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彼女は彼女を天使と呼んだ(23)

「お前がクラスのみんなに声を掛けるのはその辺を踏まえてのことだろう?」
「……うん、まぁ」
 その実、悩み苦しむ姿を見ていると、自分までも心痛くなるからなのだが。超感覚の故もあるだろう。傷つく心が敏感になるのと逆で、傷ついた心に対して敏感になる。傷ついた心の放つ〝救難信号〟が強くなるせいかもしれない。
 ああ、と合点が行くものがある。自分ではクールなつもりでも〝優しい〟とか言われることがあるのはそういう理由か。自分のそんな回避行動が〝優しさ〟と映るためか。
「それが実は有効な抑止力なんだよ。加害者と被害者、共通する人物が正義の味方。加害者は告げ口を恐れるわけだが、そういう関係があると、加害者は最悪リスクを考える。つまり被害者が告げ口し、その正義の味方がアクションを起こすのでは。ってことだ。この結果、最後の一歩は踏みとどまる。どころか、『あいつムカつくんだけど何とかならない?』と、まず正義の味方の利用を考えるようになる」
 理絵子は頷いてコーヒーを口に含んだ。確かにそんな経緯でトラブルを回避できたことが何度かある。例えば授業中独り言を呟く少年があったが、彼は〝風の音を聞き、光の顔を見る〟少年であった。理絵子が理解を示したら独り言は収まった。
 チョコをもう一枚。
「それ系を会議でブチ上げろと」
 父親は小笑い。何か策があるのか。
「学級委員さんの人間性や普段の行動に依るけどな。大体がクラスって少人数のグループ幾つかと、一人が好きな子どもが数人、そんなパターンに別れるだろ?誰かとくっついてるようじゃダメだし、成績をハナに掛けてお高いのもまたダメだ。しかもそれで学級委員さんがピンチになったら先生が盤石のバックアップ。位のシステム構築が要る」

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