彼女は彼女を天使と呼んだ(15)
主将君。おー、という驚き半分の声が居並ぶ委員たちから少し。
「他に立候補は?」
いるわけがない。
私から指名しようか……いやいや。恨まれるか、あらぬ噂が立つだけだろう。
斯くて黒板にカルトゥーシュよろしく、マルで囲まれた名前が二つ。
日時は期末試験後土曜の午後一時、だそうな。
「楽しみだな」
主将君が肩をポンと叩いてくる……のを寸前でかわす。
「ただ出るだけじゃ意味ないからね。何か言えるように、学校側にも報告できるように」
理絵子はまっすぐ目を見て言った。
「その目がいいんだ」
「はぁ?」
脊髄反射的に返してから、それが彼の〝モーション〟なのだと知る。手練手管ってヤツであろう。しかし、ハンフリー・ボガード辺りが言うならいざ知らず、所詮中学生の男の子だ。男性が身の程知らずというか、背伸びして〝らしくない〟ことをするほど、滑稽なものはないのだが。
「じゃ、当日会場で」
くるりと背を向けると。
「待ってよ。イザという時の連絡先教えてよ。ケータイ持ってるんでしょ?」
とはいえ、番号、を教えたら何が起こるか目に見えている。
「……@docomo.ne.jp」
メアドなら後で変えられるし。
「TEL番は?」
「常時カバンに放り込んであるから鳴らされても気付かないんで。むしろメールの方が確実」
「でも……」
「心配になったらメールがないかチェックするから」
しょぼくれた顔。ここまでつっけんどんにされるとは思ってなかったと見える。
が、すぐに回復。理由は。
「判ったよ。俺の方は080……」
自分の番号を教えられるから。そこは普通の男の子か。
理絵子はメモらず、携帯に打ち込むこともせず、諳んじて返した。
「だね。了解」
「覚えたの?」
それは正直に驚いたという顔。
「うん。じゃぁね」
塾があるのだ。ウソではない。
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