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手のひら端末でも読めそうな「夢見るようなファンタジーで、命を守る」お話を、ぼちぼちリストして行きます。

最近の更新

【魔法少女レムリアシリーズ】「テレパスの敗北」(7/28:隔週水曜更新)

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【理絵子の夜話】「サイキックアクション」(7/24:隔週土曜更新)

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 お話カタログ

●連載タイプ(掟破りの携帯で長編)
魔法少女レムリアのお話(現在15編)
超感覚学級委員理絵子の夜話(現在10編)

●長編
「天使のアルバイト」
天使が、人に近い属性を備える理由、そして、だからこその過ち。その結果。
(目次

●短編集
大人向けの童話(現在10編)
恋の小話(現在13編)
妖精エウリーの小さなお話(現在22編)
(分類不能)「蟷螂の斧」

リンクのページ

色んな切り口色んな長さ。他の「ココログ小説」の方々の物語。「へぇ、こういうのもアリだな」そんな発見をどうぞ!

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -18-

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 ちなみにアメリカが管理している衛星なので、アメリカから国際電話で日本へ掛ける扱いとなる。国番号に続けて彼の携帯番号。宇宙へ飛び、アメリカへ届けられ、そこから太平洋海底ケーブル。40キロ向こうへ掛けるのに信号は万キロを馳せる。応じたタイムラグが会話に出る。
「どうした。急ぎか」
「うん。友達のおばあちゃんが行方不明になった。一方的に喋るね。昔の記憶をたどって福島三春へ向かおうとする場合、どの駅を通る可能性が高いか」
 果たして回答は、電波が行って戻るタイムラグと変わりなかった。
「上野へ行け。一方的に喋るぞ。今なら新幹線だが開通は1982年だ。そのおばあちゃんが人生のほとんどを昭和で過ごしたなら、上野から特急電車だ。いっぺん国立博物館に行ったな?あん時降りたのが上野駅だ。博物館側の出口と真逆の方向、13番から17番ホームが長距離列車のホームだった。新幹線の乗り換え口ができていると思うが、その脇に“みどりの窓口”がある。そこで三春までの切符を求めたお年寄りについて聞き込みをしてみろ。以上理解したか」
「上野駅の17番線にあるみどりの窓口で聞いてみる。理解した」
「それでいい。行け」
「ありがとう」
 電話を切る。膨大な“時間”の存在をそこに感じる。
 おばあさまの意識が、30年前の記憶で動いていたなら、自分のテレパスごときで判ると考える方がおこがましい。
「上野?」
 言葉尻だけ聞いていたであろう平沢は訝しげ。
「昔の記憶に基づくならば、新幹線が開通する前のルートじゃないのかと。だったら上野駅から特急電車じゃない?って」
 平沢は口元を小さく、アルファベットの“o”の字にした。気づき、だ。
「そうか、東北新幹線って平成のちょっと前だもんな。わかった行ってみよう。山手線乗るぜ。こっちだ」(作者註:「上野東京ライン」開業前である)
 東海道線のホームから降り、コンコースの人波を小走りでかき分け進み、山手線内回り、京浜東北線大宮方面が発着する3、4番線へ。
「最初からこのホームに来て……も電波届かないねこれ」
 上に件の中央線ホームの構造物が覆いかぶさっている。
 山手線電車は待つまでもない。乗り込んで動き出す。ただ、神田、秋葉原、御徒町、上野、と止まって行くその時間が、上野駅手前のカーブを進む緩い速度がもどかしい。
 上野駅。明治の開業当初より北へ向かうターミナル。
 ホームから階段でコンコースへ上がる。

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“博物館と逆”と相原学は言った。その方向へ“新幹線”の案内がある。
 問題はだ。
「どうなってんの?この駅」

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -12-

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 音がするような早さで眼前に落ちて現れる黒い毛むくじゃら。
 大蜘蛛であった。蛭に噛みつき、消化液を吐き付ける。
 “彼女”は霊界に住まう生物であった。
 蛭へのダメージは、その根源のありかを彼女たちに教えた。
 本橋美砂が腕を振り上げ。
 手の甲を地面に叩き付けるように振り下ろす。
 ほぼ、爆破と言って良かった。
 校舎一棟が風船のように破裂する。
 鉄骨とモルタル、夥しいガラスが一気に粉微塵と化し、360度飛び散る。
 遅れてドンと音がし、それら鉄骨やモルタル、ガラスが他の校舎に突き刺さり、割れ砕ける音がバリバリと広がり、応じて土煙がわき上がって広がる。
 土煙の中から現れる伽藍。宗教的中枢であることを示した。
 判りやすい。
「校舎はハリボテだよ。レセプションホールというか、この団体の迎賓館みたいな扱いにして実質誰も入れないようにしていた」
「罠」
「でしょ。分かり易すぎる。ただ、こいつらここから出てこないから、結局こっちから行くしかない。情報を収集して命令を下す。実際動くのは自分じゃ無い誰か。悪の基本だよ」
 本橋美砂は言い、再度、腕を伽藍へ向けて叩き付けるようにした。
 強大な精神動力を受け止めた者がいた。
「……何か悪霊憑き飼ってるね」
 弘法大師空海、役行者の小角、安倍晴明……強大な精神動力を駆使したと言われる人物は幾人か存在する。そのダークサイドが現代に現れた。
“拒絶と歓迎”を3人は同時に感じた。それが自分たちの肉体的属性……女性(えげつなくは少女であること)に起因していると知る。
「私らとせっくすがしたい。子供をもうけたい」
「侵略の足がかりとなる依り代が欲しいって?ご冗談を汚らわしい」
 どんと音がして大地の震え。
「地震……念動の」
 まさか、と3人は思ったが、確からしいと判じてさすがに若干震える。弘法大師空海は山を動かしたという。なれば、
 念動力で大地震を起こす……地域一帯が“人質”。
「どこにいる?」
「形は無いね。だから、自分が宿る胎児が欲しい」
「霊でおれば自在だろうに」
「肉体って強力なフィルタなんだよ。心に言うことを聞かせたい。霊の状態だと底意が見抜かれる。肉体の心は視聴覚でアクセスするしかない。意のままにしようと念動を打ち込むと死んでしまう」
「心操って何がしたい?」

