に空飛ぶ帆船が着陸しており、見えているのは“船がいなければ見えるはず”の光景。
「どうぞ」
 彼女は黒い四角い領域……舷側通路を彼に示した。
「見られたくないので急いで欲しい」
「お、おう」
 持ち前の運動神経を発揮してヒョイと飛び乗る。
 彼女は昇降スロープを出そうとしたが、平沢が腕を伸ばして引っ張り上げてくれた。
「ありがと」
 ウィンクしてみせると彼は見て判るほど頬を赤くし、己の手のひらを見つめた。
「福島県三春町、お願いします。INS使うほどは急いでいません」
 中は白く照明されており、目が慣れてくると、縦に長い6角形断面の空間である。
 スライド式の舷側昇降ドアが閉まり、上昇に伴って下方へ押し付けられるようなG。エレベータでおなじみの感覚だ。
「これ、あの、窓際に浮かんでいた船、だよな」
「そうです。国際救助隊アルゴ・ムーンライト・プロジェクトの所有する飛行帆船です」
 一度、教室の窓際に呼びつけたことがある。ほとんどの生徒はその暴風に逃げ出す姿勢を取って見ていないが、彼は見ていた。
 ちなみに乗せた以上は秘密を前提に多少情報を開示してもいいと思うのだが。
 そんな時間はなさそうだ。
 耳に挿した通信機にピン音。
「間もなく到着します。どこへ?」
「えっと……」
 住所に基づきこの船が下ろせるスペースを検索。
 集落の外れ、アスファルト舗装が途切れたところに小高い緑地あり。
 特にGを感じることもなく、着地に伴う小さな衝撃。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -15-

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「理絵子!」
 アルヴィトが剣を抜き呼ぶ。
「はい!」
「私はこの者に永遠の戦いを挑む。その間に時空の継承を閉じよ。されど我が髪は我が分身としてそなたらに力を与える」
 それは3つの指示と結論を示していた。すなわち相容れぬ価値観は距離を取るより無いのであり、
 アルヴィトはアレクサンダーを異世界へ連れて行こうとしているのであり。
 再びこの戦女と会うことは無い。
「はい!」
 理絵子は応えた。その3つが示すもの“自立せよ”。
「小気味よい。汝らには太陽と月と大地が味方する。以後この“大王”に感化された者が挑んでくるかも知れぬが排除できる。否、排除せよ。征服せんと欲する者を万物を持って排除せよ!」
「お元気で!」
 理絵子はそう応じた。肉の身持たぬ存在に“元気”もへったくれも無いのだが。
「お前もな」
 戦女は大剣構えて強気に笑んで見せ、その剣でアレクサンダーに襲いかかった。
 永遠に戦いを挑み続ければ、アレクサンダーが人間世界、この世に出てくるヒマは無い。
 結果として人間世界に超常の戦いは現出しない。

 示唆一つ。実は聖書に言うハルマゲドンは、遠い過去から永遠の未来まで続くそうした戦いなのではないか。「そのとき、天で戦いが起こった」とは黙示録の一節である。それは永遠の過去の一点であり、天使たちは今もずっと戦っている。

 だから、巨大な超能力で地球生命が脅かされる可能性は低い。
 ただ、そういう“思念”自体は渦巻いていて、人がネガティブな意識を持つと、容易に共振し、通じて“悪意持つ超能力者”は発現しうる。

 自分たちに超能力が備わっているように。それは言わずもがな、自分たちも“戦い続ける”責務を負う。

 錫杖を振るい印契を描き、真言を口にして封印をなす。
「……ドシャコ」
“学校”はにわかに全面がガラスのそれと化し、次いで耳をつんざく音を立てて崩壊を始めた。ガラスの割れるあの音が空間引き裂いて広がり、応じてキラキラとしたガラスの破砕片が煙のように舞い上がる。
 それはそれで危険なのではないか。
 美砂が手のひらを広げた。

