2021年9月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    

最近のトラックバック

めーるぼっくす

無料ブログはココログ

« ブリリアント・ハート【4】 | トップページ | 男の子だもんね【4】 »

男の子だもんね【3】

(承前)

 勇気と武器はこれで万全。残った問題はこれだ。まさか着ぐるみ被って屋外闊歩というわけには。
 ただ前にも書いた通りイメージぶち壊したくないわけで。
 二人で相談。しかし、結局頭のイイ結論は出ず、もし幻滅したらコードKにリアル委譲、で、まぁ、いいか。
 この妥協、意味するところすなわち。
「ワルキューレゴールド。松山奈々(まつやまなな)」
「ワルキューレシルバー。徳島まな(とくしままな)」
 設定が私立中学生なので、コスチュームはオリジナルデザインの制服。
 彼女はカチューシャ、私はポニテで髪型をアニメに合わせ、コスプレ状態。
 これにて、二人揃って戻ったら、ボクは一言。
「全然違う」
 当然の反応。すると、何と、まなちゃんの方が。
「あれはマンガにしたんだもの」
 物凄い嘘。ところが。
「テレビより美人だ」
 おろ?
 私たちは顔を見合わせた。
「いやいや。お二人それでまだまだ行けますよ」
 とは展示場の支配人氏。お上手で。
 ともあれ、正義の味方グロリアスワルキューレ。出撃。
 ……中古で買った私の軽自動車で。
「〝ジェットスケボー〟じゃないの?」
 後席ボクから当然の質問。アニメの二人は超小型ジェットエンジン付のスケートボードで246号をカッ飛んで行くが。
「あれは道路運送車両法上の原動機付自転車に該当するから、中学生がリアルに乗ったら道路交通法に抵触するのよ」
「奈々姉(ねぇ)リアルすぎ」
「シルバー。それよりナビ。ボク、どこの駅から乗ってきたって?」
 まなちゃんの携帯電話でナビってもらって、ボクが乗ったJRの駅へ。最近地下鉄が延びてきて駅前広場をリニューアル。
 駅前からボクにあっちこっちと案内してもらい、街外れへ田んぼの道へ。
「あの踏切の向こうだよ」
 そこはあぜ道にアスファルト被せただけの細い道。自動車通行止めの標識があり、遠くに小さな踏切。
 クルマじゃ無理。というか違反。
 降りて歩いて行く。コスプレの娘と娘のなれの果てが田んぼの中を男の子と。
 これって何かアブナイ情景じゃない?ねぇ。
 踏切は横浜行きの電車が通る路線で本数も多く、案の定引っかかる。
 通過して行く電車の窓から突き刺さる幾つかの目線、視線、凝視。あ、いや、こっちを見ないで。
 ボクが歌う。
「わたしたちワルキューレ。いつも見ていて~」
 遮断機が上がった。
 小さな踏切と書いたけど、本当に小さな踏切で、通路は自転車1台どうにか通れる狭さ。周囲に灯火の類はなく、夜は真っ暗になるだろうと思う。わたしたち女の子には危険な夜道。
 ……何か?
 踏切を渡る。軽い下りで、坂の終わりで多分隣町になるのだろう、道路に繋がっている。住宅地の端っこの公園。そこまで立派な道路が作ってあって尻切れトンボ。細い道は、そのブツリと切れた部分に、ノリで貼ったみたいにとりあえずくっつけてある。
「あれ。あの赤いヤツ」
 ボクが指さす先には、年代物の赤い軽自動車。
「あれ、〝ミラ〟ってクルマですよ」
 まなちゃんが言った。
「L200って型式で92年から93年頃作ってたクルマです」
「それって短大生の知識として異様に細かくない?」
〝百鬼夜号(ひゃっきやごう)〟って妖怪まみれのクルマがあるんですよ。それの色違いですもん」
 でもその細かさこそは逆に非常に具体的なわけで、コードKに持ち込むには強い説得力を持つ。
「妖怪じゃなくて単に怪しいわけだ」
 詳しい話をボクに聞く。衝撃的な出来事であって、当然記憶は細かい。要約すると、ママの自転車の後ろに乗って信号待ち。交差点で曲がってきたそのクルマに自転車ごと倒された。
 すなわち教習所で何度も言われる左折巻き込み。クルマは自転車前輪を乗り越え、轢き潰して、走り去ったという。
 だとすれば、その手の傷や跡がクルマに付いてるはず。
「調べてみる価値……」
「ありますね」
 私たちはアパートからは死角になる公園の植え込み影に隠れて、アパートを観察。
「2階建て。各階5部屋ずつ」
 私の言うことを携帯電話のメモ帳機能でまなちゃんが記録。
「1階中央は洗濯物が干してある。女性用男性用子供用と干してあるから家族で住んでる。軽自動車にチャイルドシートは見えるか?」
「ありません」
「じゃぁ違うね」
 この辺実はアニメの二人の流儀。当然、ボクは気付いた。
「やっぱ本物ってスゲエ」
「そう?……1階は無関係さんと空き室だね。怪しい人が住んでいるとすれば2階だ」
「じゃぁ近づくと見られちゃいますね」
 私たちはボクの顔を見た。
 まなちゃんが携帯電話GPSの位置表示を画面保存し、男の子に携帯電話を持たせる。
「これから私たちはあのクルマを調べてくる。何かあったら君が頼りだ。この電話を持って全速力で駅へ向かって走るんだ。そして誰でもいい、大人の人に頼むんだ。携帯のこの地図の位置にひき逃げのクルマが止まってるって」
「わかった」
 ボクは強い瞳で頷いた。上等。
「行くよシルバー」
「OKゴールド」
「かっちょえー」
「ゴー!」
 私たちは同時に走り出す。走りながら、私は私の携帯電話のカメラを起動。
 果たして、L200ミラの助手席ドアには、長々付いた傷を隠すように赤いビニールテープ。携帯カメラオートフォーカス。
 パシャ。
「写メった」
 その時。
「なんだてめえら!」
 粗暴な男の声。
 しかも背後から。
 ドジった!

つづく

« ブリリアント・ハート【4】 | トップページ | 男の子だもんね【4】 »

小説」カテゴリの記事

小説・大人向けの童話」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 男の子だもんね【3】:

« ブリリアント・ハート【4】 | トップページ | 男の子だもんね【4】 »