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -17-

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「お年寄りを探しています。福島の方まで買ったと思うのですが……」
 加齢加工した写真を見せる。するとテレパス反応するより早く、お姉さんは困った顔になった。
「たくさんのお客様がいらっしゃるので、お写真と行き先だけでは……失礼ですが警察の方には?」
「届け出済みです」
 答えながら、“東京に行け”の示唆の答えを確信する。それは求めている解とは逆だが確実なもの。
 ここには来ていない。
「わたくし本日は2時間ほどここにおりますが、お見えになってないと思います。窓口の者にも訊いてみましょうか」
 それは列を成し切符を求めるこの人々を待たせ、切符を買わない尋ねごとを要求するもの。
 しかも、得られる解は判っている。
「あ、いえ、すみません。ありがとうございました……」
「お力になれずすいません……」
 先に頭を下げられる。いえ、いきなり無茶を言ったのはこちら。
 邪魔にならぬようとりあえず列を離れる。文字通り立ち往生である。東北へ、東海道新幹線で名古屋大阪へ。人の波は途切れず交錯し続ける。
 他の方法で向かった?
 だとしたらどうやって。鉄道に詳しい人……。
 相原学に訊く手があるではないか。ヲタクと会話できるレベルとは言っていた。
 衛星携帯を取り出す。ただ、屋内では電波が届かない。外へ出られるところは?
「空が見えるところへ出たい。一番近い出口は?」
 見回すと“八重洲中央口”。
「待って姫ちゃん」
 看板を見つけて走り出そうとしたら平沢に止められた。
「普通にホームに上がればいいと思う。中央線のホーム以外は全部屋根かぶってるわけじゃないから」
 新幹線最寄りのホームは10番線とか。一段高い新幹線改札前から階段使って降りて進む。オレンジ色の看板には東海道線……そう言えば大船(おおふな)まで乗ったし、それこそ相原学の勤務先は大船でモノレールに乗り換えと聞く。
 エスカレータももどかしいので階段を一段飛ばし。ホームに上がり、屋根の切れ目を見つけて衛星携帯のアンテナを延ばす。
 電波を捕まえた。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -11-

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2

 理絵子の住む市は大学が多い。
 誘致したからだが、20からを数えると都心へ向かう電車と同様、朝は“ラッシュアワー”が見られるレベル。
 そうした大学群で最も大きなキャンパス面積を有するものが北部郊外、川沿いに存在する。
「これって……」
「そうだよ」
「仏教系じゃ……」
“政教分離”に抵触せぬよう故意に宗教団体の申請を行わず、政党を形成して政権与党の一翼を伺う。
 対して彼女らを巻き込んだ者たちはキリスト教の隠れ蓑をまとっていたが。
「真逆だからそうと判らない」
 単純な理屈であった。ちなみに3人は中空から見下ろしているが、1カ所だけ密教の流儀による結界がセットされている。
「あからさまな罠だけど」
「そこにいるという証でもあるのでしょう。私たちに対する挑戦、ホームグラウンドで受けたい。当然の帰結」
「この辺ってなんかスピリチュアルな言われあったっけ」
「多摩の摩の字は麻の意とも……あるいは魔物の魔とも」
「オン・マユラ・キランデイ・ソワカ」
 示唆があり理絵子は唱えた。孔雀明王真言。“毒”を食うからだろうか。空間がぐにゃりと揺らいだように見え、地面に出来た半球状結界がブラックホールのイメージ図のように可視化され、次に同心円状の波が周囲に生じてブラックホールへぎゅうぎゅうと迫り、締め上げる。
 風船割れるように結界が消滅……否。
「結界が……再生した」
「というか、何か、常にわき上がっていて、外見上、結界の体をなすことで霊的な監視を免れている」
「私らには見つけさせたくせに他の霊能者に見られると困るんだ」
「負けたらみっともないからでしょ」
 本橋美砂のその言は挑発そのものであって、果たして相手も応じて動いた。
 空間から突如“舌”がニュッと出現した。
 否。
「蛭」
 霊的で猥褻である。三人は“肉体”を持っている自分たちが不利であると気づかされた。すなわち、霊であれば考えなくて良い“傷つく物”を有している。比して相手は実体が無いくせに力学的な干渉を可能とする。
 自分たちは肉体を守り、なおかつ、相手の力の源泉をどうにかしなくちゃならない。
 一旦消えたい。欲しい力はテレポーテーション。
〈わたくしでは?〉

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -16-

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 総合するに“突然、訳が分からなくなる”……譫妄(せんもう)と呼ばれる状態に入る可能性は感じないが。
 病気のほか、夢や薬の副作用、手術の麻酔でもなったりするとも聞く。
……否定しきれない。そしてその状態で元の住まいに向かったのだとすれば。
 電車は神田で北へ向かう新幹線を含む他の路線群と合流し、そこから自分たちの線路だけ高架線路からさらに一段高い高架へ駆けあがって終着、東京。
 電車が止まり、ドアが開くと、大都会の空気と騒音。
 ホームに降り立つ。で。
 思わず立ち止まる。感じないのだ。思いを何も。
 テレパシー感度が落ちてる?否否、傍ら平沢の不安と、次どうすれば、という困惑の念を強く感じる。あ、後ろに人が邪魔ですね。ホームの真ん中まで移動して人の流れを避ける。
 どうすればいい。とりあえず。
「新幹線の乗り場へ行ってみましょう」
 確証があるわけではない。というか、ここまで来て他に出来ることはない。
「おう……」
 平沢が応じる。とはいえ自分から足が出ない。掌握している駅ではないからだ。ホームの上の案内板は“新幹線↓”要するにこのホームからコンコースに降りろ。そりゃそうだ。
 情報が欲しいのはその先だ。
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https://www.jreast.co.jp/estation/stations/1039.html
「判る?」
「東北新幹線だろ。大丈夫だよ。行ったことあるから」
 平沢の後ろをついて行く。2段高架の上の階層から、途中に踊り場区間がある長く不思議なエスカレータで降りてコンコース。案内表示は20から23番線だとしてある。案内表示の「東北新幹線」を頼りにして歩く。東京駅を西端から東端まで横切る形。
 さて新幹線というのは特急列車であるから、乗車には乗車券と特急券を必要とし、両者揃って持っているかを確認する専用の改札がある。
 東京駅における東北新幹線のそうした改札は2か所。ともに“みどりの窓口”を傍らに備える。
 どちらも応じた行列。ロープでジグザグに仕切ってあり、人々がじっと待っている。彼女は長くアムステルダムで暮らしており、同様な高速列車“タリス(Thalys)”を知るが、チケットはネット予約の電子メールをプリントアウトすればよく、駅の改札もないので、この光景には違和感を覚える。割り込んで尋ねる?
 誰か係の……と見回したら、青い制服で首元にスカーフを巻いた、コンシェルジュのお姉さんがいたので、訊くだけ訊いてみることにする。
「すいません」
「はい」
 にっこり。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -10-