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -20-

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「そうです。常磐線で太平洋側から入るルートです」
 彼女は平沢の顔を振り仰いだ。
 全ての点が一本の線に繋がった。
「お父様は郡山駅だって確か」
「そう……常磐線に行ったならそりゃ郡山で待ってちゃダメだよ。三春に着いてもまだばちゃんが着いちゃいねぇ」
「先回りしすぎたわけだ。すぐ三春へ戻ってもらって……えーと、ありがとうございました」
「いーえ。君たち三春に行くのかい?」
「はい。あ、いえ、家族が先に行ってますので」
 じゃぁ切符買って行け、となると困るので言を翻して頭を下げ、その場を辞す。“術”が解けた後、彼は何等か守秘義務に違反した等で処罰されるのだろうか。
「(意図したこと形を成さず)」
「姫ちゃんなんて?」
「えーとね、上野公園へ行きます」
「え?三春じゃなく……え、それってひょっとして」
 彼女は頷いた。
 彼は一度、その存在を見たことがある。
「レムリア案件ですから」
 階段上がってコンコースを逆戻り、“公園口”からICカードをピッして出場。その国立博物館や美術館、そして著名な上野動物園のある上野公園へ。

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(科学博物館前)
 外へ出てまず平沢進の父殿へ電話。
「タイムラグすごいからトランシーバみたいに語尾どうぞ、ってつけた方がやりやすいよ」
「ありがとう。……あ、父ちゃん進だ。ばあちゃんは上野から常磐線の特急に乗った。郡山には行ってない。すぐ三春へ行ってくれ。どうぞ」
 喋りながら二人は横断歩道を渡って公園内に進み、博物館類のある方向と逆、南側へ進む。著名な西郷隆盛像がある方。
『……警察から連絡来ないが?』
「上野駅で駅員に聞いた。どうぞ」
『……そのどうぞ、って何だ。まぁええが、上野にいるんか。上野?……そうか上野か、よく気付いたな。わがった。とにかく三春へ行くわ。お前は戻れ』
 平沢は困惑して彼女を見た。
「とりあえず『はい』で。んで、電話オフでいいよ」
「はい。どうぞ、あ」
 平沢は言われたままにはいと言って電話を切った。
「軍の無線みたい」
「平和を愛する姫ちゃんとしては不本意だけどレムリアとしては強力な相棒」
 電話を返してもらってニヤッと笑うと、公園の中でも比較的木が少なく開けた場所へ出る。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -14-

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 魔、である。但し、悪魔のような伝承の存在ではない。
 人間に由来する。人類ホモサピエンスが10万とも20万年とも言われる地球での生存で自ら獲得した“根源情動の人格化”。
 理絵子は、権限を背負って、指さし、命じた。
「名乗れ、征服王」
「我が名はイスカンダール」
 声とともに地震が起きようとする。が、天地の力がそれを制する。
 娘たちは情報を共有する。その者は人間の時の名を“アレキサンダー”と言った。世界史に著名な大王アレキサンダーである。言語間の伝承変化で文字が入れ替わりAliskandarと書かれ、更にアラブ表記の文法からiskandarとなった。現代に使われる人名・都市名であり、著名な映画等でも町の名、星の名として使われる。
 英雄。
「だけど、裏返せば破壊と殺戮の体現者」
 理絵子の知識を美砂がひっくり返した。
 史実は肯定的な書き方であり、彼の名の付いたゲームキャラクタでも戦闘能力は高い。だが、現代に通じる覇権主義の原点という見方も出来る。
 欧米の価値観の原点。それは中南米文化からの黄金の簒奪であり、奴隷商売であり、アヘン戦争、そして今も人種差別に色濃く残る。
 アレクサンダーではなくアラブの伝承名イスカンダールを名乗った理由。
「従うか、死か」
「問うに能わず。去ね(いね)、アレクサンダー」
 理絵子のゼロ回答にアレクサンダーは大地引き裂けと念じたようである。従わぬなら“生きるための場所”を破壊しようとしたようだ。しかしこちらの側には文字通りの“後光”が輝く。
 大地へ掛かる力を大地が拒否する。
 すると……アレクサンダーは、天文学的事象を惹起させようとしたようである。
 だが、天を司る存在がそれを抑える。
 所詮出自は“人”に過ぎぬ。
 そこへ。
 蹄の音高らかに天馬が現れ、長剣携えた金髪が翻る。
 戦女アルヴィト。
「待たせた」
 彼女らに微笑んで見せたその手には。
 椰子の実サイズのスズメバチの巣。
 人としてのアレクサンダーは蜂に刺された後に昏倒して世を去っている。
 果たしてアルヴィトは蜂の巣を放り上げ、二つに切り分ける。
 蜂が雲のように広がってアレクサンダーに襲いかかる。
 それは彼の“トラウマ”形象化と彼女らは気づいた。
 アレクサンダーの意識ベクトルが自分たちの指向を離れる。

