彼女は彼女を天使と呼んだ(5)
北村由佳は目を伏せる。知って欲しくて知られたくなくて。
それでも、自分と〝彼〟とにつながりがあることは希望の糸口なのだ。
恋って難しい。
「……あは、どうしよう」
真っ赤になって地団駄踏むように足をジタバタ。勢いに乗じて言ってしまおうか迷っているのだろう。いつも相談してる相手だしそれならいっそのこと……。でも霊能がないのに言っても仕方がない……。
以上、別にテレパシーを駆使せずとも、彼女の思惟の展開は想像が付く。ちなみに、委員長会議と言った時点でクラスは5つ。5人まで自動的に絞られているわけだ。
そしてこれは慎重に扱わなければならないと理絵子は思う。これだけ強く心理の状態が外部に溢れ出る程なのだ。裏返せば、支えるものを失えばぐしゃっと潰れるということ。
軽々な反応は許されない。〝判ってしまう〟ことは……
これは少々厄介かも。
「無理して言わなくてもいいと思うよ。知ってしまっても、私は何もできないしわけだし」
それは霊能が頼り、に対して選んだ言葉。
「……そうだよね」
一気に気持ちがしぼむのを感じる。文字通り夕方の朝顔のようだ。トマトどころかしおれたペンペン草。
「ごめん、忘れて。他を当たるよ」
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