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-我が選択は理絵子なり

 果たして魔剣クリュサオールは答えた。

-刃(やいば)有せぬ我が身は汝の剣身一部に能わず。されど理絵子に魔の動き伝える用はなすこと叶う。

「よかろう」
 果たしてアルヴィトは同意し、その剣を鞘に収め、唇の端に笑みを浮かべた。
「用あれば呼ばわれ。加勢する」
「ありがとうございます」
 アルヴィトは言い、元の簡素な衣を羽織った姿に戻り、馬上の人と化した。
 一鞭当てて異空間へ消える。この後理絵子が取ろうとしている行動を知った故。
〈クリュサオール〉
〈おそばに〉
〈導け。汝を我に差し向けた者の潜む場へ〉
〈恐れ多くも申し上げる。あの者は……〉
〈可否は私と仲間で決める。導け〉
〈……承った〉
「そばへ」
 やりとりを聞いた美砂が手招き。
 そこへ飛ぼうというのである。空中浮揚。彼女らは一カ所に固まった。
「感づかれて……」
「いない。私たちの思念を感じ取れていないはず。超能力ですべて分かると思っているから。私たちが消えたと思っているから」
「消した?」
「この子が毒を出してる。その毒に染まって届くから見分けがつかない」
 理絵子は柄だけのクリュサオールを握り直した。
「“デーモンコア”だな」
 美砂が言った。それはアメリカの研究所にあったプルトニウムの塊。一瞬でも取り扱いを誤ると核反応を起こして放射線を周囲にまき散らす。研究者が二人死んでいる。同様な心理的毒素の塊で、常人が相手にすれば気が狂う……そんな“魔物体”だと言うわけだ。
「私たちは明確に攻撃の意思を持ってるしね。それも毒の一部だし」
「行こうか」
 美砂が手を広げ、一行はすっと宙に舞い上がる。

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -15-

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 滑り込んできた白い列車の“自由席”を探して乗り込む(※)。ドアは車端のデッキ部にあって、客室とは自動ドアで仕切られている。ドアの向こうを覗くと満席。
 他、幾人かの乗車客とともにデッキ部に立つことにする。ドアが閉まり、キシキシした機械音とともに列車は駅を離れる。
 カーブで身をくねらせ、本線に合流し、特別急行東京行き、とアナウンス。※未指定券制度導入前
「俺、初めて乗るぜJRの特急」
「そうなの?」
・私鉄とJRが並走、新宿や東京に出るには運賃の安い私鉄を使うことが多い
・JRの特急は東京まで乗っても1時間未満であり、特急料金が惜しい
・ほとんどは新宿止まりなので、尚のこと「わざわざ乗る」意味も理由もない
・反対方向甲府方面へ出かける際はクルマなのでやはり乗らない
 ちなみに発車してすぐは特急らしい加速を見せたが、間もなく速度が頭打ちのようになり、持て余して流すような走り方になった。それは前方に「特急以外」の列車が多く、追い抜くチャンスがないので、後ろから着いて行くようなダイヤになっているからだが、さておく。
 東京まで一定の時間と空間が持てたことは確かなので情報を集める。依頼した画像認識は現時点検出なし。全部は膨大な時間がかかるので新幹線乗り場を優先してもらった。3時間分で検出されず。
「東京駅にはお見えになってないみたい……」
「え……」
・私鉄とJRが並走、新宿や東京に出るには運賃の安い私鉄を使うことが多い
「このルートの場合、JRを全く使わず東京駅へ出られる?」
「うん、新宿から地下鉄に乗ればいいから……そっちかなぁ」
「検索依頼すればいいよ」
 私鉄の社名、地下鉄の路線名を聞いて追加の調査を依頼する。
 ただ、そも、そのルートを取ったのだろうか?
 JR一本に比して複雑すぎるのではないのか?
 テレパス無感応の説明は成り立つが。
 ともあれ東京駅へ行った方が良いようである。北帰行の結節点と考えられるからだ。画像検索とテレパシー検索の並走だ。
 30分弱、ダラダラ走ってビルの谷間に入ると、ゴトゴト揺れながら線路が分岐し、新宿に着く。二人が一旦ホームに降りてスペースを空ける要があるほど大量の下車があり、客席に空きも出たので移ることにする。動き出して更にのろのろ運転だ。
 さてこの先の車窓には見覚えがある。沿線の大学病院でちょっとお世話になったことがある。小児病棟とか遊びに行った。せっかくこの地に定住したのだからまた行こうか。
 高速道路、高層ビル。意外な緑。
 四谷に止まって下車客少し。それで車内の客はまばら。神田川に沿って東京まであと一息。
「おばあさまをこちらに引き取った後の大まかな変化を知りたい。健康状態を知ってる範囲で教えてください」
・転居2日後に体調を崩した。高熱と腹痛
・回復後はおおむね元気
・血圧と膝の持病有。近所で通う病院を決め、特に膝はリハビリ兼ねて毎日通院
「こちらで新たなお知り合いとかは?デイサービスとか使ってる?」
「知らない、というか聞いてないな。ごめん、親にお任せにしてる……」
「いいよ。それだけ判ってるだけでも大したものだよ。ありがと」