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -19-

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Ultrabaka

 東京からの短い道中、隣接する新幹線は秋葉原のあたりから地下に潜った。対して自分たちはより高いコンコースへ上がった。
 その国立博物館に行った際の記憶を当たるが、妙に天井の低い通路を通ったことが印象に残っているだけで、目の前の光景とは異なる。

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 見えないし思い出せないなら感じるしかない。目を閉じて得ようとするのは人々に去来する“新幹線”の思い。その発出多い方向へ向かえば良い。
「姫ちゃん?」
「大丈夫、付いてきて」
 それは頭痛持ちの娘が眉をひそめてこめかみを押さえながらフラフラ歩いているの図であって、平沢進としては困惑するしかあるまい。
 12番線を行きすぎ、改札口で行き止まり。新幹線は19番線からだが、その間の番線はどこに?仕方なく階段を下りる。
 と、託宣のきらめきを持って確信が訪れる。左手の“みどりの窓口”相原学から聞いたのはここだ。
「あの!」
 彼女は、今から休憩であろうか、窓口に“他へお回りください”の札をさして立ち上がろうとする男性の係員に声をかけた。
「はい?」
 男性は少し不機嫌そう。年齢に応じて額が広いのだが、そこに皺が寄る。
「突然すいません。人を探しています。こういう高齢の女性が福島三春までの切符を買いに来ませんでしたか?」
「困るんだよねー」
 舌打ち混じりのその声は、窓口内部の他の係員の注目を集めたようである。
 そのうちの一人、ちょうど立ち上がった黒縁メガネの若い男性と目が合う。
 この人だ。
「(意図なさないこと形となりて)」
「姫ちゃんなんて?」
 黒縁メガネの男性はこちらへ歩み寄って来た。
「んー?見せて?あ、やっぱそうか、このおばあちゃんなら覚えてるよ」
「マジですか」
 これは平沢。
「おい……」
 不機嫌な男性の表情が厳しくなった。“個人情報をべらべら喋るな”というところか。
「いいじゃないすか。新幹線を勧めたんだけど『そんなもんはねぇ。汽車で行く』って。上野にいらしたわけだし、ああ、八戸(はちのへ)が尻内(しりうち=八戸の旧駅名)な感じかなと思って“ひたち”でいわき経由の乗車券と特急券を出しました」
 ぞんざいと丁寧が混じったその話し方は彼女の呟いた言葉の作用による。
「いわきは昔の平(たいら)だと言ったら、ああ、それなら判るってニコニコで買って行かれました」
「すいません鉄道には疎いので、つまり新幹線を使わずに三春へ行かれたと」

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -13-

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 それは3人共通の疑問であると同時に、その者への問いかけであった。多く覇権主義・独裁者は魔性になぞらえられる。だがその目指すところ極めると国や組織が滅ぶ。
 自分だけいい目を見たい?そんな子供じみた情動?
 その時。
 意思だけ来たが会話形で記す。
〈逆に問う。汝らは何故生きる〉
〈古風な……〉
〈簡単だよ〉
 登与のツッコミを美砂が遮った。
〈生まれたから。生き物として生まれたからには生き物として、人間として、らしく生き、そして死ぬだけ〉
〈霊能として生まれた故は〉
〈ひとつ、死を恐れるなかれという証として。もうひとつ、心があるべき様であるように、心で直接知ることが出来るように。その点で、私たちは、選ばれた者だと自覚している〉
〈好きように出来ようが〉
 悪いことし放題だろ?
〈しない。希有なる力だからこそ、それを本当に必要としている心のために用いる。そのために生まれたと私たちは信じる〉
 美砂がそこまで言い、理絵子は継ぎ足した。
〈だから私たちは、あなたに何をされても従わないし、そして絶対に負けない〉
〈身も心も滅せよ〉
 それは肉体生命の殲滅のみならず、霊体としての滅亡も意図した。
 魂を消すことが出来るのか……
 “存在意義”を失わせることは出来る。すなわち、生きていても、意思だけあっても意味が無い。
 ……壊滅。
 どうやって。
 天啓を得る。地球生命の根源。
 大日如来真言。
「オン アボキャ ベイロシャノウ マカボダラ マニ ハンドマ ジンバラ ハラバリタヤ ウン」
 手指組み合わせて印契を切る。
 大日如来……日本人は古来、天照大神との親和性を見いだした。その絶対的最高位は富士山信仰とも深い。
 すなわち“やまとの国”の天地(あめつち)の化身である。通じて浮かび上がった魔性なるものの正体。

