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【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【4】

(承前)

 

 男の子はムクドリたちに向かってクラブを振り回します。
 もちろん野鳥がその程度でどうにかなるわけではありません。いともあっさり飛び立って、クラブの一撃をかわします。
「狙ったって無駄だぜ」
 男の子は電話線に止まったムクドリたちをにらみつけ、クラブを元の位置に戻しました。
〈ほら、ね〉
 私たちの言う通りでしょ。ムクドリからのメッセージ。確かにムクドリはクモを食べますが。少々、度が過ぎる気がします。
〈妖精さん……〉
 こちらクモからのメッセージ。怖い。
 男の子は〝彼女〟のいる二股を再び手にし、電話線のムクドリをにらみつけつつ、プレハブ倉庫のドアをガラガラと開けました。
 感じたのはクモの驚愕。
〈仲間がたくさん。たくさんいます妖精さん〉
 男の子の後ろに回り込み、目にした光景は想像を絶しました。
 プレハブ倉庫の中には十指を下らない数のクモの巣。
 ジョロウグモがたくさん〝飼われている〟。
 確かに、クモ合戦の風習がある地方では家の中でコガネグモを飼い育てます。しかし、巣と巣の干渉は避けますし、風を通し日に当てるなど、なるべく自然環境に近づける努力をすると聞きます。また、タランチュラをペットにしている場合も〝徘徊スペース〟は確保してあげるのが基本。
 その点でこの倉庫の光景は少々疑問。
「さぁ行け」
 男の子は言うと、天井からぶら下がった四角形の枠に、二股のクモの巣を引っ掛けました。枠の材料は割り箸。ここをベースに三重網を張りなさいということでしょうか。
 中のクモたちが私に気付きました。
 とりあえずエサは潤沢にある。
 ただ、この空間にずっといる。その状態が理解できず困惑している。
 私の経験上、昆虫は人に愛されるという状態を理解している場合が多いようです。クモも長く飼えば少なくとも〝飼育下はオイシイ環境〟であることに気付く。
 でも、ここのクモたちからは、そのどちらの気持ちも感じません。
「じゃ、後でな」
 男の子が倉庫から出る代わりに、私は倉庫の中へ入り込みました。
 扉が閉まって真っ暗になる。

 

つづく

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