つづく

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -09-

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 同等に巨人化した戦女アルヴィトの姿がそこに雄々しくあった。
 アルヴィトは、着衣をはぎ取った。
 黄金の裸身。流麗な曲線で構成され、ふくよかで輝くような乳房。黄金比を持って構成された腰回りの脂肪のたわみ。
 男の目線であれば、そのまま、性器を見ようとしたであろう。
 だから。
 その目が陰部に向いた瞬間、本橋美砂がPKを使った。
 魔ゼウスの“心臓”に深々と突き立つ、クリュサオールの剣。
 魔ゼウスは、自分で、自分の心臓を刺した形。
 理絵子は知る。霊体とて意思を紡ぐなにがしかの“無ではない領域”であり、応じて、無への還元も生じうる。
 それはプラスとマイナスの衝突。すなわち中和。
〈クリュサオールはプラスへ転じた〉
 自分の言動によって。つまり、如来の天啓は理に叶っていた。
 でも待って。それってクリュサオールと魔ゼウスが対消滅……。
 肉の耳に聞こえぬ絶叫であった。
 安らかな死ではなく“滅亡”への断末魔であった。
 魔ゼウスがバラバラと拡散してゆく。無数の粒子に分かれるように見え、ガス体への昇華のようにも見えた。
 魔と、ここと、彼我の空間を隔てるためのエネルギに消費されると判じた。
 アルヴィトが、腕を伸ばした。
 クリュサオールの“柄”。
 魔が閉じられる。
 周囲は、闇の中ろうそくで照らされた部屋のようであった。
 アルヴィトの裸身がろうそくのように輝いてそう見えているのであった。彼女は人間のサイズに戻ってそこにあった。
「理絵子。“魔”だぞ。良いのか」
 柄だけのクリュサオール。根元にわずかに残った黒い刀身。
「我が懐刀にいたしたく。ならば我が身は貴殿威光の残照あらたかにて魔物ら逃げ出すが故」
「おもしろい。魔をおびき寄せる道具とするのか」
「ええ、元は忌み嫌われた故の魔への転身。彼が私で良いというのであれば」
「よろしい。クリュサオール、選択せよ。我とともにヴァルハラへ向かい、我が刀身にて更なる光と化すか、闇として理絵子の裡(うち)にあり、魔をだます手先となるか」
 アルヴィトは自らの剣を抜いて立て、その金色の光を煌めかせて見せた。
 理絵子は知った。アルヴィトの聖剣はそうした“浄化された魂”が集まって刀の形態をなしている。
 心は心でしか動かせない。応じて心だけで出来た剣なのだ。だから魔であれど“切れ味”を有する。

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -14-

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 直接感じるものは無い。しかしただ、確信はある。
 東京へ行け。
 以上、平沢が見たのは、駅前をぐるぐる歩き、改札機を触り、そこで腕組みしながら目を閉じてゆっくりと首を西、北、東と動かす彼女。困ったような表情は常軌を逸していて理解しがたいから。
 斯くて彼女は目を見開き、光を蔵した瞳で彼を見た。
「東京駅へ行ってみましょう」
「え?……」
 平沢は眉根に困惑を載せて彼女を見返した。客観的に見て、ここに来たという証拠はないのだ。
 だがしかし。
「判ったよ。姫ちゃん信じるよ。姫ちゃんが嘘言ってるとは俺には思えない」
「ありがと……あ、電車来たんじゃない?」
 ゴーゴーという走行音を聞きながら、二人はICカードをかざして改札を抜け、階段を駆け上がる。
「そういやばあちゃん敬老パスで電車も乗ってるの思い出した」
 それは、平沢が自身を無理やり納得させているように、或いは後で言い訳できる材料を探しているようにも聞こえたが。
 その可能性はゼロではない。この“カードかざして改札チェック”は殆ど無意識に行えてしまう。
 オレンジのストライプを巻いた銀色の電車に乗り込む。平日10時過ぎであり、空席も目立つ。
「これ快速だから東京まで1時間だなぁ……立川(たちかわ)で青梅特快(おうめとっかい)でも接続してれば……」
 平沢がひとりごちる。東京の鉄道乗り継ぎにおいて、彼女は自分で考えたことはあまりない。相原学にくっついて歩いていれば最短・最速・最安価で目的地に連れて行ってもらえる。
 車掌のアナウンス。『まもなく立川です。特急列車通過待ち合わせをいたします。新宿・東京方面お急ぎの方は特急列車にお乗り換えください。特急列車のご利用には特急券が必要です……』
 東京へ急ぐなら。
「乗ろう」
 彼女は提案した。
「えっ?新宿東京までJRの特急なんか乗ったことねーよ。何百円か取られるんだぜ」
「お金の問題じゃないじゃん。使えってもらってるんだし、移動の時間は節約して、探す時間に使おうよ」
「……判った」
 快速電車は速度を緩め、ポイントを渡って待避線へ入り、ドアが開いて二人が下りると特急接近のアナウンス。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -08-

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 呪文唱えてもたらされた示唆は意外なものであった。
 が、天の命であればそうと応じる。
「楽になりたい?」
 理絵子はしゃがみ込み、迷子の幼子に対するように、小さな影と化したクリュサオールへ問いかけた。
 すべからくその場の女性達は驚いた。しかし、すぐに、まずアルヴィトが番えた弓の弦を緩め、続いて美砂と登与が切っ先を下ろす。
 怒り続けるにもエネルギがいるのだ。精神的疲労という奴だ。
 大日如来のビジョンを送ってやる。太陽の化身、沸き上がる穏和と温もり。
 そこに、ゆだねていれば、いい。
「怒りとか、憎しみとか、それは、後付け」
 理絵子は言った。
「嫉妬はあるかもね。あれいいな、だけどどうして自分には……ただそれは、多くの場合、努力不足」
 クリュサオールは鋭く反応した。努力不足……自己否定に対し怒りを示したのだ。図星である。
 だが、それで自分を攻撃してくるか、というとそうでもない、理絵子は判っていた。
 “怒り狂う必要の無い安寧”のイメージを理絵子は送り続けている。それがクリュサオールの心動かしていることを把握している。
 “心”動かす力は“心”にしかないのだ。
 しかし。

-騙されるな!