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -18-

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 ちなみにアメリカが管理している衛星なので、アメリカから国際電話で日本へ掛ける扱いとなる。国番号に続けて彼の携帯番号。宇宙へ飛び、アメリカへ届けられ、そこから太平洋海底ケーブル。40キロ向こうへ掛けるのに信号は万キロを馳せる。応じたタイムラグが会話に出る。
「どうした。急ぎか」
「うん。友達のおばあちゃんが行方不明になった。一方的に喋るね。昔の記憶をたどって福島三春へ向かおうとする場合、どの駅を通る可能性が高いか」
 果たして回答は、電波が行って戻るタイムラグと変わりなかった。
「上野へ行け。一方的に喋るぞ。今なら新幹線だが開通は1982年だ。そのおばあちゃんが人生のほとんどを昭和で過ごしたなら、上野から特急電車だ。いっぺん国立博物館に行ったな?あん時降りたのが上野駅だ。博物館側の出口と真逆の方向、13番から17番ホームが長距離列車のホームだった。新幹線の乗り換え口ができていると思うが、その脇に“みどりの窓口”がある。そこで三春までの切符を求めたお年寄りについて聞き込みをしてみろ。以上理解したか」
「上野駅の17番線にあるみどりの窓口で聞いてみる。理解した」
「それでいい。行け」
「ありがとう」
 電話を切る。膨大な“時間”の存在をそこに感じる。
 おばあさまの意識が、30年前の記憶で動いていたなら、自分のテレパスごときで判ると考える方がおこがましい。
「上野?」
 言葉尻だけ聞いていたであろう平沢は訝しげ。
「昔の記憶に基づくならば、新幹線が開通する前のルートじゃないのかと。だったら上野駅から特急電車じゃない?って」
 平沢は口元を小さく、アルファベットの“o”の字にした。気づき、だ。
「そうか、東北新幹線って平成のちょっと前だもんな。わかった行ってみよう。山手線乗るぜ。こっちだ」(作者註:「上野東京ライン」開業前である)
 東海道線のホームから降り、コンコースの人波を小走りでかき分け進み、山手線内回り、京浜東北線大宮方面が発着する3、4番線へ。
「最初からこのホームに来て……も電波届かないねこれ」
 上に件の中央線ホームの構造物が覆いかぶさっている。
 山手線電車は待つまでもない。乗り込んで動き出す。ただ、神田、秋葉原、御徒町、上野、と止まって行くその時間が、上野駅手前のカーブを進む緩い速度がもどかしい。
 上野駅。明治の開業当初より北へ向かうターミナル。
 ホームから階段でコンコースへ上がる。

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“博物館と逆”と相原学は言った。その方向へ“新幹線”の案内がある。
 問題はだ。
「どうなってんの?この駅」

