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彼女は彼女を天使と呼んだ(22)

 ブルーマウンテンの湯気と共に出てきたのは、神戸〝モンロワール〟の生チョコレート。
P91200931
 要冷蔵、洋酒風味、とあるが。自分中学生だが。
「香り付けだけだ。警官の俺が言うんだから問題ない」
 よくある〝必死で娘の気を引く父親〟に最近似てきた気がするが、とりあえず板をつまんで口に入れると、柔らかい歯ごたえと共に、微妙にコントロールされた甘みが広がって行く。
「これは……」
 コメントするより柔らかい感触と味を楽しみたい。頃合い……父親はこの柔らかさを出すためにわざわざ溶かしたのだと知れた。
 こういう一つ凝ったことを自分の娘にやってくるかこの父親は。
 するとこの父親は自分もチョコを一枚口に含むと、手指に付いたココアの粉をティッシュで拭い、
「警官ってな、誰にも味方って思われてんだよ」
 甘みが苦みを要求する。そこでブルマンを口に運ぶと、香しい濃密が、口の甘みと調和した。
「だから〝事が起こってからしか動いてくれない〟ってなるんだけどな。まぁそれはいいや。その展開でな、いじめ……よらず学校で生じる問題みんなそうだが、先生が万人の味方じゃなくなったってのを強く感じるんだ。弱きを助け、強きを制す。はずなのに、それどころか、教員が特定の子どもに余計なひと言でいじめのターゲット……良くある話だろ?そしてそれを報道が脚色してバッと広げる。すると、現在進行形のいじめ被害者は教員に対してどういう意識を持つ?」
「先生なんか……大人全体……親も含めて……」
 この言い回しに若干捕捉する。理絵子の知る限り、虐げられた心は〝それ以上〟を避けるために〝最悪〟を考えて行動する。傷ついた心にとって最悪の事態は、その心の傷を受け止めてもらえないこと。そこで大人が信用出来ないと感じるや、最悪の事態を避けるために、大人全てに対して口をつぐむのである。

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