 声があり、剣の体をなしたクリュサオールは男の手に持たれた形でそこにあった。
 先ほどのヒゲ男である。しかも巨大だ。陰部が人体よりも大きく性的に興奮した様相を呈している。刹那の間に出現した。
 殺人行為に性的興奮を抱く倒錯者を思わせた。ロリコンにしてネクロフィリア。
 変態の極北が擬人化した姿であった。
 アルヴィトが即座に矢を射たが、性的巨人はそれをたやすく手のひらで退けた。
 性器はヘビの様相と挙動を見せた。自在に操りたい……男性権化の結晶と言えた。同時に、女性心理にとっては最高の拒否対象。根源的恐怖が存在し、そこを揺さぶられると感じる。ちなみに男性心理の結晶としてギリシャ神話のゼウスが知られる。そこで以下この者を魔神ゼウスと称する。
 比して美砂のシールドバリアが強い。それは心の頼りどころ。
 何か心理に入ってこようとし、理絵子はそれを阻止する。見せたくないものを見せようとしていることは明白。
〈私たちの“パターン”をクリュサオールから読み取った〉
 登与が言った。つまり、“先を読まれる”。
 再びの刹那であった。

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -13-

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 駅までの10分ほどが異様に長い。あと少し、のところで信号に捕まり、その向こう、高架線路を走り出す銀色の電車。
「ああ、特快(とっかい・特別快速のこと)行っちゃったねぇ。すいません」
 それは時間ロスを示す。しかし、運転手氏が謝ることではない。
「いえ、お気になさらず」
 青になり発進し、そのわずかな距離も可能な限り加速して、駅前広場、車寄せに止まる。
 平沢が財布をガサゴソしている間にクレジットカードでチェック。暗証番号でOK。
「はい確かに。ご無事を祈ります。何か急ぎのタクシー必要でしたらこちらお電話ください」
 運転手氏はプリントアウトされた領収書と名刺をくれた。
 彼女はそこで初めて運転手氏の顔を見返し、日焼け顔の中年男性と知る。
 頼んでおいて顔も見ないとか少し失礼だった。
「ありがとうございました。助かりました」
 笑顔で言ってドアを開けてもらう。
「えっと……お金は……」
 平沢がお札片手にキョトン。
「クレジットカードで切りました。お礼言って」
「お、おう。あ、ありがとうございました」
「いえいえ」
 降り立つ。走り出すタクシーを平沢が茫然と見送る。
「姫ちゃんすげえ……」
「現金は節約すべき。まずこの駅で係の人に訊いてみましょう」
「おう」
 我に返ったように平沢が歩き出す。駅は高架線だが建屋は地上だ。レンガの橋脚で支えられた線路のガードをくぐると、自動改札機が並ぶ様が見え、その左脇、対面販売用“みどりの窓口”の看板あり。
 近づいて中をのぞき込むと駅員が身体をひねった。
「はい、どちらまで」
「すいません、実は人を探しています。こういうおばあちゃんが福島までの切符を買いませんでしたか?」
 画像を見せる。すると窓口係員の若い男性は困ったように。
「さっき警察に聞かれた件かな?だったら、ないなぁ。済まんけど」
「そうですか……」
 食い下がっても仕方ないので一旦窓口を離れる。
 ここへ来ていない?
 ここを通ってない?
 間違っている?
 自動改札機に触れてみる。思いは残っていないか。
“ベクトル”を感じようとしてみる。それは予知予感を得ようとする行為に近いのかも知れぬ。方向性のある“希求”は無いか。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -07-

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 アルヴィトの手に無からスッと弓が浮かび上がる。矢の代わりに剣をつがえる。
 弓が長大化する。馬上から地上まで達しようかという大きさとなり、対応して高さ方向にも大きくなる。
 合わせて4メートルにもなろうか、長大な弓の弦を引き、アルヴィトは何の迷いもなく放った。
 剣はびょうと音を立て風を起こして飛び出し、光となって走った。本橋美砂のプロペラと何ら干渉すること無く突き抜け、剣体と化したクリュサオールに正面から突き当たる。
 剣と剣の正面衝突。
 金色の光の球が出現した。
 電気の短絡アークそのものを思わせた。
 但し、生きている。
 目を射る光の塊……肉の身を持つ3人の娘に対する攻撃。
「これは私!」
 言って、動いたのは登与であった。彼女に啓示が降りたと知る。
 フェンシングのそれの如き細い剣を天空に向けて一閃。
 何か構造が変わったと理絵子は理解した。
 一転、暗渠になり、登与の突いた一点は光る穴と化した。
「ピンホール……」
 美砂の認識に理絵子は後ろを向いた。
 プラネタリウムの円弧画面のように、投影された、影。
 小さな、小さな、人影。
 アルヴィトの弓が今度は細い細い金の糸に変わっている。それは彼女の髪の毛を伸ばしたとした方が視覚的には似合った。
「虚像」
「でしょう。私たちが相手にしていたのはこの小さいのが投影していた幻」
「悪意はちっぽけなきっかけが増幅して行く……」
「その権化でしょう……にしては」
 これで終わりとは思われない。
 友や友人……守られている……彼らの攻撃は自分たちに収斂している。
 ……破裂する。それは登与が“突いた”ことで出現した球体の袋のこと。そこに穴が一つ開き、ピンホールの役目を果たした。
 その“袋”が。
「破裂させてはいけない!」
 癒やされない憎悪……それがアルヴィトの剣によって巨大に増幅されて出て来る。
 時空を割る。
 すなわち、この世に悪が満ちる。それが目的!?
 全知全能よ我に力を。
 臨・兵・闘・者・皆・陳・列・在・前(りん・びょう・とう・しゃ・かい・ちん・れつ・ざい・ぜん)!