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -12-

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 音がするような早さで眼前に落ちて現れる黒い毛むくじゃら。
 大蜘蛛であった。蛭に噛みつき、消化液を吐き付ける。
 “彼女”は霊界に住まう生物であった。
 蛭へのダメージは、その根源のありかを彼女たちに教えた。
 本橋美砂が腕を振り上げ。
 手の甲を地面に叩き付けるように振り下ろす。
 ほぼ、爆破と言って良かった。
 校舎一棟が風船のように破裂する。
 鉄骨とモルタル、夥しいガラスが一気に粉微塵と化し、360度飛び散る。
 遅れてドンと音がし、それら鉄骨やモルタル、ガラスが他の校舎に突き刺さり、割れ砕ける音がバリバリと広がり、応じて土煙がわき上がって広がる。
 土煙の中から現れる伽藍。宗教的中枢であることを示した。
 判りやすい。
「校舎はハリボテだよ。レセプションホールというか、この団体の迎賓館みたいな扱いにして実質誰も入れないようにしていた」
「罠」
「でしょ。分かり易すぎる。ただ、こいつらここから出てこないから、結局こっちから行くしかない。情報を収集して命令を下す。実際動くのは自分じゃ無い誰か。悪の基本だよ」
 本橋美砂は言い、再度、腕を伽藍へ向けて叩き付けるようにした。
 強大な精神動力を受け止めた者がいた。
「……何か悪霊憑き飼ってるね」
 弘法大師空海、役行者の小角、安倍晴明……強大な精神動力を駆使したと言われる人物は幾人か存在する。そのダークサイドが現代に現れた。
“拒絶と歓迎”を3人は同時に感じた。それが自分たちの肉体的属性……女性(えげつなくは少女であること)に起因していると知る。
「私らとせっくすがしたい。子供をもうけたい」
「侵略の足がかりとなる依り代が欲しいって?ご冗談を汚らわしい」
 どんと音がして大地の震え。
「地震……念動の」
 まさか、と3人は思ったが、確からしいと判じてさすがに若干震える。弘法大師空海は山を動かしたという。なれば、
 念動力で大地震を起こす……地域一帯が“人質”。
「どこにいる?」
「形は無いね。だから、自分が宿る胎児が欲しい」
「霊でおれば自在だろうに」
「肉体って強力なフィルタなんだよ。心に言うことを聞かせたい。霊の状態だと底意が見抜かれる。肉体の心は視聴覚でアクセスするしかない。意のままにしようと念動を打ち込むと死んでしまう」
「心操って何がしたい?」

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -17-

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「お年寄りを探しています。福島の方まで買ったと思うのですが……」
 加齢加工した写真を見せる。するとテレパス反応するより早く、お姉さんは困った顔になった。
「たくさんのお客様がいらっしゃるので、お写真と行き先だけでは……失礼ですが警察の方には?」
「届け出済みです」
 答えながら、“東京に行け”の示唆の答えを確信する。それは求めている解とは逆だが確実なもの。
 ここには来ていない。
「わたくし本日は2時間ほどここにおりますが、お見えになってないと思います。窓口の者にも訊いてみましょうか」
 それは列を成し切符を求めるこの人々を待たせ、切符を買わない尋ねごとを要求するもの。
 しかも、得られる解は判っている。
「あ、いえ、すみません。ありがとうございました……」
「お力になれずすいません……」
 先に頭を下げられる。いえ、いきなり無茶を言ったのはこちら。
 邪魔にならぬようとりあえず列を離れる。文字通り立ち往生である。東北へ、東海道新幹線で名古屋大阪へ。人の波は途切れず交錯し続ける。
 他の方法で向かった?
 だとしたらどうやって。鉄道に詳しい人……。
 相原学に訊く手があるではないか。ヲタクと会話できるレベルとは言っていた。
 衛星携帯を取り出す。ただ、屋内では電波が届かない。外へ出られるところは?
「空が見えるところへ出たい。一番近い出口は?」
 見回すと“八重洲中央口”。
「待って姫ちゃん」
 看板を見つけて走り出そうとしたら平沢に止められた。
「普通にホームに上がればいいと思う。中央線のホーム以外は全部屋根かぶってるわけじゃないから」
 新幹線最寄りのホームは10番線とか。一段高い新幹線改札前から階段使って降りて進む。オレンジ色の看板には東海道線……そう言えば大船(おおふな)まで乗ったし、それこそ相原学の勤務先は大船でモノレールに乗り換えと聞く。
 エスカレータももどかしいので階段を一段飛ばし。ホームに上がり、屋根の切れ目を見つけて衛星携帯のアンテナを延ばす。
 電波を捕まえた。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -11-

