彼女は彼女を天使と呼んだ(14)
放課後は委員長会議である。
会議の冒頭、会議の担当教員にして学年主任の女性教諭が開口一番、頭の痛いことを言った。
各学校から学級委員男女1ペアずつ選出し、市の中心駅駅前にある〝東急スクエア〟に集まって、昨今増加しているインターネット絡みのいじめ問題について話し合おうみたいな企画があるというのだ。市内の中学は30あるからして、ざっと60人集まることになる。そして時節柄3年生を出させるわけに行かず、2年にお鉢が回ってきた、と。
生徒会長ネタじゃないかと思うのだが、クラスの動向を日々見ているのは学級委員だろうというのが、学級委員を集める理由だそうだ。
最も、それはそれで良い。みんなそういう社会状況は知ってるだろうから、それぞれに未然防止や対策を考えて来る(来ざるを得まい)だろう。そうした内容の意見交換は大いに参考になる。
頭の痛いのはこれだ。
「女子は黒野さんにお願いするとして」
なぜ決まっているのだ。ただまぁ、理由は知っている。この学年主任は、前述の教頭云々事件の全容を把握する課程で、自分のことをムズ痒くなるほど褒めちぎることになったからだ。
要するに気に入られたらしく、逆に言えば理絵子に任せれば万事OKという認識がこの学年主任にはあるようなのだ。ありがた迷惑な話で。
もちろん理絵子が出向くのに反対する者、やっかむ者はいなかった……そんな教員サイドお仕着せの面倒くさいイベントに出たいと思う者などない。むしろ自分に来なくて大歓迎、であろう。
「男子は誰にしましょうかね」
「あ、じゃぁ俺が行きます」
挙手して立候補、は書くまでもあるまい。
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