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -12-

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「すげぇ。そっくりだ」
 野太い声がハーモニーで反応。満場一致というところか。
「これで駅員さんとか直接聞いて回ろうかと。郡山ではお父様、あと、このご近所も探してらっしゃるのでしょうか?それはそのままお続け下さい」
 彼女は2人を交互に見ながら言った。
「おじさん、俺が姫……相原さんに同行するから。やれるだけのことやろうぜ。親には駅まで歩いて探しに行ったとかテキトーぶっこいてよ」
 叔父殿は折れた。
「オーケー判った。ただ、時々連絡をよこせ……お嬢さんのそれは何か凄いが携帯なんだな。進は俺の番号知ってたな」
「ええそうです。状況変化あればご連絡します」
「じゃぁ、頼むわ。すまんが。あ、お金が要るな」
 叔父殿は胸の内ポケットに手を伸ばす。移動に要する費用であろう。彼女は断ろうとしたが、この状況で“赤の他人”に足代出させるというのは叔父殿も気が引けるか。
「三春まで行けるはずだ」
 叔父殿は財布から1万円札を数葉、わしづかみという感じで取り出し、平沢進に持たせた。
「……大金過ぎて怖え」
「しっかり財布に入れて持ってけ」
「おう。……姫、相原さんちょっと待ってて。財布取ってくる」
 家の前で叔父殿と分かれ、バス停に向かう。それは“軌跡”をたどっているという示唆は受ける。が、思考の足跡は感じない。客観的な結論は“何も考えず駅への道を行った”だが、そんなことあるのだろうか。やはり認知機能か。
 我がテレパシーかくも無力か
 バス停の時刻表を覗く。バスは20分間隔で次の便は15分後だが、持て余すので通りがかったタクシーに手を上げる。
「子供じゃ止まってくれ……たよ」
 二人、中学校の制服姿である。普通、そんな二人に止まってはくれないだろう。
 もちろん、彼女が特殊能力で小細工している。
 後席ドアが開いて乗り込み、駅まで依頼。
「お急ぎのようですね」
「ええ、親がちょっと……」
 大嘘、でもあるまい。
「承りました」
 少し荒い気もするが速度上げ目で走ってくれる。
 走りながら思考の残り香を探す。どんな思いでこの道を行かれたか。
 なのだが。
 引き続き何も感じない。この道や風景と紐づけされた“思い”は存在していない。
 それは、もっと集中する何かがあったのか。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -06-

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 それは理絵子にギリシャ神話の一場面を思い出させた。見ただけで石に変える魔女メデューサの退治である。
 同様に黒い顔が雄叫びを発し、その首が剣を打ち込まれた反動で仰向けの角度で動いて切断され、上の方へ弾け飛んに、泡のように変質して消え。
 そして、噴水の如く噴き出した“血”が何かに変わった。
〈大量のサソリになるんじゃ……〉
 と、登与。対し理絵子が得た示唆。
〈クリュサオール〉
 メデューサの血から生まれたとされる物……天馬ペガサス、サソリなど毒生物、そして姿と形の伝承無き怪物、クリュサオール。それは黄金の剣を持つという。
 果たしてそこにはケンタウロスを思わせる半人半馬の怪物があった。その手には金色の剣があった。
 対し、馬の蹄。
 戦女アルヴィトである。人間世界に白馬を伴い具象化した。
〈汝ら、我が髪に命与えよ〉
 それは以前、“お守り”としてもらった彼女の黄金髪の毛ひと束。理絵子は1本ずつ友と家族に持たせている。
 自分も一本常に持っている。りぼんに織り込んでいるが、そのりぼんを手にしたら白い煙のような剣に変じた。
 “意のままに”動く剣だと示唆が来た。登与のそれはフェンシングの剣を思わせ、本橋美砂は水晶の両剣だ。すなわち柄の前後双方に水晶で出来た刃が伸びている。
 クリュサオールが変化する。半人半馬の人の部分がサソリに変わり、その10本の手足は剣の態様。
 数で勝負か。
 アルヴィトが馬上から剣を振るう。切っ先が複数のナイフに分裂し、クリュサオールの手足剣先に拮抗する。
 すると……クリュサオールはそれ自身1本の大剣と化した。
〈魔剣か〉
 アルヴィトの呟き。魂宿した生きた剣……神話・SFでままある設定。
 そこに立ちはだかったのは本橋美砂である。念動を発揮し、両剣プロペラのように回して“面”の盾を形成。クリスタル・イージスという概念を受信。
 これは悪意の権化だ……クリュサオールの正体について、そんな示唆が来た。かつて一戦交えた死神とまた別物だ。目的は魂を屈服させること、恐怖と敗北をもたらせ。
 クリュサオールは手出しをしない。その理由を理絵子は知る。端的には本橋美砂の水晶イージスを突破できないからであるが、事態が膠着したわけではない。
 美砂の念力衰えてプロペラ威力下がることを待っている。
 理絵子はアルヴィトの傍らに立った。
 意志にする必要すら無い。超能力を意図して行使している理絵子にはマイクロ秒の単位で視界を解像できる。

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -11-

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 人の心を追える能力が人の心をつかめない。能力不足か、テレパシーでそんなことするのはおこがましいのか。
 認知症については、一晩でなってしまったとかあるにはある。が、布団は綺麗に畳んであるなど、その可能性はあまり感じない。もっとも、あまり良い言葉ではないが“まだらボケ”と呼ばれる認知機能が短時間で正常と非正常を行き来する現象もある。
 そこでピロピロ言う電子音。着信待ちで窓際に放ってきた衛星電話。
「失礼」
 メールである。受信しに戻る。テキストを繰ると、所属団体が“画像を受領した、どこを検索すればいいか”。
 おばあさまが通りそうな場所。
「ここから三春に行こうとすると?東京駅までは?」
「中央線で東京へ出て、だな」
 最寄り駅の名前と東京を伝える。
「でも警察も同じところを探してて、何も連絡が来ないよ。兄貴がそろそろ郡山についたと思うが……電話してみるか」
 叔父殿がポケットを探りながら部屋を離れる。あー、もしもし……。
 彼女はラジオを手に取る。ご位牌と遺影はそのままということは、家出的なニュアンスは感じない。
 ラジオから感じ取ろうとする。蒸気機関車、咲き誇る大きな桜。
 俳句の同好会。その宴席。
 届いた誕生の知らせ。
 それが、最も、そして、繰り返しの“思い”であるなら。
「行ってみましょう」
「三春へか?」
「少なくともそこへ向かったのなら、途中途中で手がかりが掴めると思う」
「でも防犯カメラには……」
 ああしまった。テレパシーで探りながらなんて言えない。
「とりあえず、駅のカメラのハッキングしか頼んでないから。都度都度あのカメラは?とか要求しながら行こうかと」
 そこへ叔父殿の大きな声。
「来てないってよ!」
 しかし、ベクトルは三春を指向している。
 レムリアは戻ってきた叔父殿に相対した。
「わたし、東京駅へ向かおうかと思います」
「ええ!?いやそんなそこまで他人様に……」
 彼女はコンパクトカメラ裏側の液晶画面を叔父殿に見せた。
“加齢加工”してある。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション-05-