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2

 理絵子の住む市は大学が多い。
 誘致したからだが、20からを数えると都心へ向かう電車と同様、朝は“ラッシュアワー”が見られるレベル。
 そうした大学群で最も大きなキャンパス面積を有するものが北部郊外、川沿いに存在する。
「これって……」
「そうだよ」
「仏教系じゃ……」
“政教分離”に抵触せぬよう故意に宗教団体の申請を行わず、政党を形成して政権与党の一翼を伺う。
 対して彼女らを巻き込んだ者たちはキリスト教の隠れ蓑をまとっていたが。
「真逆だからそうと判らない」
 単純な理屈であった。ちなみに3人は中空から見下ろしているが、1カ所だけ密教の流儀による結界がセットされている。
「あからさまな罠だけど」
「そこにいるという証でもあるのでしょう。私たちに対する挑戦、ホームグラウンドで受けたい。当然の帰結」
「この辺ってなんかスピリチュアルな言われあったっけ」
「多摩の摩の字は麻の意とも……あるいは魔物の魔とも」
「オン・マユラ・キランデイ・ソワカ」
 示唆があり理絵子は唱えた。孔雀明王真言。“毒”を食うからだろうか。空間がぐにゃりと揺らいだように見え、地面に出来た半球状結界がブラックホールのイメージ図のように可視化され、次に同心円状の波が周囲に生じてブラックホールへぎゅうぎゅうと迫り、締め上げる。
 風船割れるように結界が消滅……否。
「結界が……再生した」
「というか、何か、常にわき上がっていて、外見上、結界の体をなすことで霊的な監視を免れている」
「私らには見つけさせたくせに他の霊能者に見られると困るんだ」
「負けたらみっともないからでしょ」
 本橋美砂のその言は挑発そのものであって、果たして相手も応じて動いた。
 空間から突如“舌”がニュッと出現した。
 否。
「蛭」
 霊的で猥褻である。三人は“肉体”を持っている自分たちが不利であると気づかされた。すなわち、霊であれば考えなくて良い“傷つく物”を有している。比して相手は実体が無いくせに力学的な干渉を可能とする。
 自分たちは肉体を守り、なおかつ、相手の力の源泉をどうにかしなくちゃならない。
 一旦消えたい。欲しい力はテレポーテーション。
〈わたくしでは?〉

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -16-

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 総合するに“突然、訳が分からなくなる”……譫妄(せんもう)と呼ばれる状態に入る可能性は感じないが。
 病気のほか、夢や薬の副作用、手術の麻酔でもなったりするとも聞く。
……否定しきれない。そしてその状態で元の住まいに向かったのだとすれば。
 電車は神田で北へ向かう新幹線を含む他の路線群と合流し、そこから自分たちの線路だけ高架線路からさらに一段高い高架へ駆けあがって終着、東京。
 電車が止まり、ドアが開くと、大都会の空気と騒音。
 ホームに降り立つ。で。
 思わず立ち止まる。感じないのだ。思いを何も。
 テレパシー感度が落ちてる?否否、傍ら平沢の不安と、次どうすれば、という困惑の念を強く感じる。あ、後ろに人が邪魔ですね。ホームの真ん中まで移動して人の流れを避ける。
 どうすればいい。とりあえず。
「新幹線の乗り場へ行ってみましょう」
 確証があるわけではない。というか、ここまで来て他に出来ることはない。
「おう……」
 平沢が応じる。とはいえ自分から足が出ない。掌握している駅ではないからだ。ホームの上の案内板は“新幹線↓”要するにこのホームからコンコースに降りろ。そりゃそうだ。
 情報が欲しいのはその先だ。
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https://www.jreast.co.jp/estation/stations/1039.html
「判る?」
「東北新幹線だろ。大丈夫だよ。行ったことあるから」
 平沢の後ろをついて行く。2段高架の上の階層から、途中に踊り場区間がある長く不思議なエスカレータで降りてコンコース。案内表示は20から23番線だとしてある。案内表示の「東北新幹線」を頼りにして歩く。東京駅を西端から東端まで横切る形。
 さて新幹線というのは特急列車であるから、乗車には乗車券と特急券を必要とし、両者揃って持っているかを確認する専用の改札がある。
 東京駅における東北新幹線のそうした改札は2か所。ともに“みどりの窓口”を傍らに備える。
 どちらも応じた行列。ロープでジグザグに仕切ってあり、人々がじっと待っている。彼女は長くアムステルダムで暮らしており、同様な高速列車“タリス(Thalys)”を知るが、チケットはネット予約の電子メールをプリントアウトすればよく、駅の改札もないので、この光景には違和感を覚える。割り込んで尋ねる?
 誰か係の……と見回したら、青い制服で首元にスカーフを巻いた、コンシェルジュのお姉さんがいたので、訊くだけ訊いてみることにする。
「すいません」
「はい」
 にっこり。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -10-

