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ブリリアント・ハート【4】

「ふぅ」
 レムリアはため息をついてベッドにひっくり返る。ロイヤル・スィーツ。1泊35万円也。
 …天然痘のワクチンが何本作れる?
 Tシャツにジーンズのラフなスタイルに着替えてごろごろする。静養というとお上品だが、退屈ですることがない。
 鏡台の引き出しを開けてみる。街の観光案内でも転がっているかと思ったまで。
 出てきたのはアルバム。めくると、この部屋に泊まったのか、往年のスターや著名人達が部屋のそこここでポーズを作って写っている。
 その中に一人、世界で最も有名な女優、オードリー=ヘプバーン。
 レムリアにとりオードリーは生まれる前の人、である。ただ、作品は幾つか見たし、銀幕引退後、慈善活動をしていたことも知っている。
 …そうだ!
 思いついてクローゼットから荷物を引っ張り出す。
 軍用無線機を思わせる大きな機械。
 衛星携帯電話。
 電源を入れ、窓際へ。
『なんじゃい』
 相手は3コールで出た。そのプレゼンテーションを作らせた東京の知り合い。男。年齢9つ上。会社員。電気エンジニア。
「調べて欲しいんだけど」
 先ほどの女の子が口にした学校の所在と、そこへ行く方法を尋ねる。
『調べてどうする?』
「行くんだけど?」
『え?だって今回は実務、でしょ。予定変更?』
「“ローマの休日”。お願いだから協力して。ホテル出てからまた掛ける」
 レムリアはそれだけ言うと、返事を待たず電話を切った。
 ローマの休日…そう、レムリアは、その映画の姫様のように、ここからこっそり抜け出そうというのだ。そしてジェームズ=ボンドのように、時間までにはここに戻り、クールな顔して晩さん会に出ようというのである。
 問題はだ。
「あのね」
 レムリアは果たしてもう一度電話する羽目になった。エレベータは誰かがいないと使えない旨話すと。
『どんな状況であれ、非常階段はあるはずだ。そこから出るしかないね。最も、セキュリティのしっかりしているホテルだと、無銭宿泊や侵入防止に、非常階段のドアを開くとベルが鳴ると思うけど』
 ちなみに、聞いた小学校は、このホテル直下の駅から、まず地下鉄に1駅乗って乗り換え、そこから直通30分との由。
『そこの地下鉄だと、こっちの“Suica”と同じ類のカードで、“リリカ”ってのがある。ホテルの土産物で記念カードが無いかい?コレクターだから見せて、と頼んでみるとか』
 レムリアは頷いた。ちなみに、そのカードは、駅の自動改札にかざして使うICカードである。東京を知る彼女にとって、何たるかを理解するのは容易。
「何とか考えてみる」
『ご健闘を』
 電話は切れた。

つづく

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