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 背中合わせに登与が一言。
〈死。破壊。虚無……あなたを亡き者に出来ればそれでいい。肉の身を奪い心むき出しにしてその心弄び狂わせる〉
 霊的生命はいずれも男性的特徴を露わにした。性的な方向か。それは棒状であると知るが、全部つながってリングになっている。それに自分たちは囲繞されている。
 ならば。
 変な話男性同性愛を扱ったティーンズノベルの応用である。性的に気持ちよくなって頂く。心理的バイブレーション。リングが膨張し、赤らんでビクビク震え出す。
〈達する直前に寄越せ!〉
 声があった。戦女アルヴィト。“気持ちよくなった”霊的生命は一瞬だが状況を見失った。その一瞬に彼女に引き渡す。
 アルヴィトは聖剣で全員切り刻んでしまった。
 これに大変な驚愕を示したのが“黒い顔”であった。沈む太陽のように闇へ消えようとする。
〈逃がすな!〉
「オン・ロケイジンバラ・キリク・ソワカ」
 十一面観音の真言。
“守護”
 この場で用いるべき力のベクトルとは真逆の方向であろう。理絵子自身、なぜこの言が口を突いて出たか知らぬ。それは黒い顔もそうであったようで、驚愕からか動きを止めた。
 その状態は霊的な時空と肉体世界との接続点が時空構造を壊して出現している状況であって、急激な気象的擾乱を励起した。唐突に雲が起こり発達し、雷鳴轟いて雨が滝。
 周囲に迷惑がかかる。長い時間は掛けられない。理絵子は認識し、黒い顔と対峙した。
 神話の挿絵に出て来るゼウスを思わせるヒゲ男。
 が、ニンマリと口を開き、歯が剥き出され、よだれを垂らす。サディスティックでやや狂が入った笑み。
-滅す-
 黒い顔の意志は明確であった。自分を消滅させる。
 示唆が来る。この真言を遣わしたのは真言自身。つまり、言霊(ことだま)。
 言霊は言う。我を解け。
「ドシャコ!」
 理絵子は口にし、空中を“デコピン”のように中指で弾いた。
 現実世界に突き出た顔に天空から聖剣一閃。
 アルヴィトが突き出た首を切り落とした。

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -10-

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「何の音だ?」
 超感覚を持っておるわけだが、それとの相乗効果か視覚聴覚は鋭い方。
「あれですね。ラジオですか」
 彼女は茶箪笥の上に置かれた手のひらサイズのラジオを指さした。くすんだ銀色で所々へこみも見られる外観。色褪せたソニーのロゴ。
 何十年も前の製品とみられる。ボリュームと周波数チューニングがそれぞれダイヤル式で、周波数表示の上を矢印が動く構造。
 示唆。この機械は、重要。
「電源が入りっぱなしなのでは……」
 手にすると……それは、おじいさまのものと判ずる。チューニングダイヤルを少し動かすとクラシック音楽が流れた。
 後年、体調を崩して臥せっていたおじいさまは、ずっとこれを聞いてた。病状も手伝い、次第に視覚聴覚が失われて行く中で、手の感覚だけで操作することができ、いつもと同じ声を聞いていた。それで安心できた。
 そして、形見になった。
 愛するものを失った心の彷徨。
「これらの調度品は、福島から運び込まれたのですね」
 ぐるり見回す。照明はドーナツ型の蛍光灯でスイッチは引きひも。
「ええ、ここは元々僕が下宿させてもらってて、勤めるようになってから空き部屋で。親父が死んだあと、お袋に来てもらおうと部屋の中のものを持ち込みました」
 綺麗に畳まれた布団と、古いつくりの鏡台。おじいさまの写真とご位牌。
「おじいさまは……」
「だから死んじゃ……」
「違う、仏壇という意味かね?それはさすがに大きすぎるので位牌だけという次第……そのせいかね?」
 平沢進の発言を遮って叔父殿が尋ね、身を乗り出すように彼女を見て目を見開く。
 彼女は弱く首を左右に振る。なんだろう、ここにいて強く感じるのはひたすらな空虚だ。サイコメトリが作用しない。どんな思いでここにいたのか判るような、思考の痕跡を残していない。“心ここにあらず”……これほどのものとは。
「立ち入ったことをお伺いしますが」
「なんでしょう」
「おばあさまに関して、脳や心の状態について医師の診断を受けたことは?」
「要はボケとるか?ということだね。要支援の認定はされたが要介護ではないよ。MRIの診断も年齢相応だが認知機能に問題はない」
「ここ数日の状況は?食欲や、普段することをしなかったとか」
「どうかな。元々食が細いしなぁ。ケアマネさんから何か聞いてるか?」
 平沢進は首を左右に振った。
「いや、特に」
 そうですか……彼女は頷いた。現時点、彼女の判断は“テレパシーのルートは閉ざされた”である。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション-04-

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〈キリが無い〉
 登与が呟いたその時。
 どん、と音を立て、天井から黒く大きな毛むくじゃらが落ちてくる。
 人の顔より巨大なクモである。天井を破って出てきたわけではない、テレポーテーション的にそこに沸いて出た。大きさといい、もちろん、節足動物のクモそのものではない。
 理絵子は知っていた。海岸の洞窟で、疎まれて寂しく死んだ姉弟を守っていた霊的なクモだ。
 すさまじい速度でカマドウマを駆逐して行く。喰らい、潰し、粘液を吐きかけて溶かし。
〈あなたは……〉
〈それより教会に行って下せえ。すげえのが出て来る。こいつらは単なる足止め〉
 クモの助言に“地の底からの唸り”のような声を理絵子は聞いた。もちろん霊的な物であるが、策が露見しての悪態として良いようだ。なお、教会というのは理絵子の友人が騙されて連れ込まれ、暴行および洗脳を受けそうになった外観上キリスト教のそれに似せた施設。友人を助ける際人死にが出た。
 そこを“軸”というか“穴”というか、何かしら変換点として“現れ出でよう”としている。
〈行くよ〉
 本橋美砂に連れられる。身体が周囲の空気ごとぐいと動き、引き寄せられるように庭へ移動し、空中へ浮遊する。
 それは超能力ものSFに出て来る“空を飛ぶ”イメージを覆した。“可能な限り高速で移動する”経路に空中を選んだだけ。映像ディスクのCM飛ばしに近い。自分たちだけ空間まるごと切り取られ、チェスの駒のように動かされているイメージ。風が吹くでなく、音がするでなく、落下するような気持ちはないが、逆に飛翔している感覚もない。景色だけが飛躍した。
 教会の上空に達する。黒塗りの高級車、スーツの紳士と刑事数名。
 空中に出現した彼女らに向かい、気付くはずの無い刑事らが振り仰ぎ、その腰ベルトから銃弾が発射される。
 同じことを何度も……。理絵子が思った瞬間。
〈罠!〉
 不意に“空中に投げ出された”形になり、服と髪の毛乱れはためかせ、轟と風唸る音聞きながら落下に転じる。その間仰向けに呪文を唱えよと示唆を受ける。真言を口にし手指絡めて印契を結んで胸の前へ。
 仰向けになって全容が見て取れる。空中に黒く大きな顔があり、口を開けている。その下に一人立ち向かう形で浮かび続ける本橋美砂。
〈私はいいからあなたは自分とお友達を〉
「ノウマク・サンマンダバザラダン・カン」
 不動明王真言一閃。
 結界が作られ、自分と登与と2人中空にビシャリと停止する。そこがあたかも地面かのような盤石さである。見渡すと何やら囲まれていると判る。リング状の霊的生命である。