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-我が選択は理絵子なり

 果たして魔剣クリュサオールは答えた。

-刃(やいば)有せぬ我が身は汝の剣身一部に能わず。されど理絵子に魔の動き伝える用はなすこと叶う。

「よかろう」
 果たしてアルヴィトは同意し、その剣を鞘に収め、唇の端に笑みを浮かべた。
「用あれば呼ばわれ。加勢する」
「ありがとうございます」
 アルヴィトは言い、元の簡素な衣を羽織った姿に戻り、馬上の人と化した。
 一鞭当てて異空間へ消える。この後理絵子が取ろうとしている行動を知った故。
〈クリュサオール〉
〈おそばに〉
〈導け。汝を我に差し向けた者の潜む場へ〉
〈恐れ多くも申し上げる。あの者は……〉
〈可否は私と仲間で決める。導け〉
〈……承った〉
「そばへ」
 やりとりを聞いた美砂が手招き。
 そこへ飛ぼうというのである。空中浮揚。彼女らは一カ所に固まった。
「感づかれて……」
「いない。私たちの思念を感じ取れていないはず。超能力ですべて分かると思っているから。私たちが消えたと思っているから」
「消した?」
「この子が毒を出してる。その毒に染まって届くから見分けがつかない」
 理絵子は柄だけのクリュサオールを握り直した。
「“デーモンコア”だな」
 美砂が言った。それはアメリカの研究所にあったプルトニウムの塊。一瞬でも取り扱いを誤ると核反応を起こして放射線を周囲にまき散らす。研究者が二人死んでいる。同様な心理的毒素の塊で、常人が相手にすれば気が狂う……そんな“魔物体”だと言うわけだ。
「私たちは明確に攻撃の意思を持ってるしね。それも毒の一部だし」
「行こうか」
 美砂が手を広げ、一行はすっと宙に舞い上がる。

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -15-

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 滑り込んできた白い列車の“自由席”を探して乗り込む(※)。ドアは車端のデッキ部にあって、客室とは自動ドアで仕切られている。ドアの向こうを覗くと満席。
 他、幾人かの乗車客とともにデッキ部に立つことにする。ドアが閉まり、キシキシした機械音とともに列車は駅を離れる。
 カーブで身をくねらせ、本線に合流し、特別急行東京行き、とアナウンス。※未指定券制度導入前
「俺、初めて乗るぜJRの特急」
「そうなの?」
・私鉄とJRが並走、新宿や東京に出るには運賃の安い私鉄を使うことが多い
・JRの特急は東京まで乗っても1時間未満であり、特急料金が惜しい
・ほとんどは新宿止まりなので、尚のこと「わざわざ乗る」意味も理由もない
・反対方向甲府方面へ出かける際はクルマなのでやはり乗らない
 ちなみに発車してすぐは特急らしい加速を見せたが、間もなく速度が頭打ちのようになり、持て余して流すような走り方になった。それは前方に「特急以外」の列車が多く、追い抜くチャンスがないので、後ろから着いて行くようなダイヤになっているからだが、さておく。
 東京まで一定の時間と空間が持てたことは確かなので情報を集める。依頼した画像認識は現時点検出なし。全部は膨大な時間がかかるので新幹線乗り場を優先してもらった。3時間分で検出されず。
「東京駅にはお見えになってないみたい……」
「え……」
・私鉄とJRが並走、新宿や東京に出るには運賃の安い私鉄を使うことが多い
「このルートの場合、JRを全く使わず東京駅へ出られる?」
「うん、新宿から地下鉄に乗ればいいから……そっちかなぁ」
「検索依頼すればいいよ」
 私鉄の社名、地下鉄の路線名を聞いて追加の調査を依頼する。
 ただ、そも、そのルートを取ったのだろうか?
 JR一本に比して複雑すぎるのではないのか?
 テレパス無感応の説明は成り立つが。
 ともあれ東京駅へ行った方が良いようである。北帰行の結節点と考えられるからだ。画像検索とテレパシー検索の並走だ。
 30分弱、ダラダラ走ってビルの谷間に入ると、ゴトゴト揺れながら線路が分岐し、新宿に着く。二人が一旦ホームに降りてスペースを空ける要があるほど大量の下車があり、客席に空きも出たので移ることにする。動き出して更にのろのろ運転だ。
 さてこの先の車窓には見覚えがある。沿線の大学病院でちょっとお世話になったことがある。小児病棟とか遊びに行った。せっかくこの地に定住したのだからまた行こうか。
 高速道路、高層ビル。意外な緑。
 四谷に止まって下車客少し。それで車内の客はまばら。神田川に沿って東京まであと一息。
「おばあさまをこちらに引き取った後の大まかな変化を知りたい。健康状態を知ってる範囲で教えてください」
・転居2日後に体調を崩した。高熱と腹痛
・回復後はおおむね元気
・血圧と膝の持病有。近所で通う病院を決め、特に膝はリハビリ兼ねて毎日通院
「こちらで新たなお知り合いとかは?デイサービスとか使ってる?」
「知らない、というか聞いてないな。ごめん、親にお任せにしてる……」
「いいよ。それだけ判ってるだけでも大したものだよ。ありがと」