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -09-

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「スキャンしても?」
「今はもっとしわくちゃだよ」
「補正推定ができます。後で今の年齢をお伺いします」
 冷徹で不躾だと思いつつ。ウェストポーチから取り出す軍用トランシーバみたいな外観の衛星携帯電話。アダプタで接続するサイコロみたいなカメラ。
 アルバムの幸せと真逆な、角ばって黒い機器たち。
 衛星電話なので空が見える場所じゃないと使えない。窓際へ持って行って通信確立。送信待ち(Waiting...)と文字が出てカメラで撮影。
 送信している間に写真に手のひらで触れる。サイコメトリ(Psychometry)。それは込められた思いを事後読み出す能力と言えば適切か。
「体が大きいから運動が得意かな……大学に行って苦労しないでほしいな……」
 彼女は拾った思いが勝手に口から出ていることに気づいていない。それは祝福のきらめきのゆえに彼女の自制を超えて飛び出してしまった。
 気が付く。この写真に「おじいちゃん」は写っていない。
「この時、おじいさまは?」
 この質問には叔父殿が応じた。
「もう、入院してたな。……心臓だった」
 おばあちゃんの思いを探す。
“私だけ写っても”
 応じた内容。および、これが“トリガである”という感覚。
 行く末を知りたくてアルバムを数葉めくるが、「おじいちゃん」と映った写真は出てこない。
 あったが、遺影とともに。
“会わせたかった”
 彼女は、アルバムを、そっと閉じた。
「姫ちゃんどした?」
 彼女の頬伝うきらめきにうろたえる平沢。
「気にしないで……あなたは、祝福と期待に包まれて育ったんだねって。ええと、おばあさまが普段過ごされてる部屋はどちら?常用されてる薬とか確認したい」
 振り払って立ち上がる。なお彼女の発言には一つ嘘がある。本当に欲しいのは“現在のおばあさまの感情”である。
「ああ、なるほど。ええとこちらですどうぞ」
 叔父殿が手のひらで示す。いったん廊下へ出、少し歩くと右側へ折れている。奥へ進んで階段だがそこではなく、左手、襖を開く。
 ガタガタと滑りの悪い襖を男の力任せで開けると和箪笥と茶箪笥が向かい合う和室。ちょっと埃っぽい。
“心ここにあらず”
 それは第一印象。あまり、この部屋に対して“自室”という感情をお持ちでない。
 と、ブスブス……という感じのオーディオ的なノイズ。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション-03-

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 挑戦の意思と殺意。
〈しくじった〉
〈いえ〉
 少なくも大剣はそれを人格統合体として存在することを阻止した。
〈理絵ちゃん!〉
 呼ぶ声に振り返る。もう一人の霊的な友、高千穂登与(たかちほとよ)という。
 テレパシー使い。
 振り返った理絵子の視界に映じたのは、庭で歯を剥いてシャーと威嚇する……ネコの姿であった。近所に居着くでっぷりと大柄な虎縞の野良猫、トラと呼ばれる。庭でたまに糞をする。
 憑依されているのであった。それは分裂してその程度になったのと同時に、理絵子に挑戦しているのだ。憎たらしいとはいえネコが殺せるか。
〈任せて〉
 理絵子は声に出さず友二人に答えた。答えは持っている。
 トラが異常な跳躍力を発揮して庭から飛びかかってくる。引っ掻こうと出された前足を、首傾けて数ミリで避ける。
 トラが座敷に飛び降りる。
 しかしその時理絵子は元の場所にいない。
 その代わり、右手にハサミを持ってトラの背後にいる。ハサミは美砂に念力で取り寄せてもらった。自分の意識は読めるようだが、友が何をするかまでは見てはいないだろう……斯くて然り。
 トラ、に憑依した者がそれと気付いたとき、理絵子はトラのひげを切り落とした。
 ネコとしての本能的な行動意欲が減退する。分裂して低下した能力の故に、ネコ本来の能力に依存し、霊はそれ以上のことはできない。
 トラが突如バタリと倒れる。失神したのであり、憑依者が抜け出したのだ。そこへ霊界から剣が伸びて来てぶすりと刺してしまう。
 剣が力として吸い取る。まるでヒキガエルを食うヤマカガシが、その毒を我が物とするかのように。
 この一連の動きを見ていて。
 驚愕を有した心理が畳の下一面に広がっていると理絵子は知った。
 “一つの意識”ではない。
 そしてそれが来る。
 床下から庭へ黒い泥水のような物が流れだし、波打ちながら広がり、その泥水が一気にバラバラになり、理絵子と、姉と、友へ、一散にぴょんぴょん跳びかかる。
 夥しい数のコオロギの仲間、カマドウマ。
 美砂が腕を下から上へ振り上げた。念動力が発動され、太鼓をたたくようなドンという音が響き、家の中から暴風が生じ、引きずられるようにカマドウマがざあっと空へ持って行かれた。
 しかし畳の隙間から止めどなく泥水が染みだし、次々にカマドウマに形象を変えて這い上がってくる。

(つづく)

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