つづく

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -09-

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 同等に巨人化した戦女アルヴィトの姿がそこに雄々しくあった。
 アルヴィトは、着衣をはぎ取った。
 黄金の裸身。流麗な曲線で構成され、ふくよかで輝くような乳房。黄金比を持って構成された腰回りの脂肪のたわみ。
 男の目線であれば、そのまま、性器を見ようとしたであろう。
 だから。
 その目が陰部に向いた瞬間、本橋美砂がPKを使った。
 魔ゼウスの“心臓”に深々と突き立つ、クリュサオールの剣。
 魔ゼウスは、自分で、自分の心臓を刺した形。
 理絵子は知る。霊体とて意思を紡ぐなにがしかの“無ではない領域”であり、応じて、無への還元も生じうる。
 それはプラスとマイナスの衝突。すなわち中和。
〈クリュサオールはプラスへ転じた〉
 自分の言動によって。つまり、如来の天啓は理に叶っていた。
 でも待って。それってクリュサオールと魔ゼウスが対消滅……。
 肉の耳に聞こえぬ絶叫であった。
 安らかな死ではなく“滅亡”への断末魔であった。
 魔ゼウスがバラバラと拡散してゆく。無数の粒子に分かれるように見え、ガス体への昇華のようにも見えた。
 魔と、ここと、彼我の空間を隔てるためのエネルギに消費されると判じた。
 アルヴィトが、腕を伸ばした。
 クリュサオールの“柄”。
 魔が閉じられる。
 周囲は、闇の中ろうそくで照らされた部屋のようであった。
 アルヴィトの裸身がろうそくのように輝いてそう見えているのであった。彼女は人間のサイズに戻ってそこにあった。
「理絵子。“魔”だぞ。良いのか」
 柄だけのクリュサオール。根元にわずかに残った黒い刀身。
「我が懐刀にいたしたく。ならば我が身は貴殿威光の残照あらたかにて魔物ら逃げ出すが故」
「おもしろい。魔をおびき寄せる道具とするのか」
「ええ、元は忌み嫌われた故の魔への転身。彼が私で良いというのであれば」
「よろしい。クリュサオール、選択せよ。我とともにヴァルハラへ向かい、我が刀身にて更なる光と化すか、闇として理絵子の裡(うち)にあり、魔をだます手先となるか」
 アルヴィトは自らの剣を抜いて立て、その金色の光を煌めかせて見せた。
 理絵子は知った。アルヴィトの聖剣はそうした“浄化された魂”が集まって刀の形態をなしている。
 心は心でしか動かせない。応じて心だけで出来た剣なのだ。だから魔であれど“切れ味”を有する。

(つづく)

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